「iTeachersカンファレンス 2017」レポート【第3回】
公立校の「教員の異動」はIT活用を阻害するか? 「1人1台タブレット」の現実策は?(1/2 ページ)
IT活用を進める教育機関が直面する課題は、決して少なくない。IT活用教育を推進する教育者チーム「iTeachers」の声を基に、幾つかの課題を洗い出す。
第2回「タブレットの可能性を引き出す“一押しアプリ”とは? 教育ITの先駆者が披露」に続く本稿では、IT活用教育を推進する教育者チーム「iTeachers」のメンバーによる議論を基に、IT活用教育を進める教育機関が直面する課題と、その解決策を紹介する。過去2回と同様、iTeachersが2017年4月に開催した教育ITイベント「iTeachersカンファレンス 2017」のプレゼンテーションやパネルディスカッションの内容を基にした。
iTeachersカンファレンス 2017登壇者(50音順)
大阪大学全学教育推進機構 教授 岩居弘樹氏
新潟市立新潟小学校 教諭 片山敏郎氏
広尾学園中学校・高等学校 教諭 金子 暁氏
デジタルハリウッド 講師/クリエイティブセンター福岡 栗谷幸助氏
玉川大学工学部 准教授 小酒井 正和氏
国際医療福祉大学大学院 准教授/HoloEyes 杉本真樹氏
同志社中学校・高等学校 教諭 反田 任氏
千葉県立袖ヶ浦高等学校 教諭 永野 直氏
佐賀市立大和中学校 教諭 中村純一氏
モデレーター
教育ICTコンサルタント 小池幸司氏
1人1台実現はBYODが現実的か
「2020年までに学習者1人1台の情報端末を整備する」という国の方針に沿って、教育機関や自治体の間でタブレット導入を検討する動きが進んでいる。導入に当たって大きなハードルとなるのが、タブレットの調達コストだ。自治体を中心にタブレットを一斉導入する動きがあるものの、全ての自治体や学校が財源を確保できているわけではない。
財源確保が期待できないとすれば、学習者が所有する機器を学校に持ち込む「BYOD」(私物端末の利用)の採用が有力な選択肢となる。実際に「タブレット購入資金を保護者負担にしている学校は少なくない」と、新潟市立新潟小学校教諭の片山敏郎氏は語る。私立学校と比べて、保護者への多額の費用負担を求めにくい公立学校でも「BYODの採用が可能かどうか探っている状況」(片山教諭)だという。
公立学校でありながら、BYODをいち早く採用した千葉県立袖ヶ浦高等学校教諭の永野 直氏は「タブレットの購入が必要なことを受験前から周知しているので、保護者からの目立った反対はない。むしろ好意的に捉えてもらっていると考えている」と説明する。私立学校である広尾学園中学校・高等学校教諭の金子 暁氏も「入学手続きの際にタブレットを購入してもらうことを伝えており、それを理由に入学しなかった、という話は聞いていない」と語る。
教員や学校の工夫と努力が必要であることは言うまでもないが、保護者からBYODへの理解を得ている学校があるという事実は、BYOD採用を検討する教育機関にとって心強いはずだ。
併せて読みたいお薦め記事
「iTeachersカンファレンス」レポート
- タブレットの可能性を引き出す“一押しアプリ”とは? 教育ITの先駆者が披露
- 「Pepper」活用から「海外MOOC」翻訳まで――教育IT先進校は今、何をしているのか?
- 「オンライン教育」があれば学校は不要か? 学校IT活用の先駆者が白熱議論
iTeachersメンバーと大学生が議論
公立学校が直面する「教員の異動」の功罪
先駆的にIT活用教育を進めてきた袖ヶ浦高等学校は現在、「最大のピンチ」に直面していると永野氏は語る。その背景にあるのは、公立学校にとって避けられない大きな課題である「教員の異動」だ。袖ヶ浦高等学校では2017年4月、さまざまな教科で永野教諭と一緒にIT化を進めてきた複数の教員が、相次いで他校へ異動になったのだという。
公立学校では一定の期間が経つと、教員が他校へと異動になることが一般的だ。複数の教員が共同でIT活用の取り組みを進めていても、異動となればその枠組みを立て直さなければならない。特にIT活用の旗振り役を務める教員が離れてしまえば、その教員が担当するクラスだけでなく、学校全体のIT活用が一時的に停滞してしまう可能性も否定できない。
一方でIT活用スキルを高めた教員が、異動先でIT活用を推進していくことで、個別の学校だけではなく、地域全体のIT活用レベルの底上げにつながるという考え方もできる。実際、袖ケ浦高校から他校へ異動した教員は、これからIT環境の整備が始まる段階にある異動先でIT活用教育を進めようとしているという。異動は学校の枠を超えてIT活用推進の動きを広げる“希望の種”にもなり得る、というわけだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」攻略ガイド:効率的に落札するためのポイントを徹底解説 -
製品資料
[株式会社うるる] 入札情報に特化した「販路拡大」「効率化」のためのサポートツールとは? -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] 公共入札に成功する企業と失敗する企業の「5つの違い」 -
製品資料
[日本ビジネスシステムズ株式会社] 専門家が教える、Microsoft 365の「テナント統合/分離」を成功に導く秘訣 -
製品資料
[rakumo株式会社] Microsoft 365での情報埋没を防ぐ、社内ナレッジを資産化する情報ポータル活用
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
2
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
3
「テザリング依存」に潜む落とし穴 “遅いVPN”を解消するネット構築術
-
4
“アジャイルの壁”に挑むオリックス生命がIBMの開発管理ツールを選んだ理由
-
5
IT製品の導入に関するアンケート「セキュリティ」編
-
6
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
7
LINEヤフーはなぜ「社内の管理者」すら信用しないインフラを作ったのか
-
8
Claude利用8割のGMO、AI人材の評価軸が「トークン管理」に変わった
-
9
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
10
生成AIが普及しても「技術書」を手放せないエンジニアの本音
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
7
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
-
10
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー