IoTデバイスの進化が常識を変える
「iPhone」発売から10年、しかしスマホは10年後には使われていない?
今日、スマートフォンなしの生活は想像できない。だが、真にスマートなIoTデバイスが普及すれば、スマートフォンは特別な存在ではなくなるはずだ。
次期スマートフォンはどのような機能を搭載し、ワイヤレス充電はいつ実現し(現状は本当のワイヤレスではない)、端から端までボタンレスで曲面ガラスのタッチスクリーンはいつ登場するのか――。人々はそうした話題で持ちきりだ。スマートフォンは今や誰にとってもなくてはならない存在であり、スマートフォンなしの生活など想像できないほどだ。だが皆、肝心な点を見落としている。10年前、Appleの「iPhone」が発売され、ITの世界は一変した。けれども当初、多くの人たちはiPhoneの失敗を予想した。彼らは、インターネットに接続できるコンピュータ(ノートPCより性能は劣るとはいえ)をいつでもポケットに入れて持ち歩ける便利さを予想できなかったのだ。当時と同様、私たちは今スマートフォンに依存し過ぎるあまり、先のことを正しく予測できずにいる。
今後は、あらゆる場所からインターネットに接続できるようになり、デバイスの処理能力は文字通り桁違いに向上するはずだ。スマートウォッチやスマートメガネ、スマート冷蔵庫など、ありとあらゆる分野で優秀なデバイスが登場することになるからだ。もしかするとキッチンの引き出しまで完全に自動化する可能性すらある。となれば、何でもこなせる万能なスマートフォンやノートPCを持つ必要はなくなる。道路や車、ビル、レストラン(単なるスマートレジやスマートエレベーターだけでなく)も含め、真にスマートなデバイスに囲まれた世界においては、スマートフォンはもはや特別重要な存在ではない。新型iPhoneを発売日に手に入れることなど、どうでもいいことになるだろう。
性能とスペックが全てではない。このことは、これまでに何度となく消費者が教えてくれている。消費者がデスクトップPCよりも小さいモバイルデバイスでコンテンツを利用したがるのは、「ちょうどそこにあって便利」だからだ。同じ理屈で、今後はスマートウォッチの有用性も低下することになるだろう。スマートウォッチの他にも、よりインテリジェントなデバイスがどこからでもインターネットに接続できるようになれば、そちらのデバイスを使う方が便利だからだ。同様に、バスの発車時刻はAmazonの人工知能(AI)アシスタント「Amazon Alexa」に尋ねる方が、スマートフォンを取り出しアプリを起動して調べるよりも簡単であり、スマート冷蔵庫を開くだけで「ブロッコリーの鮮度が落ちかけていて、前日に肉屋で買った牛肉があるから」という判断の下、「ブロッコリービーフ炒め」を提案してもらう方が、スマートフォンでレシピを検索するよりも簡単で便利だ。
今はまだ、人々がスマートフォンを必要としなくなる未来を想像するのは難しい。現在インターネットに接続している「モノのインターネット」(IoT)デバイスの大半は、本当の意味ではインターネットに接続していないからだ。IoTデバイスはデータの送受信をWi-Fiやスマートフォンに依存している。データを収集し、魔法のごとく自動的に仕事をこなすことができるIoTデバイスは確かに、インターネット接続機能もデータ処理能力も持たない従来の同等製品と比べて概して優れている。だが現行のIoTデバイスには、データを相互に連携させて関連付ける機能がない。今日コネクテッドホームを実現するとなれば恐らく、スマートドアベル「Ring」やスマートサーモスタット「Nest」、スマートLED照明「Hue」、AIアシスタント「Alexa」、スマートスピーカーの「Sonos」や「HomePod」、スマート体重計「Withings」などを用意することになるだろう。こうしたスマートデバイスはそれぞれ、私たちの生活を少しずつ向上してくれる。だがデバイス間で干渉が起きた場合、極めて厄介なことになりかねない。先進社会ならではのぜいたくな悩みではあるが、Sonosを使って大音量で音楽を視聴中にRingの呼び出しが聞こえず、音楽をミュートにするまでに30秒もかかるというのでは、ひどく厄介だ。
将来的に、コネクテッドホームは本当の意味で接続された環境となるだろう。玄関に誰かが近づいてくるとRingがそれを認識し、来訪者がドアベルを鳴らすより先に室内の音楽のボリュームを下げてくれるので、家の人はドアホンの音に気付き、誰が来たかを画面で確認できる――。そういった環境だ。スマート冷蔵庫は、冷蔵庫の中身を把握し、賞味期限を管理できるようになる。スマートオーブンは、料理が焦げないようアラートを出してくれる。それどころか、スマートオーブンは家中のあらゆるセンサーと連携することで使用者の居場所を特定し、その部屋でのみ音声でリマインダーを通知してくれるので、他の部屋にいるゲストらの邪魔になることもない。コネクテッドホームとは本来、こういうものだ。
私たちが今日利用しているスマートセンサーやスマートデバイスはそれぞれスマートな機能を備えるが、相互のデータを自動的に連携する機能はまだ搭載していない。確かに、リストバンド型活動量計「Fitbit」とスマート体重計Withingsのデータを連携させることは可能だ。だがこの連携は自動化されてはおらず、誰でも実行できるほど簡単でもない。各種のスマートデバイスが至るところで相互に連携しながら機能する世界を実現するためには、まずこうしたデバイス間でもっと簡単にデータを共有できるようにすることが肝要だ。Appleがテレビ用プラットフォームにシングルサインオン機能を追加したのと同様に、今後、Appleの「HomeKit」をはじめとするスマートホームプラットフォームはシングルサインオン機能を通じてこうした連携を実現することが予想される。
IoTデバイスとプラットフォームの改良は今後も進み、近い将来、よりスマート化したデバイスが家の内外を問わずさまざまな場所に導入されることになるだろう。そうしたIoTデバイスのそれぞれが、スマートフォンをいちいち取り出すよりも便利な存在となる。Appleのスマートウォッチ「Apple Watch」を使い始めてからiPhoneをチェックする回数が減ったという声が多く聞かれるが、それと同様、今後はスマートデバイスを新たに導入するたびに、ユーザーのスマートフォンへの依存は薄れていくことになるだろう。10年後には、この傾向が変曲点を迎え、以降、ユーザーのスマートフォン依存度は低下の一途をたどることが予想される。これは、10年前にiPhoneがPCに与えたのとまさに同じ影響だ。そして20年後、スマートフォンは今日の「iPod」と同様、引き出しの奥深くにしまい込まれ、すっかり忘れ去られているのではないだろうか。
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