ノンパーシステント型VDIでパーソナライゼーションを実現
仮想デスクトップの使いにくさや管理負荷は「レイヤー化」で解消できる?
ノンパーシステント(非永続)型の仮想デスクトップインフラ(VDI)で、エンドユーザーの自由なカスタマイズを実現するのは簡単ではない。IT部門の負担を抑えながらカスタマイズ性を高める手段とは。
クラフトビール愛好家の中には、ホップの苦みが強めのインディアペールエール(IPA)を好む人が少なくない。それと同様にITプロフェッショナルは可能であれば、仮想デスクトップインフラ(VDI)の運用方式として「ノンパーシステント」(非永続)型を好む傾向にある。
ノンパーシステント型のVDIは、各セッションの終了後に状態をリセットするので、IT部門にとって管理が楽だ。それでもエンドユーザーは、少なくともある程度はパーソナルな仮想デスクトップを構築し、自分の好みに合わせてユーザーエクスペリエンス(UX)をカスタマイズしたいと考えている。
ローミングプロファイル
IT管理者は多くの場合、ノンパーシステント型VDIに「移動ユーザープロファイル」(「ローミングプロファイル」とも)を使って、ある程度のパーソナライゼーションを実現する。移動ユーザープロファイルは、パーソナライゼーションの設定を記載したユーザープロファイルを、仮想デスクトップではなくネットワーク共有サーバに保管する。
移動ユーザープロファイルは完璧な方法ではない。だがエンドユーザーのニーズをおおむね満たすことは可能だ。移動ユーザープロファイルは、ユーザープロファイル内に保存されているデータと構成設定だけを保管する。ユーザープロファイルがカバーしていないオブジェクトに加えた変更は、ログオフの時点で全て失われる。
ログオンとログオフの時間が長くなりかねないという問題もある。移動ユーザープロファイルではデータファイルの数が増え、ネットワークを圧迫するからだ。そのため多くの従業員を有する大規模企業にとって、移動ユーザープロファイルは必ずしも理想的な選択肢とは限らない。
レイヤー化でパーソナライゼーションを実現
移動ユーザープロファイルの代替となる選択肢の1つに「レイヤー化」がある。レイヤー化はOS仮想化の一種で、レイヤー化した複数の仮想ディスクに仮想デスクトップの要素を分割する手法だ。
VDI用の仮想ディスクをレイヤー化するのは、「Docker」をはじめとするコンテナの仕組みとそれほど違わない。コンテナでは、基本的なOSイメージを含むベースイメージを用意し、これを各コンテナに適用する。このベースイメージは、同じベースイメージを適用した各コンテナのカーネルの役割を果たす。コンテナにはアプリケーションのバイナリやレジストリなど、コンテナ化したアプリケーションの実行に必要な要素を格納する。
パーソナル仮想デスクトップをレイヤー化するには、OSレベルの抽象化を実現するために、複数の仮想ディスクが必要だ。こうした仮想ディスク全体で、クライアントOSの実行と、要求されたアプリケーションの実行に必要となる全てのリソースを提供する。
レイヤーの構成
レイヤー化した仮想ディスク群の最下層は、デスクトップOSのレイヤーとなる。利用しているベンダーにもよるが、その次のレイヤーは通常、全てのエンドユーザーに提供するアプリケーションを含める。一部のエンドユーザーのみに提供するアプリケーションのレイヤーが、1つまたは複数必要となる場合もある。例えば給与計算アプリケーションは、恐らく経理部門のエンドユーザーには必要だが、全てのエンドユーザーに提供する必要はない。
仮想ディスク群の最上層は、1つまたは複数のパーソナライゼーションレイヤーとなる。パーソナライゼーションレイヤーは、エンドユーザーがパーソナル仮想デスクトップを構築するために設定した、全てのカスタマイズをキャプチャーする。パーソナライゼーションレイヤーは1つの場合もあるが、ソフトウェアによって2つのレイヤーに分かれる場合もある。1つはインストールするアプリケーション用のレイヤーで、もう1つはカスタマイズ情報のためのレイヤーだ。
レイヤー化のメリットとデメリット
移動ユーザープロファイルとは異なり、レイヤー化ではユーザープロファイルに保存した情報だけでなく、エンドユーザーの全てのカスタマイズ情報をキャプチャーして保管できる。さらにレイヤー化は仮想ディスクをベースとするため、ストレージのスナップショット取得機能が利用できる。エンドユーザーが加えた変更のせいで何か問題が発生した場合、IT管理者はスナップショットを使って、他のレイヤーに影響を及ぼすことなく、変更をロールバックできる。
パーソナル仮想デスクトップのレイヤー化にはデメリットもある。「Windows 10」も含め、多くのクライアントOSはレイヤーに分割できるようにはなっていない。そのため仮想デスクトップで動作するクライアントOSに合わせて、VDIソフトウェアを設計しなければならない。レイヤー化のためのソフトウェアは、デスクトップOSの他の機能に影響を及ぼすことなく、必要なレイヤーを作成できるようにする必要がある。
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