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いまさら聞けない「電子お薬手帳」と「電子処方箋」、調剤薬局にどんなメリットが?
「電子お薬手帳」と「電子処方箋」は、調剤薬局のIT化にとってキーとなる技術トレンドです。これらの普及がもたらすメリットと、普及を阻んでいる壁について解説します。
今回は、普及が始まった「電子お薬手帳」と、2016年4月に解禁となった「電子処方箋」について解説します。
医療費抑制施策としての残薬減少・減薬の推進
わが国は高齢者が3割を超える「超高齢社会」を迎えようとしています。日本政府は、団塊の世代が75歳以上になる2025年までに「地域包括ケアシステム」を構築し、地域ごとに効率的な医療サービスと介護サービスが提供できるように準備を進めています。
そこで、患者が薬を飲み忘れたり、複数の医療機関から同じ薬を処方されたりして生じる薬の飲み残し(いわゆる「残薬」)を減らす動きに注目が集まっています。前回(2016年)の診療報酬改定でも、残薬の減少および減薬を推進するアクションが高く評価されています。
2016年度の残薬・減薬関連点数のまとめ
- 「認知症地域包括診療加算(30点)」が新設。その中で、1処方につき内服薬5種類以下、うち向精神薬が3種類以下と制限を設けた
- 「薬剤総合評価調整管理料(月1回、250点)」が新設。外来・在宅の患者で、6種類以上の内服薬処方について2種類以上減らした場合に評価。処方調整に際して、別の医療機関や保険薬局に照会・情報提供した場合は、「連携管理加算(50点)」を加算
- 「処方箋様式」を変更し、薬局が調剤時に残薬を確認した場合の対応欄を設けた
- 湿布薬は外来・在宅の患者について、原則1処方につき70枚以下に制限。30日超の長期投薬についても、原則、下記のいずれかを行うことが必要となった
- 30日以内の再診
- 他院紹介(注1)
- 分割調剤
- 「薬剤服用歴管理指導料」は、初回来局時の点数に比べ、2回目以降の点数を低く設定。お薬手帳を持参していない患者は、来院回数にかかわらず、初回来局時と同じ点数を算定。少なくとも過去1年分の服薬情報を一覧的に閲覧できることや、データ移行ができるなど要件を満たした電子お薬手帳については、紙媒体と同様の点数の算定も可能。
※注1: 200床以上の保険医療機関の場合。紹介先の保険医療機関は200床未満の病院または診療所に限る。
併せて読みたいお薦め記事
米国事例:多剤大量処方や高額医療費の問題に挑戦する薬局IT
国内事例:調剤薬局のIT化
医療等IDに関する記事
急速に進む電子お薬手帳の普及
このように、電子お薬手帳が紙媒体同様に認められたことで、急速な普及が見込めるようになりました。ITを活用して患者の処方薬の情報を一元管理することで、残薬減少が推進するのではないかと期待が集まっています。
以下の表に、本稿公開時点で展開中の電子お薬手帳の一部を紹介します。これ以外にもさまざまな電子お薬手帳が存在しています。これらのアプリは、日本薬剤師会が提供する「e薬Link(イークスリンク)」によって、相互に閲覧が可能になっており、この仕組みを利用することで、システム間、薬局間での相互連携が可能となっています。
参考
e薬Link(電子お薬手帳相互閲覧サービス)(日本薬剤師会)
| アプリ名(リンク先は製品紹介ページ) | 提供組織 |
|---|---|
| eお薬手帳 | 日本薬剤師会 |
| お薬手帳プラス | 日本調剤 |
| harmo | ソニー |
| ヘルスケア手帳 | パナソニックヘルスケア |
| pharumo | ファルモ |
| EPARKお薬手帳 | フリービットEPARKヘルスケア |
| 大阪eお薬手帳 | 大阪府薬剤師会 |
| アインお薬手帳 | アインホールディングス |
| おくすり手帳Link | NTTドコモ |
電子処方箋の解禁、今後の普及は
2016年4月には、処方箋の電磁的作成・交付を可能にする厚生労働省令が改正され、電子処方箋が実質解禁されています。それに伴い「電子処方せんの運用ガイドライン」も公開されています。
電子処方箋のメリットについては、医療情報ネットワーク基盤検討会がまとめた「電子処方箋の実現について(2013年3月)」によると、次の10項目が挙げられています。
- 処方情報の有効利用が可能となる
- 医療機関間、ならびに医療機関と薬局間での情報の共有・共用化が進む
- 医薬品の相互作用やアレルギー情報の管理に役立てることが可能になる
- 処方箋の偽造や再利用を防止できる
- 電子化によって、紙媒体の処方箋の印刷にかかるコストが削減できる
- 薬局から医療機関へのフィードバックが容易になる
- 医療機関は、疑義照会(注2)や後発医薬品への変更情報を自施設の医療情報システムに反映することが容易になる
- 薬局での処方情報の再入力などにかかる労務軽減や、誤入力の防止が可能になる
- 薬局でファクシミリを用いている処方箋の電送を電子的に受け取ることや、処方箋原本を電子的に受け取ることが可能になる
- 薬局は、調剤済みとなった紙媒体の処方箋の保管スペースなどを削減できる
※注2:医師が発行した処方箋の記載に疑問点や不明な点があるとき、薬剤師が処方箋の作成者(処方医)に問い合わせて、薬剤が適切かどうか確かめること。
このように、医療機関および薬局では、電子処方箋から多くのメリットを享受できると期待されています。しかしながら、医師・薬剤師の承認制度、医療等ID(注3)の普及が進んでいないために、一気に電子処方箋の普及も進むというわけにはいないのが現状です。地域包括ケアシステムの中核となる仕組みであり、早急な実行が期待されています。
※注3:医療や健康、介護分野の情報に付与する個人識別番号の仮称。日本政府はマイナンバー(社会保障・税番号)制度の基盤を活用して2018年4月から段階的に運用し、「医療連携や研究に利用可能な番号」として2020年の本格運用を目指すとしている。
ここでも、医療における電子化の普及は、法整備やそれを実行する医療機関、薬局の理解とともに、設備投資が重要であると分かります。
次回は、2018年診療報酬改定で評価が見込める「遠隔診療」のもたらす変化について考えてみます。
著者紹介
大西大輔(おおにし・だいすけ)MICTコンサルティング
一橋大学大学院MBAコース修了。医療コンサルティング大手に入社。2002年に医療IT機器の常設展示場「MEDiPlaza」を立ち上げ、企画運営、スタッフ指導、拠点管理などを担当。2016年10月に医療ICT専門コンサルタントとして独立し、MICTコンサルティングを設立。医療機関向けシステムの開発アドバイス、導入アドバイス、医療IT人材の育成などを行う。過去2000件を超える医療機関へのシステム導入の実績から、公的団体を中心に講演を多数実施している。
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