製薬企業のマーケティングを変えるデータ活用【第2回】
製薬企業のMRが、ITツールを使いたがらない“残念な”理由(2/2 ページ)
コンテンツそのものに問題があるケース
もう1つ、WHITEの独自調査データを紹介します。これは、コンテンツそのものを再度検討すべきケースです。
| 1位 | 自社製品に関する情報(作用機序、用法用量、効果、副作用) | 85.7% |
|---|---|---|
| 2位 | 学会・文献などで発表されたエビデンス | 58.8% |
| 3位 | 他社製品との比較情報 | 44.8% |
| 4位 | 患者向け資材の提供 | 37.9% |
| 5位 | 最新症例情報 | 32.5% |
| 1位 | 他の医療施設の実態に関する情報 | 17.4% |
|---|---|---|
| 2位 | 他社製品との比較情報 | 17.1% |
| 3位 | 最新症例情報 | 10.5% |
| 4位 | メーカーやMR自身の話(身の回りの話や趣味の話など) | 10.2% |
| 4位 | 医療以外における一般情報(時事ネタやその時々の最新ニュース) | 10.2% |
表2、表3のランキングを見ると、各医療従事者が「普段よく提供されている情報の中で特に有意義と感じている情報とは何か」「普段あまり提供されていない情報で、提供して欲しいと思っている情報は何か」が読み取れます。
ここで注目したいのは、オレンジ色のグラフ1位の「他の医療施設の実態に関する情報」です。この項目は「MRから受ける情報で有意義な情報(青色)」ランキングではトップ5圏外ですが、「MRから情報提供は受けていないが欲しい情報」ランキングではトップです。しかも設問中で唯一、青色(16.9%)よりもオレンジ(17.4%)が上回っています。このことから、「他の医療施設の実態に関する情報」のニーズは高いものの、あまり情報提供はされていないのではないかと想像できます。
現場のMRは、普段から医療従事者に接していることもあり、こうした医療従事者が持つ潜在的なニーズをしっかりと把握しているでしょう。しかし、マーケティング部門からはこうした真のニーズが見え難いものです。把握していてもコンテンツ化が難しいといった理由で、eディテーリングツールには自社が伝えたい製品の情報を優先して掲載することも少なくないようです。こうしたことも、MRがツールの利用意義を見いだせなくなる理由につながるかもしれません。
MRへの情報提供手段にはまだまだ改善の余地あり
このように分析を進めていくと、マーケティング部門が実施している各MRへの情報提供手法については、まだまだ改善の余地があると考えられます。
前述の「他の医療施設の実態に関する情報」に関しては、製品のプロモーションに直接つながる情報ではないため、本部としてコストを割くべきなのかどうか葛藤が生まれることは理解できます。一般企業のプロモーションに目を向けると、製品プロモーションとしては一見して無意味に見えるコンテンツは多数存在します。しかしそれは、奇をてらって実施している施策などではなく、真に伝えたい情報を消費者に伝えるための一手段として選択している場合がほとんどです。
製薬企業各社は、MRが提供する情報を通して、いかに自社製品情報と医療従事者を接触させるかに焦点を当てて活動しています。その情報の中身を誤ったり、ツールを活用しやすい仕組み作りを怠ると、どんなに長いストラテジーフェーズを経ている情報戦略であっても成果につながらなかったり、成果を計測できなくなることがあります。
以上、ITツール活用が難しい理由と、ツールを有効に活用するヒントについてまとめました。次回は医療従事者向け情報提供ITツールの特性と使い分けについて紹介します。
比屋定 航(ひやじょう・わたる)
WHITE メディカルマーケティングチーム
大手映像系制作会社(プロデューサー)を経て2010年よりスパイスボックスへ入社。その後、親会社である博報堂に常駐し、大手製薬企業の患者・医科向けのデジタル施策に広く関わる。2015年12月にスパイスボックスでメディカルマーケティング事業部を立ち上げる。その後、DTC(医療用医薬品の患者向け広告)パッケージ、企業と患者のコミュニケーションサービス「LINEビジネスコネクト」のメディカルパッケージなど、メディカル業界向け商品をリリース。2016年10月にVeeva Japanとも戦略的なパートナーとして業務提携を締結。患者向け、医療従事者向けともにメディカル業界向けの情報フレームワーク設計や疾患別態度変容率調査データなどをベースとしたコンサルティング、戦略設計、企画、制作までワンストップ対応ができる体制を確立。
大須賀 智哉(おおすか・ともや)
WHITE ストラテジック・プランナー
国内大手システムインテグレーターにて大規模システム構築やITコンサルに従事し、2015年にスパイスボックス入社。その後、親会社である博報堂に常駐し、大手製薬企業の患者・医科向けのデジタル施策に広く関わる。2015年12月からスパイスボックスのメディカルマーケティング事業部。主に製薬企業のデジタルマーケティングにおける戦略策定部分を中心に、患者・医師向け調査、ターゲットセグメンテーション、KPI策定、効果検証スキーム構築などに強みを持つ。2016年には、一般生活者6万サンプルを対象とした疾患別態度変容調査を企画・運営し、定量的データを基に、患者向け施策のプランニングを行う。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
製薬企業のマーケティングを変えるデータ活用
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
4
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
5
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
6
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
-
7
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
8
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
9
LLMの「過学習」、正しく説明している文章はどれ?
-
10
レガシー基幹システムをSAPに統合 山善が突き止めた「標準化と個別最適」の境界線
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー