“脱Excel”か“活Excel”か
増え続けるレポート業務を「Excel」「Access」「セルフサービスBI」で効率化する方法
レポート作成業務を担当すると、いつの間にか毎月の業務が増えている――「あれも調べて」という突発的な依頼に効率よく対応するには、「Microsoft Excel」の利用だけでは限界があります。
分析レポートは、なぜ増え続けるのか
分析レポート作成業務を始めた当初は、数種類の表とグラフを作成するだけだったにもかかわらず、月日がたつにつれて、毎回、大量の表とグラフを作成することになっていた――という経験がある人は少なくないのではないでしょうか。もちろん、作成した分析レポートが有効に使われていれば、作成する苦労も報われます。しかし、せっかく作った分析レポートが、ほとんど使われないことも少なくありません。そもそも、どうして分析レポートは増加してしまうのでしょうか。
1.時間経過により必然的に増加する
ビジネスにおいては次のような、区切りとなる期間単位が存在します。
- 年度
- 半期
- 四半期
- 月
- 週
- 日
さらには長期的な経営戦略を検討する際には、3年や5年といった期間を設定することがあります。これらの期間単位ごとにビジネス活動の結果を確認し、次の期間の活動方針を決定することで、企業は活動しています。分析レポートはこうした活動に密接に関わるもので、これらの期間単位で集計することを求められます。分析レポート作成を開始した当初はデータ量は少なく、短い期間単位の分析レポートのみの作成で済むのですが、時がたつにつれてデータが蓄積されていくと、レポート化可能な期間単位が増えていくため、分析レポート作成業務もそれに応じて増えてしまうというわけです。
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2.突発的な問題を分析するために増加する
企業のビジネス活動が常に順調であれば問題ないのですが、概して企業はさまざまな要因から突発的な問題に直面し、対応しなければなりません。このような場合、企業は現状の把握や、問題解決の糸口を探る目的で分析レポートを利用します。ただし、直面している問題の状況を可視化できる切り口で分析レポートが作られているとは限らないため、問題の状況を可視化できるような表やグラフを必要に応じて、新たに作ることになります。問題が解決した後は、これらの表やグラフを作る必要はなくなるはずです。しかし、その後の経過を確認したいといった用途で、継続して作成するように指示されることもあります。そして、いつの間にか、一時的に必要だったはずの表やグラフは、誰も作成終了を指示することがないまま、継続して分析レポートに盛り込まれることが当たり前となってしまうのです。
3.分析レポートを見る人の思い付きで増加する
分析レポートの形式が固まり、さまざまな状況が可視化されるようになると、当初はレポートを見る立場の人も喜びます。しかし何度か同じレポートを見ているうちに、代わり映えがしない結果を不満に思う人も出てきます。分析レポートの結果から、必ずしも毎回、新しい発見や知見が得られるとは限りません。しかし、こうした人は何らかのサプライズを常に望んでおり、特に根拠もない切り口での新たな表やグラフの作成を求めてくることがあります。一度きりの作成で、二度と作る必要がなければよいのですが「継続的に見ていくと、新たな発見や知見が得られるかもしれない」といわれてしまうと、定期的な分析レポートの一部として、組み込まれてしまうことになります。見る側にこのような人が多いと、分析レポートの量は、増加の一途をたどることになります。
効率化のファーストステップ:あらかじめ「Microsoft Access」にデータを蓄積しておく
前述のような理由から分析レポートは増え続け、それに比例して、表やグラフを作成する時間も長くなっていきます。分析レポート用の表やグラフはExcelで作成するケースが圧倒的に多いのではないかと筆者は考えていますが、分析レポート作成の担当者はどう対応していくべきでしょうか。
まず、週単位・月単位など定期的に分析レポートを作成することが決まっているようであれば、時間経過によって後に増えることが想定される半期、年度といった分析レポートの作成が効率的に実施できるように準備をしておくことが重要です。準備をしておかないと、関数やマクロ言語のVBA(Visual Basic for Applications)などを駆使して分析レポート作成業務を効率化しても、より日常的かつ短期的な週単位や月単位の分析レポート作成に個別最適化されてしまいがちになるからです。その結果、四半期、半期、年度といった期間単位の分析レポートの作成については、手作業が多く残ってしまうのです。担当者も手作業が煩雑だと感じつつも、分析レポートを作成する頻度が少ないため、なかなか効率化に着手するモチベーションが湧かず、効率化がおろそかになりがちです。そしていつの間にか当初は大して時間のかからなかったはずの分析レポート作成業務が、膨大な手順の掛かる面倒な作業になっていくのです。
このような事態を防ぐための準備として、分析レポートを作成するためのデータを1つのデータとしてまとめて蓄積しておくとよいでしょう。想定される期間単位と日付の関連をまとめた日付マスターも作成しておくと、期間単位の分析レポート作成作業が格段に効率化できます。
この日付マスターと蓄積データとのひも付けは、Excelの「VLOOKUP関数」(表内のデータを検索する関数)でも可能です。ただしデータの蓄積数が増加すると、関数を入力したセルが増え、Excelの動作に悪影響を与えることがあります。もしデータベースアプリケーション構築ソフト「Microsoft Access」(以下、Access)が使える環境があるようなら、Accessを使用すべきでしょう。Accessのクエリ(データ抽出の処理手順)を使えば、日付マスターと蓄積データをひも付けることはExcelと比較して、はるかに容易です。また、このようにデータを蓄積しておくことで、突発的な問題を分析する作業も効率化的に対応することが可能になります。なぜなら突発的な問題は、往々にして過去のデータをさかのぼった表やグラフの作成を求められることが少なくないからです。
効率化のセカンドステップ:セルフサービスBIで“思い付きの分析依頼”に対応する
前述の準備をしておくことで、時間経過で増加する分析レポートや、突発的な問題の分析への効率的な対応が可能になります。では分析レポートを見る人が思い付きで依頼してくる分析レポートの作成には、どう対応すべきでしょうか。
データを蓄積していれば作業自体の効率化は可能ですが、その分析レポートの作成が恒常化してしまうと、いくら効率化したからといっても、作業時間自体は増えることになってしまいます。このような場合、思い付きで依頼してくる人に対して、セルフサービスBI(ビジネスインテリジェンス)ツールの使用を提案することを検討してみるといいでしょう。例えばMicrosoftの「Power BI」やQlik Technologiesの「QlikView」は、1台のPCで使用するのであれば、無償で利用することができるため、価格的な導入障壁はありません。
ただし、思い付きで分析レポートを依頼してくる人は、必ずしも自分で分析したいと思っているわけ訳ではないため、セルフサービスBIの使用に難色を示すことも考えられるため、
- セルフサービスBIの使用方法についてきめ細かなサポートをする
- 新たな発見や知見を自分で探し出し、報告できるといったセルフサービスBIのメリットをアピールする
などの支援をする必要があるでしょう。セルフサービスBIを実際に使用してもらうことができれば、作成業務の負担がなくなることに加えて、今までレポートを見る立場だった人がBIツールのメリットを実体験することにより、BIの本格導入に前向きになる可能性もあります。
このように分析レポート作業の効率化は、ファーストステップとして「作業自体の効率化」を図り、セカンドステップとして「作業自体を減らす、なくす」ことを目指していくとよいでしょう。そして、その時々に応じて、Excelにこだわらず、AccessやセルフサービスBIなどのツールを積極的に活用していくことが、作業の増加を防ぐ決め手となっていくのです。
村山 聡(むらやま・さとし)
1971年愛知県生まれ、名古屋大学経済学部卒、中小企業診断士。
IT企業在職中に、単一業種においてキャリアを積んでいくことに疑問を感じ、どんな業界、職種でも通用する知識を得るべく中小企業診断士を取得。複数社を経て、現在の勤め先にて、コンサルタントとして、データを活用した業務効率改善に取り組む。
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“脱Excel”か“活Excel”か
ほとんどの企業が使っている表計算ソフト「Microsoft Excel」(以下、Excel)。便利なツールですが、本来の目的を超えて“使いこなし過ぎる”ことが、かえって業務効率を低下させてしまったり、業務の属人化につながってしまったりする場面があるのではないでしょうか。 このコラムでは、日常業務でよく見掛けるExcelの活用例を紹介しながら「こんな場面は脱Excelを考えた方がよい」「こういうExcelの活用法はお薦め」といった知見を紹介していきます。
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