動き始めた「ラーニングアナリティクス」【第4回】
ラーニングアナリティクス実践校が挫折しかねない「7つの課題」、その解決策は?(2/3 ページ)
課題3:今使っているLMSがラーニングアナリティクスに使えない
学習履歴データを収集するための標準規格が存在します。代表例は、米国防総省の内部組織Advanced Distributed Learning(ADL)の提唱する「Experience API」(xAPI、旧「TinCan API」)と、業界団体IMS Global Learning Consortiumの提唱する「Caliper Analytics」の2つです。利用中のLMSがこれらの標準規格に準拠していれば、後はこれらの規格に準拠したLRSを含むラーニングアナリティクスシステムを導入するだけです。
ただし現時点では、これらの規格に準拠したLMSは少ないのが実態です。そこで考えられるアプローチは、下記の3つです。
LMSにxAPI/Caliper Analytics準拠のデータ蓄積機能を実装する
現在利用しているLMSに手を加え、xAPI/Caliper Analyticsに準拠したデータ蓄積機能を追加することで、LMSからLRSへデータを渡すことが可能になります。機能の開発作業に加えてデータの設計作業が発生し、専門のノウハウが必要になるため、多くの教育機関にとって自力での実現は現実的ではありません。ただし多額の投資をしてカスタマイズ機能をふんだんに実装してきたなど、現在利用しているLMSを継続的に利用する理由があるケースでは検討に値します。
LMSのデータベースを直接分析する
ラーニングアナリティクスシステムを介さず、ラーニングデータサイエンティストがLMSに蓄積したデータを直接分析する手法もあります。LMSのデータベースへ直接アクセスをしたり、CSV形式など外部ファイルに保存したりして、LMSのデータを参照します。この形で継続的に運用するとなるとラーニングデータサイエンティストの負荷が高くなりますが、本格導入前のパイロットプロジェクトでの試用には適した方法です。
LMSをリプレースする
ラーニングアナリティクスシステムでの利用を前提に開発されたLMSへの入れ替えも、有力な選択肢となります。システムをリプレースするタイミングで、ラーニングアナリティクスに適したLMSを選定すればよいのです。
課題4:ラーニングアナリティクスで扱う個人情報の保護が心配
ラーニングアナリティクスの結果として導き出した結果が、個人が特定できない統計データの場合には個人情報に当たらず、組織外で利用することが可能なケースもあります。ただし個人情報保護の観点から、ラーニングアナリティクスに関連するデータの扱いには注意すべきです。
学習者の学習履歴データは、原則として受講者に帰属します。そのため学習履歴データの利用に当たっては、利用許諾を整備して各受講者の承認を取り付ける必要があります。利用許諾のひな型は、デジタル・ナレッジが設立した学習履歴の活用推進組織、学習履歴活用推進機構が無償で提供していますので、参考にしてみてください(参考:学習履歴活用推進機構のWebサイト)。
教育機関によっては、セキュリティポリシーで組織外への個人情報の持ち出しを禁止していることもあるでしょう。LRSは個人情報を含むデータベースなので、こうした教育機関では、クラウドサービスなど組織外のインフラでLRSを運用することは難しくなります。オンプレミスのシステムとして、イントラネットや専用データセンターなど組織内部にLRSを構築すれば、個人情報を含むLRSのデータを外部に公開することなく運用できます。
課題5:ラーニングアナリティクスが現場で活用されない
ラーニングアナリティクスは魔法の玉手箱ではありませんし、その処理内容が外部から分からないブラックボックスであってはいけません。ラーニングアナリティクスシステムが導き出した分析結果をうのみにするのではなく、どうしてその分析結果に至ったのかを知ることが大事です。それによって結論に至る理由を論理的に説明できるようになります。人は理解しないことには納得しないものですし、納得しないことには行動に移せず、ラーニングアナリティクスの効果的な実践につながりません。
まずはラーニングアナリティクスシステムの分析処理の概要を知る必要があります。さらに学習者がどのように学習を進めているのか、現場の教員がどのように授業や講義を進めているのかといった具体的な活動内容を熟知することも大事です。どのように分析するのが現実的で、何を導出すれば現場で活用できそうかを理解していないと、教員や学習者が有効活用しやすいフィードバックを提供することはできません。ラーニングアナリティクスでは、現場の実態やニーズを反映することがとても大事なのです。
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動き始めた「ラーニングアナリティクス」
教育や学習活動から生まれる教育ビッグデータを生かす「ラーニングアナリティクス」。その実態を明らかにする。
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