システム保護をめざす善意のハッカーが開発?
その名は「Hajime」、IoTマルウェア「Mirai」と戦う“善玉ワーム”が出現
“善玉”の可能性があるワーム「Hajime」が拡散している。IoTボットネットのマルウェア「Mirai」に似ているが、悪質性が低く、ステルス性能が高いワームだという。
セキュリティ研究者によると、モノのインターネット(IoT)に感染する「Mirai」に似た“善玉ワーム”が、悪玉に代わってネット接続型デバイスを制圧しようと威力を行使しているという。
この善玉ワーム、いわゆる「Hajime」は2016年10月、Rapidity Networksに発見され、同社はすぐに、マルウェアの「Mirai」との類似性を見いだした。Miraiと同様に、HajimeはTelnetポートが開かれ、デフォルトのパスワードを使っている無防備なIoTデバイスを通じて拡散し、Miraiと同じようにデバイスにログインする。
Rapidityは報告書の中で次のように記している。「Hajimeはそれぞれの認証情報の組み合わせを試し、標的とするデバイスの反応を待つ。もしその組み合わせが拒否されれば、その接続をいったん閉じてあらためて接続し、次の組み合わせを試す。そうした認証情報の多くはMiraiでも使われているが(例えばハードコードされた認証情報のリストはよく似ている)、ログインの挙動は異なる。Hajimeが認証情報のリストを順番に試すのに対し、Miraiは重み付きでランダムに試す」
併せて読みたいお薦め記事
大規模DDoS攻撃をもたらした「Mirai」の脅威
- “アンナ先輩”が公開したマルウェア「Mirai」に専門家が震え上がる訳
- “アンナ先輩”の「Mirai」がより凶悪に? DDoS攻撃を約50倍に増幅する手口が判明
- IoTマルウェア「Mirai」の大規模DDoS攻撃の黒幕は? 専門家が指摘する多くの疑惑
「DDoS攻撃」についてもっと詳しく
だがSymantecの上級脅威研究者ウェイロン・グレンジ氏によると、HajimeはMiraiに比べて「ステルス性能と先進性が高い」といい、過去数カ月で急速に拡散している。
「Hajimeはデバイスに感染すると、複数の段階を経て実行プロセスを覆い隠し、ファイルシステム上に自らのファイルを隠す」。グレンジ氏はブログの中でそう説明している。「作者はネットワーク内のどの感染マシンに対しても、シェルスクリプトをいつでも展開できる。コードはモジュール式なので、新機能は速攻で追加できる。このワームの設計に相当の開発時間が費やされたことは、コードを見れば明らかだ」
グレンジ氏によると、MiraiとHajimeのもう1つの特筆すべき違いは、Hajimeが分散型サービス妨害(DDoS)などの攻撃を仕掛けるコードを一切持たない点にある。その代わり、10分ごとに「Just a white hat, securing some systems」(システム保護をめざす、善意のハッカー)というメッセージを、作者の署名付きで表示する。
作者が本当に善玉ハッカーなのかどうかは確認できていないものの、その可能性はあるとグレンジ氏は言う。
「作者の言う通り、このワームはいったんインストールされると、そのデバイスのセキュリティを強化する。同ワームがアクセスをブロックする23、7547、5555、5358番の各ポートは、いずれも多数のIoTデバイスで悪用できることが分かっているサービスをホスティングしている。そうしたポートの一部はMiraiの標的になっていることも判明している」(グレンジ氏)
IoTマルウェア自警団
ハッカー自警団がIoTデバイスのセキュリティ強化を目指して使っている手段はHajimeワームにとどまらない。
最近発見されたマルウェアの「BrickerBot」は、無防備なIoTデバイスのストレージを破壊することによって、そのデバイスを恒久的なサービス妨害状態に陥れ、使い物にならなくしてしまう。感染状態を解消するためには、実質的に、そのデバイスを交換するか、ハードウェアの再インストールをして接続を遮断し、感染の可能性のあるボットネットから切り離すしかない。
だが残念ながら、グレンジ氏によると、HajimeやBrickerBotなどに使われている善玉戦術は長続きしない見通しだ。
「一般的に、そうしたワームに感染したIoTシステムでは、メモリ上でセキュリティが強化されたにすぎず、恒久性はない。デバイスを再起動すれば無防備な状態に戻り、デフォルトのパスワードとTelnetが世界中にさらされる。恒久的な対策のためには、ファームウェアを更新する必要がある」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
5
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
6
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
7
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
10
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー