“教員の卵”×iTeachers座談会【第1回】
今の子どもはキーボードよりフリック入力――“教員の卵”がタブレットに注目する訳
教員を目指す学生は、教育機関で進むIT活用にどう向き合い、どうITを活用しようとしているのか。教員との座談会から明らかにする。
教育機関の間でIT活用が広がる中、新米教員が初めて教壇に立ったときからITを活用することは、珍しいことではなくなった。これからの教員は、数ある教育手段の1つとしてITと向き合い、適切に使いこなしていくことが求められる。
教員を目指す“教員の卵”は、教育機関でのIT活用について、どのように考えているのだろうか。それを明らかにすべく、大学教員と、教員を目指す大学生との座談会を開催した。現役の教員側、これから教員になる学生側それぞれの立場で、思うところを赤裸々に語ってもらった。
第1回は座談会の議論の中から、教育機関のIT導入の代名詞ともいえる「タブレット」に関する内容を中心に紹介する。大学教員側は、教育現場へのIT活用を実践する教育者チーム「iTeachers」のメンバーであり、玉川大学准教授の小酒井 正和氏。学生側は同大学の学生である相原拓実さんと加藤千春さんが参加した。モデレーターはiTeachersのメンバーで、NPO法人(特定非営利活動法人)のiTeachers Academyで事務局長を務める小池幸司氏。
参加者(所属・役職は取材時)
小酒井 正和氏 玉川大学工学部マネジメントサイエンス学科准教授
相原拓実さん 玉川大学工学部マネジメントサイエンス学科3年
加藤千春さん 玉川大学工学部マネジメントサイエンス学科3年
モデレーター
小池幸司氏 iTeachers Academy事務局長
タブレットが標準デバイスへ
小池氏 教育機関の間では、授業用デバイスとしてタブレットを導入する動きが続いています。教員志望の相原さん、加藤さん共に、授業でのタブレット活用に前向きだと聞きました。お二人はタブレットのどのような点に注目していますか。
加藤さん 軽くて薄いタブレットは持ち運びが簡単で、校舎の内外を問わずいろいろな場面で活用しやすいのが魅力的です。ノートPCも外に持ち出すことはできますが、タブレットの手軽さにはかないません。
相原さん ノートPCの場合、カメラ搭載機種でもWebカメラ用のインカメラしか備えていないことが一般的で、例えば遠足で写真を撮ることすらままなりません。タブレットであれば、インカメラだけでなくアウトカメラを内蔵しているものが多く、かつ本体も軽量なので、手軽に撮影できます。
小酒井氏 「遠足でタブレットを使う」という発想が自然に出てくるんですね。
加藤さん スマートフォン感覚で入力できることも、タブレットのメリットです。例えばAppleの「iPad」であれば仮想キーボードによる入力に加えて、設定をすればスマートフォンと同様のフリック入力ができます。
相原さん 「キーボード入力よりも、スマートフォンのようなフリック入力の方が扱いやすい」と感じる子どもは少なくないはずです。PCを使い慣れた人であれば「文字を入力するのであればキーボードがあった方がよいのではないか」と思いますよね。でも今の子どもが使い慣れているのは、PCではなくスマートフォンなのです。
「タブレット1人1台」が実現する授業
小池氏 先駆的にタブレットを活用してきた教育機関を中心に、学習者のタブレット1人1台環境の整備を進める動きがあります。1人1台環境を前提にした場合、どのような授業を実現したいと考えていますか。
加藤さん 学習者がタブレットに回答を書き込んだら、教員がクラス全員の回答を同時に確認したり、スクリーンに投影してクラス全体で共有したりできるような仕組みを用意したいと考えています。
学習者は自分の意見や回答によほどの自信がないと、授業中に挙手して発言することは難しいものです。SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)感覚で、学習者が自分の答えや意見を気軽に発信して共有できるようにすれば、教員は「こういう意見があったから、皆で考えようか」といった具合に、議論を進めやすくなるはずです。
小酒井氏 LoiLoの「ロイロノート」シリーズやMetaMoJiの「MetaMoJi ClassRoom」といったタブレット向けの学習支援システムは、こうした授業の実現に役立ちますね。クラス全員の考えを即座に共有できるので、アクティブラーニング(能動的学習)にも役立ちます。こうした授業の基盤となるITの整備は、極めて重要です。
小池氏 1人1台環境を実現するとなると、教育機関や教員が管理すべきデバイスの数が非常に多くなります。適切な管理の仕組みを検討する必要がありそうです。
相原さん 例えばAppleのタブレット「iPad」の場合、iPadの管理機能を持つ「iTunes」を使えば、利用可能なアプリケーションや機能を制限するといった管理ができます。でも管理できる項目には限界がありますし、手作業で1台1台管理するとなると手間が掛かる。多くのデバイスを活用する際は「モバイルデバイス管理」(MDM)製品をしっかりと導入したいと考えています。
タブレットでどのようなアプリを使うべきか
小池氏 タブレットを活用した授業を効果的なものにする上で、数多く存在するタブレット向けアプリケーションが大いに役立ちます。お二人は教員になったら、教育現場でどのようなアプリケーションを活用したいと考えていますか。
相原さん Googleの表計算ツール「Googleスプレッドシート」をはじめとする、共同作業を支援するアプリケーションの活用に興味があります。小酒井先生が開催されている「教師虎の穴」という教員志望者向け勉強会では、複数人がGoogleスプレッドシートに意見を書き込み、その画面をプロジェクターに映し出して議論する取り組みを体験して、面白さと可能性を感じました。「LINE」などのコミュニケーションサービスと併用すれば、学校の内外にいるメンバーと話をしながら編集ができます。
加藤さん まだ使い込めていないのですが、同じく教師虎の穴で実践をした「Scratch」などのプログラミング教育支援ツールを導入したいと考えています。現在は2020年での必修化が決まった小学校でのプログラミング教育が注目されていますが、こうしたプログラミング教育支援ツールは小学生だけでなく、中学生や高校生に対するプログラミング教育にも役立つはずです。
続く第2回は、タブレットや電子黒板、プロジェクターなどの組み合わせで実現する授業環境について、その可能性と課題に関する内容をピックアップして紹介する。
執筆者紹介
栃尾江美(とちお・えみ)
大学卒業後、ITコンサルタントとして外資系IT企業に勤務し、クライアント向けに業務システム(SAP ERP在庫購買管理モジュール)の導入などを担当。2005年にライターとして活動をスタートし、雑誌、Webなどに記事を執筆。ジャンルは多岐にわたり、働き方(女性活用、時短、リモートワーク)、IT、デジタル、子育て、教育、採用関連、経営者インタビューなど。プライベートでは2児(♂)の母。Webサイトはemitochio.net。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
“教員の卵”×iTeachers座談会
教育機関の間でIT活用の動きが広がる中、これから教職に就く教員志望の学生はITについてどう考え、どう活用しようとしているのか。IT活用を推進する教育者チーム「iTeachers」と、教員志望の現役大学生による座談会から、その答えを探る。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[オーティファイ株式会社] AIでコーディングは加速したのにテストはそのまま? いまQAに必要な進化とは -
事例
[オーティファイ株式会社] QAで開発サイクルを遅延させない 8社の事例に学ぶ「テスト工程」の課題解決策 -
製品資料
[株式会社ガラパゴス] 「AIっぽい広告」の山に埋もれさせない AIマーケで着実に成果をだす秘訣とは? -
製品資料
[株式会社ガラパゴス] 「広告投資」調査レポート2026:勝ち組企業は何に投資しているのか? -
製品資料
[株式会社Helpfeel] 「問い合わせの渋滞」を解消、情シスの負担を軽減する“次世代型AI”活用方法
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
2
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
3
「Linuxサーバの長期運用とRed Hat Enterprise Linux」に関するアンケート
-
4
AI全部入り「Microsoft 365 E7」に企業が二の足を踏む訳 移行意向はわずか4%
-
5
9割が頓挫する「AI内製化」 差がついたのはツールより設計力
-
6
「企業内サーバ環境の利用実態」に関するアンケート
-
7
「Microsoft 365」が乗っ取られる 跡形もなくMFAを破る手口
-
8
「ITインフラとデータ保護・バックアップ対策」に関するアンケート
-
9
「セキュリティ疲れ白書 2026」 4社に3社が疲弊し9割が属人化
-
10
「IBM i(AS/400)はクローズドなシステム」という誤解 DXに寄与する一歩
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
2
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
3
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
4
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
5
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
6
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
7
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
8
ドラマで分かる、標的型攻撃メールの被害を受ける企業と回避できる企業の分岐点
-
9
少額減価償却資産が40万円未満へ拡大、令和8年度税制改正で押さえるべき変更点
-
10
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー