動き始めた「ラーニングアナリティクス」【第4回】
ラーニングアナリティクス実践校が挫折しかねない「7つの課題」、その解決策は?(1/3 ページ)
ビッグデータを教育に生かす「ラーニングアナリティクス」に取り組む教育機関が直面しがちな課題とは何か。主要な7つの課題と、その解決策を示す。
第3回「九州大学でも実践中、『ラーニングアナリティクス』が“空論”ではないこれだけの根拠」では、九州大学や京都大学などが取り組んでいるラーニングアナリティクスの実践事例から、応用先として期待が高まる「アダプティブラーニング」の動向、ラーニングアナリティクスシステムの具体例まで、ラーニングアナリティクスを取り巻く現在の動きを整理して紹介しました。
ラーニングアナリティクスは、その目的も手段もさまざまであり、これさえやれば十分というベストプラクティスはありません。これからラーニングアナリティクスに挑む教育機関も、既にラーニングアナリティクスを実践している教育機関も、さまざまな課題や疑問を抱えているのが現状です。本稿では、ラーニングアナリティクスに取り組む教育機関が直面しやすい主要な課題を7つピックアップして、その解決策を示します。
- ラーニングアナリティクスに取り組みたいが、何から始めるべきか分からない
- ラーニングアナリティクスの利点を訴求できず、導入の稟議(りんぎ)が通らない
- 今使っている学習管理システム(LMS)がラーニングアナリティクスに使えない
- ラーニングアナリティクスで扱う個人情報の保護が心配
- ラーニングアナリティクスが現場で活用されない
- ラーニングアナリティクスを実践しても、思い通りの結果が出ない
- ラーニングデータサイエンティストになる方法が分からない
課題1:ラーニングアナリティクスに取り組みたいが、何から始めるべきか分からない
ラーニングアナリティクスの実践には、まずは過去に受講した授業や講義といった学習履歴データを収集する必要があります。既にLMSや学習用アプリケーションを導入している場合には、これらのデータを利用できます。授業/講義の出欠データや学習者のシステム利用履歴といった、学習履歴以外のデータも分析対象に含めることが可能です。
大事なのは「何のためのラーニングアナリティクスか」を明確化しておくことです。単に学習履歴を分析するだけであれば、学習履歴データを分析するだけで十分な場合があります。学習者の退学につながる行動を予測したり、成績向上のための施策を練ったりと、単なる分析にとどまらない目的があるのなら話は別です。学習履歴データに加え、学習者の退学や成績に関する情報など、分析の目的となるデータ(「目的変数」といいます)も取り込む必要があります。
まずは「何のためのラーニングアナリティクスか」を明確にした上で、現在収集し得るデータをリストアップし、導入目的を基に必要なデータを取捨選択することから着手するとよいでしょう。その上で教育ビッグデータを一元管理するデータベース「ラーニングレコードストア」(LRS)の構築や、LRS内にあるデータの分析の検討に入ります。ここは専門家に加わってもらってプロジェクトを進めるのがよいでしょう。
併せて読みたいお薦め記事
「ラーニングアナリティクス」とは何か
- AIブームが後押し? 「ラーニングアナリティクス」が教育界の“熱い話題”になった理由
- 教育ビッグデータ分析「ラーニングアナリティクス」に必須な“4つの機能”とは?
- 九州大学でも実践中、「ラーニングアナリティクス」が“空論”ではないこれだけの根拠
教育ビッグデータの活用例「アダプティブラーニング」とは
課題2:ラーニングアナリティクスの利点を訴求できず、導入の稟議が通らない
ラーニングアナリティクスの実践に必要な投資をする際、「何でもいいから取りあえず分析してみよう」という考えでは、組織内の稟議が通りにくいでしょう。前述の通りラーニングアナリティクスの導入目的が明確になっていればよいのですが、現実的には「やってみないことには分からない」という側面があるのも確かです。仮に導入目的が明確になっていたとしても、現在のデータセットから狙い通りの結果を導き出せる確証はありません。
このような背景から、ラーニングアナリティクスシステムの導入に当たっては、まずは小規模パイロット(試験)プロジェクトを実施することをお勧めします。お持ちのデータをラーニングアナリティクスシステムに投入することで得られる、可視化のアウトプットや結論の可能性を事前に確認しておくのです。あるいは教育ビッグデータの分析やラーニングアナリティクス関連の機能開発を担う人材「ラーニングデータサイエンティスト」がデータをチェックして、どのような結論が導き出せそうかを試算することで、導入後のイメージを得ることができるでしょう。
導入前検証という位置付けでベンダーの協力が得られれば、パイロットプロジェクトを無料もしくは低コストで実施できます。まずはパイロットプロジェクトでラーニングアナリティクスのメリットを明確にした上で、本格導入の計画を立案してはいかがでしょうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
動き始めた「ラーニングアナリティクス」
教育や学習活動から生まれる教育ビッグデータを生かす「ラーニングアナリティクス」。その実態を明らかにする。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
4
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
5
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
6
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
-
7
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
8
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
9
LLMの「過学習」、正しく説明している文章はどれ?
-
10
レガシー基幹システムをSAPに統合 山善が突き止めた「標準化と個別最適」の境界線
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー