モジュールと標準を採用
IoT開発の面倒事を一掃する「プラットフォーム」の底力(2/2 ページ)
コンポーネントから「リーン」へ
プラットフォームを使用するこうしたアプローチは「リーン生産方式」の基礎となる。リーン生産方式は、標準ベースのプラットフォームの使用と、個別の能力を補完し合う人材で構成する統合作業チームを組み合わせる方法だ。チームのメンバーは絶えず相互に連絡を取り合い、自チームの作業を計画し、その計画に従って取り組む。異なる作業をする作業チームも同様に行動し、それぞれ独自の業務(「モジュール」)に取り組む。ただし作業チーム同士の連絡も絶やさない。各モジュールは標準インタフェースを共有するため、モジュールを組み立てていけば、プロジェクトの終了時にはシステムが完成する。
共通インタフェースを備えるマイクロコントローラーやマイクロプロセッサを使えば、デバイスドライバがテスト済み、かつ検証済みですぐに使えることが分かっている。そのためMCUやMPUを交換するだけで、迅速かつ容易に新しいシステムのレイアウトを実現できる。全く新しく設計するのではなく、システムの中で変更が必要な部分だけに着目して、新しい部品による電力の削減、メモリの増設、パフォーマンスの向上、新しいネットワーク接続の追加などを実現できれば、市場にリリースするまでの時間と総所有コスト(TCO)が抑えられる。
設計上の決定事項として、RTOSとプロセッサの選択だけでなく、プラットフォームの選択も重要であることが明らかになりつつある。プラットフォームは、長期的なスケーラビリティや適合性、拡張性に大きな影響を与えるからだ。
ファイルシステムやネットワーク接続などの標準機能に加えて、強固なセキュリティも必要になる。セキュリティは、デバイスドライバからアプリケーションのコーディング標準に至るまで、あらゆる段階で問題になる。堅牢(けんろう)なプラットフォームはデバイス設計の基礎となるだけでなく、セキュリティの根幹にもなる。セキュリティは、アドオンのコンポーネントの選択にも、RTOSの基本設計にも影響を及ぼす。
事前検証済みで、かつOSイメージへの選択的な添付や統合が可能なセキュリティ補完コンポーネントを同梱するRTOSは、通信相手のコンポーネントがネットワーク環境や外部システムの内部にある場合でも、安全に相互作用できるセキュアなシステムを構築するのに大いに役立つ。通信の面では、RTOSは暗号化通信プロトコルのTLS(Transport Layer Security)を含む。TLSは、SSL(Secure Socket Layer)やIPsecに代わるものだ。
セキュリティを確保できるRTOS固有の特徴には他にも、起動時に不正な改ざんを検知するセキュアブートや暗号化、自動フォールバックなどがある。自動フォールバックとは、試行に失敗した場合や攻撃を検知した場合に元の状態に戻せる機能を指す。
ここまで、リーン生産方式やセキュリティなど、プラットフォームの採用で実現が容易になる多くの特性を取り上げてきた。他には安全性がある。RTOSの中で安全性を支える大きな特徴には、特定の誤差内での実行を保証する「確定性」と、緊急停止を備えた「インスタントオン」(即時起動)の2つがある。確定性は予測可能性を実現する。予測可能であれば、テストが可能になる。インスタントオンと緊急停止により、非常事態に対処するために、システムを素早く停止/再起動できるようになる。
IoTの場合は「ネットワーク接続」という条件が新たに加わる。ネットワーク接続には幅広い種類があり、無線に限っても種類がかなり広がっている。無線接続の仕組みには、通常の無線LANに加えて、無線LANアクセスポイント同士をメッシュ状に結んだメッシュ型無線LAN、従来型Bluetooth(クラシックBluetooth)、低消費電力規格のBluetooth Low Energy、IPv6通信用の低消費電力ネットワーク規格6LoWPAN(IPv6 over Low-Power Wireless Personal Area Networks)、3G、4G、UHF(極超短波)などがある。
有線接続インタフェースも多岐にわたる。同期型と非同期型のシリアルI/OやUSB、近距離にあるデバイス同士を接続するSPI/I2C、音声データ通信用のI2S、SDメモリーカードと同様のスロットを利用するSDIO、自動車での通信を想定したCAN、インターネット接続などが試行され、検証され、テストされると想定される。
システムを完成させるには、メモリやディスプレイ、カメラ、センサーシステムに加えて、フラッシュストレージやSDメモリーカードのようなストレージデバイスの制御と接続を可能にするプロトコルを利用できる必要がある。当然ながら、こうしたシステムはクラウドに接続し、大量のデータを頻繁に受け渡すことになる。
建築と同様、ネットワーク接続型組み込みシステムの設計にも「まずはしっかりとした土台作りから」という教訓が当てはまる。モジュール方式かつ標準ベースで、適合性が高く構成可能なRTOSとプロセッサの組み合わせから着手して、将来の拡張と強化を見据えることが成功の鍵になる。このことは、市場投入までの時間、初期開発コスト、顧客の将来のニーズに応える能力という観点から考えても適切だ。
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