競争力を保つにはどうすればいいか
AIアナウンサーも登場、中国の国家戦略から学ぶべきこと
中国政府は積極的なペースで人工知能に投資している。そんな中、米国をはじめとする各国は投資を強化するという大きな重圧に迫られている。
最近、中国の国営通信社Xinhua(新華社)が新しいアナウンサーを紹介した。そのアナウンサーは人工知能(AI)テクノロジーで作られている。
「英語担当のAIアナウンサー」は、人間のアナウンサーのチャン・チャオ氏をベースにしたアニメーションだ。人間がニュースを読む何時間もの動画データを機械学習で学び、与えられたニュース記事を読み取って話すことができる。新華社によると、このAIアナウンサーは同社のWebサイトやソーシャルメディアの概要について報道するという。また、コストの削減にもつながる。
これは中国による、仕事にAIを生かす国家戦略の一つの例だ。同国は積極的に機械学習などの高度なテクノロジーに投資し、顔認識や自動運転車、AIチップなどに資金を注ぎ込んでいる。その狙いは、国内経済の効率化と自動化を進めることにある。中国政府のAI投資はすぐに米国や他の国のAI投資を追い越すだろう。そのことから、21世紀の世界経済で競争力を保つにはどうすればよいかという疑問が浮かび上がる。
Boston Consulting Groupでシニアパートナー兼マネージングディレクターを務めるフィリップ・ゲルベルト氏は次のように語る。「中国政府にはAIファーストの戦略がある。中国は積極的かつ本格的にAIを推し進めている」
AI投資で先を行く中国の力
ビジネス誌MIT Sloan Management Reviewが主催するオンラインセミナーでゲルベルト氏は「Global Competition with AI in Business: How China Differs」(ビジネスにおけるAIの国際競争:中国はいかに異なるか)という新しいレポートの数値に言及した。同レポートによると、2017年以降、中国企業の91%がAIプロジェクトに対する投資を増やしているという。米国におけるその数値は74%だ。2016~2018年には中国企業の60%がビジネスモデルを調整し、AIを中心に業務の方向性を定めた。一方、米国企業で同様の措置を講じているのは53%のみだ。
中国のビジネス分野でのこうした変化は、その多くが中国政府の後押しを受けている。2017年、同政府はAIの国家戦略について詳細を公開した。その戦略ではAIの開発企業に1500億ドルを投資すると定めている。2030年までにロボティクスやAIチップ製造などの分野で世界のリーダーになるのが目標だ。中国政府はこの戦略を通じ、製造業から金融業に至るほとんどの業界にAIを深く組み込むことで、経済を強化しようとしている。
中国政府の取り組みを支えるのが、同政府の経済運営に対する中央集権型のアプローチだ。政府が優先事項を設定すれば、それに従って企業が投資する。一方、より民主的な資本主義国では、ビジネス機会に追従する形で金銭が動く。
欧米の個人投資家もAIには将来性があると考えており、そのテクノロジーに資金を投じている。だが、テクノロジーコミュニティーはまだ変革的なビジネスモデルの登場を待っている。そうしたモデルが登場すれば、中国政府が実施しているような集中的な投資の正当性が認められるだろう。
米国のAI投資事情
米国では話が大きく異なる。2016年に、バラク・オバマ政権の国家科学技術会議(NSTC:National Science and Technology Council)でAI研究開発の戦略的計画が策定された。オバマ政権はそのAI国家戦略で、AI研究開発への長期的な投資を必要とした。これは連邦政府の計画と学術研究のサポート強化の両方を通じて実現する。また、AIを扱える労働力を養成するための取り組みも求めた。
だが、オバマ政権はその計画で厳格な投資目標を設定しておらず、現政権がこの計画の提案に基づいて決定を下している気配もほとんどない。
AI研究開発はその大部分が民間部門に委ねられている。そうした民間部門は漫然とした体制でスタートしている。米国は、企業側でも学術側でもAIで世界を代表する組織(Facebook、Google、IBMなど)の母国だ。
だが、これらの団体が独力で世界の投資ペースに遅れずに付いていくことはできない。2019年には中国経済のAI研究開発への総支出は米国の支出を上回ることが想定される。米国下院のSubcommittee on Information Technology(情報テクノロジー小委員会)によるレポートではそう報告されている。
AIベンダーのFractal AnalyticsでCEOを務めるプラニー・アグラワル氏は次のように語る。「政府はこの分野に投資する必要があるだろう。中国政府はAIが最優先だと述べた。資本を投入し、民間部門と手を結んでその野心を燃え立たせている。同じ時期に、米国は研究プロジェクトの縮小を発表した」
後れを取るリスク
AI投資で後れを取っている側面は多数ある。特に深刻な脅威はテクノロジーの軍事利用における格差から引き起こされる――。Subcommittee on Information Technologyはレポートでこう主張している。だが、そうした問題はさらに広まっている。
中国政府は、21世紀のうちに仕事の大半ではAIが基盤テクノロジーになると考え、AIを中心とした経済構築を目指している。仕事ではAIスキルを備えた人材がますます必要になる。それに伴い、最適なトレーニングを受けた労働力に最も強固なインフラを提供できる国に仕事が流れていく可能性が高い。それがどの国であったとしてもだ。米国を含め、この種の国家AIインフラを構築できない国、もっと広く言うとAI国家戦略を設定できない国は、この先数年の間に経済的にかなり不利な立場に置かれる恐れがある。
「米国に拠点を置く企業は取り残されるリスクがある。AIが成長のエンジンになるなら、そのエンジンが確実かつ適切に動作していることが望ましい」(アグラワル氏)
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