IBM、Microsoft、AWS、Googleなどの主要ベンダーが参入
データや人材が足りなくてもAIを活用できる「AIaaS」とは?
AIaaS(サービスとしてのAI)の出現により、最先端のIT企業だけでなく、より多くの企業が人工知能(AI)をアプリケーションに組み込み、利用できるようになりつつある。
米国南東部最大の地方銀行の一つであるFirst Horizon Nationalは、250店舗以上の支店と約6000人の従業員を擁する。同行では、従業員調査を実施して管理者向けのレポートを作成するのに3カ月を要していた。
「従業員調査には多くの時間とコストがかかっている」と、First Horizon Nationalで人材戦略と開発を統括する副社長、マリオ・ブラウン氏は述べる。
First Horizon Nationalは2017年、HCM(人材管理)ソフトウェアベンダーUltimate Software Groupの新しいAIaaS(サービスとしてのAI)を導入して従業員調査を実施し、自由回答式の質問に対する回答を分析した。
AIaaSの導入によって、First Horizon Nationalは分析プロセスをほぼ瞬時に完了させられるようにした。管理者は従業員の満足度に関する重要な情報と、必要な対処についてのアドバイスを即時に得ることができるようになった。ブラウン氏と彼のチームは、AIaaSの機能を利用することにより、データサイエンティストや人工知能(AI)技術者の高価なサービスを利用することなく、この結果を達成できた。同氏は「ツールが組織の真の改善につながっていると感じている」と語る。
AIaaSはAI活用のメリットを拡大する
コンサルティング会社McKinsey & Companyの最新予測によると、AIは2030年までに13兆ドルの世界的な経済活動を生み出し、国内総生産(GDP)の成長を年率1.2%押し上げる。
AI革命の利益は、以前の技術革命のように一様ではない。アルゴリズムの開発に必要なデータ科学者や、新しいAIシステムのトレーニングに十分なデータを、全ての企業が保有できるわけではないためだ。これはGoogleやFacebookといった大手IT企業にしか克服できない課題だと考える人もいるだろう。
コンサルティング会社GartnerのアナリストでAI分野を専門とするスベトラーナ・シキュラー氏は「何もかもを自前でやるのは無理だ。スキルのあるAI技術者の採用は難しく、誰もが求めている人材は離職率も高い」と述べる。
実際には、AIaaSの台頭により、中小企業でもすでにAIの恩恵を受け始めている。
AIaaP(プラットフォームとしてのAI)の成長
AIaaP(プラットフォームとしてのAI)はクラウドで利用可能なAIサービスの一つだ。AIaaPによって、独自のアルゴリズムを開発するためのデータサイエンティストがいない企業でも、高度な分析のためのAIシステムを開発できるようになる。
IBM、Microsoft、Amazon Web Services(AWS)、Googleなどの主要ベンダーが、機械学習をはじめとするAI技術に取り組む企業を支援するAIaaPを提供している。
AI専用のハードウェアも、クラウドを経由させて入手できる。Googleは、AIアプリケーションをより強化したいというニーズに応えるべく、クラウドサービス「Google Cloud Platform」のユーザー企業向けに、機械学習向けプロセッサ「TPU」(Tensor Processing Unit)の提供を開始した。
AWSも遅れてはいない。ユーザー企業が同社のクラウドで構築するシステムのコストと処理時間を削減することを目的として、2019年後半に独自開発の機械学習推論チップ「AWS Inferentia」を利用可能にする予定だ。
中国のAlibaba Group Holdingsも、AIチップ「AliNPU」を同社のクラウドで2019年に利用可能にすると発表した。これは画像やビデオの解析用途向けに設計されている。AliNPUは、クラウド事業を拡大する同社の計画の一つだ。
これらのAIaaPは、企業が基本的なインフラを構築せずにAIシステムを簡単に導入できるように設計されている。
もっと簡単に、AIの要素を導入する方法もある。
すぐに利用可能なAIツール
基本的なAI機能を自社のアプリケーションに組み込むことを検討する場合は、まず立ち止まって、すでに誰かが同じことを実現していないかどうかを確認する必要がある。
チャットbotや言語翻訳、画像処理、その他多くの機能がすでにツールとして利用可能になっている。これらはAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を使用して、既存のコードに埋め込むことができる。
「Amazon Lex」は、アプリケーションに音声アシスタント「Alexa」ベースの会話型インタフェースを組み込むためのサービスだ。例えばボストンを拠点とする保険大手のLiberty Mutual Insuranceは、Amazon Lexを使用して5万人いる従業員向けの仮想アシスタントを作成した。
複数のベンダーが、大企業向けにチャットbotやAIツールを提供し始めている。
組み込みAI
最近の主要な企業向けSaaS(Software as a Service)は、AI機能を標準で組み込んでいるか、有料のアドオンとして用意している。こうしたSaaSには、例えば「Microsoft Dynamics 365」「Office 365」「Salesforce Einstein」「SAP Leonardo」などがあると、Gartnerのシキュラー氏は述べる。
SaaSベンダーは、システムのトレーニングに必要な膨大な量のデータを得られる。そのため自社内のデータにしかアクセスできない一般の企業と比較して、非常に優位な立場にある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
4
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
5
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
6
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
-
7
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
8
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
9
LLMの「過学習」、正しく説明している文章はどれ?
-
10
レガシー基幹システムをSAPに統合 山善が突き止めた「標準化と個別最適」の境界線
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー