動き始めた「ラーニングアナリティクス」【第4回】
ラーニングアナリティクス実践校が挫折しかねない「7つの課題」、その解決策は?(3/3 ページ)
課題6:ラーニングアナリティクスを実践しても、思い通りの結果が出ない
目的を明確化し、適切なシステムを構築して慎重にラーニングアナリティクスを実践しても、なかなか良い結果が現れないこともあるでしょう。結果が芳しくないときには、下記を見直すことが有効です。
処理が正確かどうか
学習の進め方や業務内容を理解した上で、分析に利用するデータセットを確認します。その上で、求めたい結果を導出するのに正しい処理がなされているかどうかを確認します。
データが適切かどうか
そもそも今分析しているデータは、想定している結果を導き出せるデータなのでしょうか。意味を成さないデータをいくら分析しても、当然ながら結果は出ません。利用するデータと求めたい結果との相関関係があるのかどうかを確認する必要があります。
ある程度のデータ量がないと、結果が偏ってしまい正しい結果を導き出すことができません。収集するデータに偏りや恣意(しい)性がないかどうかも確認してください。
データクレンジングが正確かどうか
分析対象のデータとして、抽出したデータそのものではなく、処理をしやすいように整理したデータを利用することがあります。例えば重複データ削除や異常値の解釈など、さまざまな処理を施します。こうしたデータ補正作業を「データクレンジング」と呼びます。
データクレンジングは、学習者の学習や教員の業務特性を踏まえて処理されることが一般的です。人手を完全に排除することが難しく、ミスを生じやすい箇所のため、処理が適切かどうかを見直す必要があります。
特徴量抽出が適切かどうか
テキストや画像、時系列データなどの非構造化データは、そのままではシステムが分析に利用しにくいことが一般的です。非構造化データをシステムで分析したい場合には、何らかの手段で構造化データに変換する必要があります。その代表的な手法が、テキストや画像、音声などが含む特徴的なデータである「特徴量」の抽出です。特徴量は、テキスト内にある特定語句の出現回数、画像内で特定の色が占める割合などの数値です。この特徴量抽出の手法やプロセスが適切かどうかを確認します。
課題7:ラーニングデータサイエンティストになる方法が分からない
教育ビッグデータを分析して学びの状況を分かりやすく可視化する。指導や教材作りに有益な情報をフィードバックする。受講者一人一人へお薦めの教材や個別カリキュラムを提供する――。ラーニングデータサイエンティストの仕事は、このように多岐にわたります。ラーニングデータサイエンティストには、3つのスキル/ノウハウが必要だといわれています。
必須スキル/ノウハウ1:データサイエンス
まず求められるのは、統計学の知識に加え、機械学習をはじめとする人工知能(AI)技術などを駆使するデータサイエンスのスキルです。統計の手法や仕組み、数式の理解といった理論の理解度だけでなく、実践的なスキルも求められます。例えば「Microsoft Excel」といった広く使われるツールから、R言語やPythonといったデータ分析に適した言語、「IBM SPSS」「Tableau」といったデータ分析ツールなどを使いこなすことが必要です。
必須スキル/ノウハウ2:アプリケーション開発/システム構築
データを分析するだけでは、ラーニングデータサイエンティストの仕事は終わりません。分析結果を基にして目的達成を支援するアプリケーションを開発したり、システムを構築したりすることも求められます。自らコーディングをしない場合でも、システムの要件定義をまとめ、開発スタッフに指示ができるスキルが必要になります。
必須スキル/ノウハウ3:eラーニング/教育
ラーニングデータサイエンティストは単にデータを分析するのではなく、よりよい学習環境を提供するために、データを駆使することで価値を創造します。そのためにはLMSの仕様や学習者の行動に加え、分析対象となる教育現場の運営の流れを十分に理解しておくことが大切です。実情を理解しておくことで、より適切な仮説を立てたり、実効性のある検証をしたりできます。さらに分析結果から導出される結論をまとめ、良い学習環境を提供するためのフィードバックを提示できるようになるはずです。
これからラーニングデータサイエンティストを目指す人は、勉強会やイベントが各地で開催されているので参加してみるとよいでしょう。より本格的に取り組みたい人は、データサイエンスの専門課程を持つ大学や養成機関もあるので、これらの機関を活用する方法もあります。
執筆者紹介
吉田 自由児(よしだ・じゆうじ) デジタル・ナレッジ代表取締役COO、デジタル・ナレッジ教育テクノロジ研究所所長
1973年生まれ。早稲田大学理工学部卒。大学でCAI(コンピュータ支援教育)を研究しデジタル・ナレッジ創業時から参加。エンジニアとしてeラーニングシステムのパッケージ開発や数多くの個別SI(システムインテグレーション)に従事。近年はラーニングアナリティクスへの関心が高く、同社ラーニングアナリティクス総合サービス「Analytics+」の初期バージョンを1人で開発した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
動き始めた「ラーニングアナリティクス」
教育や学習活動から生まれる教育ビッグデータを生かす「ラーニングアナリティクス」。その実態を明らかにする。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
3
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
8
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
9
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
10
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー