クラウドBIの導入効果は
ダイソーがクラウドBI「Amazon QuickSight」へ移行 “重い”BIはどう変わったのか
オンプレミスで運用するBIツールのデータ処理スピードが遅く、十分なデータを取り込むことができないという課題を抱えていた大創産業。解決のために、同社はBIツールのインフラをAWSへ移行した。
100円ショップ「ザ・ダイソー」を展開する大創産業は、2018年にAmazon Web Services(AWS)のクラウド形式のビジネスインテリジェンス(BI)サービス(以下、クラウドBI)である「Amazon QuickSight」を導入した。自社で管理する物理サーバ(以下、オンプレミスサーバ)で運用していたBIツールからQuickSightへの移行について、同社情報システム部の丸本 健二郎氏の話を基に紹介する。
大創産業は現在、国内外に5000店舗以上を展開しており、約7万種類の商品を販売している。QuickSightの導入前、同社はこれらの商品の在庫や売り上げなどのデータをオンプレミスサーバに保管し、BIツールに取り込んでいた。
オンプレミスのBIツールが抱えていた課題は、処理スピードが遅いため、取り込めるデータ量を制限せざるを得なかったことだ。例えば在庫データについては「1日分しかBIツールで保持することができなかった」と丸本氏は話す。1週間分や土日の在庫データをまとめて利用したい場合は、担当者が各自でデータを格納していたサーバから抽出し、CSV形式に加工して確認しなければならなかった。
データを保持していたオンプレミスサーバは冗長化されていなかったため、データ量の増加に合わせたスケールアップがしづらく、耐久性が十分でないことも問題だった。サーバの電源が壊れ、1カ月間BIツールが使用できないことがあったという。
導入システムの見直しで運用コストを年間1900万円から300万円に
大創産業は、オンプレミスサーバのスペック不足によるデータ処理の重さと、スケーラビリティの問題を解消するために、BIツールのインフラをAWSの同名クラウドサービス群に移行した。
移行計画を立てた当初は、サーバとストレージをAWSに移行し、BI製品にはTableauの「Tableau Server」を導入しようと検討していた。クラウドストレージの「Amazon S3」と仮想サーバの「Amazon EC2」、Tableauの構成でPoC(概念検証)をしたところ、想定通りのデータ処理性能が出なかった。性能向上のためにクラウドデータウェアハウス「Amazon Redshift」を加えた構成でコストを見積もったところ、AWSの各サービス利用料が年額約1500万円、Tableauのライセンス料が年額約420万円で、合わせて年間1900万円程度かかることが判明した。
コスト削減のために、大創産業は導入するBI製品/サービスをTableauからQuickSightへ変更した。QuickSightはダッシュボードを30分閲覧するごとに0.3ドルかかるセッション単位の料金制で、上限は5ドルだ(ダッシュボードの作成と公開には別途利用料が必要)。料金を見積もったところ、個別のユーザーごとにBIツールの利用時間にばらつきのある大創産業では、上限額の5ドルよりも安くなるユーザーが出ることが分かった。
大創産業が試算したQuickSightの利用料は月額約9万円(約800ドルの日本円換算)で、Tableauの月額約35万円と比べ75%程度安くなった。QuickSightであればEC2を別途契約する必要がなくなるため、EC2の利用料はもちろんかからない。QuickSightと、S3をはじめとする関連AWSサービスを合わせた全体の利用料は年額300万円程度になる。当初検討していた年間1900万円程度の構成と比べ、大幅にコストを抑えることができた。
「取り込めるデータが1日分から2年分に」QuickSightの導入効果は
大創産業はS3とQuickSightを利用し、BIツールのインフラをクラウドへ移行した。同社は、販売商品やバイヤーごとの売り上げ推移の確認にQuickSightを使っている。丸本氏によると、QuickSightはTableauほどグラフの種類は豊富ではないものの、表形式の分析レポートは出力できる。同社は表でレポートを確認できることを重視していたため、Tableauと比べてグラフの選択肢が限られても問題がなかったという。
丸本氏はBIツール移行の効果として、BIツールのデータ処理能力が高くなったため、ツールに取り込めるデータ量が多くなったことを挙げる。「特に在庫データに関しては前日の分しか取り込めなかったのが、2年半分のデータを取り込めるようになった」(丸本氏)。移行前はBIツールに取り込めなかった1週間分や土日のまとまった在庫データも、QuickSightで分析できるようになった。2018年11月にQuickSightが新たに搭載した機械学習によるインサイト(知見)の提供機能について、同氏は売り上げの予測や商品開発/販促タイミングの決定に役立てられるのではないかと期待を寄せる。
データ処理の速度に関しては、オンプレミスで運用していたBIツールよりも確かに速くなったものの、当初期待していたほどの速度は出なかったと丸本氏は語る。インフラを1社で専有しないクラウドは、他社の利用状況に応じて処理速度などのパフォーマンスが左右される課題がある。とはいえ既存のシステムで増え続けるデータを処理し切れなくなった場合、スケーラビリティに優れ低コストで導入できるクラウドBIは、解決策の一つになる可能性がある。
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