導入経験者から学べること
「Windows 10」導入の“悲喜こもごも” 担当者がこっそり教える秘話(1/2 ページ)
自動アップデート対応機能への苦労や、堅牢なセキュリティの価値など、実際に「Windows 10」を導入した企業でないと知り得ないメリットとデメリットを紹介する。
2015年7月にMicrosoftが「Windows 10」をリリースした時、多くのITプロフェッショナルは腕組みをして様子見をし、静観していた。IT業界では新しい技術が登場した場合、技術がどのようなものであるかにかかわらず、飛びつかないのが通例である。「Windows 8」で大転換があったことに引き続いてWindows 10でも大転換が起き、この通例は特に的を射ていた。しかし、スイス最大手の保険会社は通例を無視し、例外的にすぐにWindows 10を導入した。
このスイスのDie Mobiliarは2015年10月にWindows 10への移行を開始した。IT部門はPCのライフサイクルが終わるため、アップグレードを計画していた。そのため、同時に新しいソフトウェアを導入するのは道理にかなっていたとシステムエンジニアのサーシャ・トーメ氏は言う。
「まだ(Windows 10が)リリースされたばかりでしたので、このプロジェクトには少し苦労しました」とトーメ氏は言う。「たくさんの問題に対処しなければなりませんでした」
Windows 10の導入の計画、実行の実務経験のあるトーメ氏やその他のITプロフェッショナルにとっての問題は、例えばソフトウェアの互換性がないことやバックエンドリソースの消費、頻繁なアップデートなどであった。多くの企業はこれらの問題に直面することもあるが、Windows 10はより強固なセキュリティを提供してくれたり、ハードウェアをアップグレードすべき理由も提示してくれたりする。
Windows 10移行の最前線
Windows 10への移行方法は多種多様で、それぞれにメリットとデメリットがある。
Die Mobiliarの場合、まず、アプリケーションやドライバ、その他のコンポーネントがWindows 10と互換性があるかどうかをテストした。しかし、このプロセス開始後1カ月でMicrosoftがオペレーティングシステムの1回目のアップデートを提供した。このアップデートにより、新しいハードウェアに既にインストール済みのドライバの幾つかが機能しなくなり、IT担当者はテストを再度やり直さなければならなかった。というのもこれら2つのビルドが非常に異なっていたためだとトーメ氏は言う。
アップデートの頻度やそれに伴う大幅な変更に頭を抱えている組織はDie Mobiliarだけではなかった。Microsoftは1カ月に1度Windows 10の自動アップデートを行う。その際に、前月の更新後にリリースされたパッチや新機能全てを含むバンドルとして提供するため、IT担当者はこの更新内容をほとんどコントロールすることができない。また、アップデートによっては既存の機能が削除される。例えば、PCのWi-Fi接続の共有やホットスポットへの自動接続を可能にするWi-Fi Senseネットワーク共有機能は2016年8月のAnniversary Updateで提供が打ち切られた。
「IT担当者は常にテストを行い、次のアップデートに備え、どのようなアップデートが提供されるかを調査する必要があります」とITコンサルタント会社Howell Technology Groupのエンドユーザーコンピューティングソリューションアーキテクトのジェームス・ランキン氏は言う。「問題を全て解決したと思ったら、また初めから全てやり直すことが必要になる場合もあります。こんなに頻繁に変更があるオペレーティングシステムだとは誰も予期していなかった」
そのため、マサチューセッツ大学(UMass)ローウェル校は、徐々に移行する方法を取っている。本校は従業員向けにさまざまなカスタマイズを加えたアプリケーションを多数提供しているため、「全てのコンピュータに対してWindows 10への大規模な移行を実施していたら、大規模な障害につながっていただろう」とプラットフォームおよびシステムエンジニア統括者のスティーブ・アタナス氏は言う。その代わりに本校は、4年ごとのPCアップグレード期限が来たら、ユーザーが個別にWindows 10に移行する。この方法を取ることで、本校では徐々にWindows 10へ移行でき、1度に問題に対処するユーザー数を減らすことができる。
「もう少しゆっくりと移行しなければなりません」とアタナス氏は言う。「実際のところ、アップデートに合わせての移行には対応できません。たくさんのものごとに支障が出てしまうと考えられるからです」
とはいえ当初は、自動アップデートへの対処が問題であった。
「朝に出勤し、コンピュータを起動したら、画面に『アップデートに30分かかります』と表示されると、予想外ですしイライラします」とアタナス氏は言う。「Microsoftがより大きな環境でこのような問題への適切な対処法を十分に説明したとは思えません」
この問題を巧みに処理するため、本校はLong Term Servicing Branch(LTSB)を導入した。LTSBを用いると、IT担当者は大掛かりなアップデートを受ける回数を減らし、今、更新したくないアップデートを数カ月間繰り越すことが可能になる。
また、古いWindows 7搭載PCをアップグレードするのではなく、Windows 10を新しいPCにデプロイすることで、IT担当者は問題の原因をより簡単に見つけられる。例えばデスクトップイメージも一新したため、Windows 10を起動してブルースクリーンになった場合、デバイス自体に問題があると特定できるとアタナス氏は述べた。
「アップグレード版ではない、新しいクリーンイメージを提供する方が良いでしょう。それが利用者のためになります」とアタナス氏は言った。
一方で、ある大手法律事務所は大規模な移行方法を選択した。同事務所は2016年初めの1カ月間に1200人のユーザーをWindows 10に移行させた。新しいハードウェアが移行の動機であった。
「現在販売されているハードウェアは全て、Windows 10で動作することを想定しています」と同事務所のCIOは匿名を条件として話した。「しかし現在販売しているハードウェアは、古いOSで動作することを想定していません」
この大手法律事務所のケースでは、IT担当者やユーザーがこのような大規模なWindows 10デプロイメントを簡単にできるようにするために、特定の時間帯にユーザーが予約し、Windows 10へ移行できるシステムを構築した。IT担当者は、予約した時間帯にユーザーを呼び出し、新規および既存PCの両方を遠隔操作し、ユーザーのアプリやデータ、設定を既存のデバイスのハードドライブからバックエンドサーバに移行させ、その後、それら全てを新しいPCに移行した。サードパーティーの請負業者がユーザーに新しいノートPCを配達し、古いノートPCを廃棄した。
これはユーザーにとっても簡単だった。IT担当者にとっての問題は「Microsoft Outlook」のキャッシュを新しいPCに再構築するのに時間がかかることだけだった。「時間がかかったのは、弁護士が保存した膨大な量の電子メールを移し替えたからだ」と同事務所のCIOは言う。
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