「誰も何も信用しない」からいったん離れる
いまいち分かりにくい「ゼロトラストセキュリティ」をあらためて理解する
「ゼロトラストセキュリティ」は、字面通りに解釈すると頭を抱えてしまいそうなセキュリティモデルだが、その背景にある基礎を理解すれば、やるべきことは自ずと見えてくる。
これまでに一度くらいは「ゼロトラストセキュリティ」という言葉を耳にしたことがあるだろう。だが、その導入方法は理解し切れていないかもしれない。分かりにくさの原因はその名前にも由来する。「ゼロトラスト」という響きは良いが、全く何も信頼しないという考え方を実践するのは事実上不可能だ。システム、ユーザー、デバイス、アプリケーション、プロセスを一切信頼しなければ、企業は機能不全に陥る。
もっと正確な名前にするなら、ややぎこちないが「非常に細かい単位に分かれた信頼」となるだろう。つまりゼロトラストセキュリティの背後にある考え方とは実際のところ、信頼を細かい単位に分けて管理することにある。例えば、デバイスXとデバイスY間の一部のセッションは許可するとしても、全てのセッションを信頼するわけではない、という具合だ。
この「非常に細かい単位」と「信頼を分ける」という2つの考え方が、ゼロトラストセキュリティの2つの根幹を成す。ゼロトラストセキュリティには、システムとデータに対する深い知識が求められる。IT部門はこうした知識を利用して、あらゆる場所のシステム、プロセス、アプリケーション、ユーザーの周囲に意味のある境界を設定できる。
併せて読みたいお薦め記事
サイバーセキュリティ業界のトレンド
- IoTとAIが弱点を生む シマンテックの2019年サイバーセキュリティ予測
- 2019年に備えるべき 新しい6つのセキュリティトレンド
- 2019年に勢いを増す“最も危険なサイバー攻撃”5種
- セキュリティの自動化とオーケストレーションは「企業のセキュリティ」をどう変える?
ネットワークのセキュリティを高める
想像以上に影響範囲が広いゼロトラストセキュリティ
IT部門は、ゼロトラストセキュリティを適用するとネットワークの根本的な見直しを迫られることになる。慣習的に分離されていたルーター、ファイアウォール、分散型サービス拒否攻撃(DDoS攻撃)の防御、ネットワークセグメンテーション製品など、なじみのあるネットワーク要素の役割とその存在意義さえ見直す必要がある。
セキュリティ機能は、仮想アプライアンスや仮想ネットワーク機能として仮想化したりモジュール化したりすることが一般的になりつつある。その結果、必要に応じてインフラ全体にセキュリティ機能を導入できるようになった。ゼロトラストセキュリティ適用の影響が広範囲にわたる背景には、こうした事情がある。
ゼロトラストセキュリティは、セキュリティ運用の中心にセキュリティの自動化を据え、信頼性、アジリティー、スケーラビリティという自動化の全てのメリットをもたらす。
ゼロトラストセキュリティの実用性
非常に細かい単位に「信頼」を区切り、ネットワークの設計を見直し、自動化技術を導入する――。サイバーセキュリティの実施担当者は、こうしたゼロトラストセキュリティの考え方を取り入れ、それを実際の手順に変えるにはどうすればよいだろうか。
最初の手順は仮想化だ。サーバとアプリケーションの仮想化技術は比較的成熟している。大半の企業が仮想サーバへの移行を済ませ、マイクロサービスやコンテナを基盤とするソフトウェア開発戦略を導入している企業も少なくない。そこで、サーバとアプリケーション層にゼロトラストセキュリティを導入する場合は、細かい単位に分けたセキュリティポリシーを仮想マシン(VM)、マイクロサービス、コンテナに適用する試みから着手する。
Aqua Security Software、Capsule8、Layered Insight、NeuVector、StackRox、Tenable Network Security、Twistlockなどのベンダーが、コンテナベースのセキュリティを実現するツールを用意している。JSONをベースとしたオープン標準「JSON Web Token」のようなツールは、マイクロサービスのセキュリティを支援する。
ただ、ネットワークインフラの成熟度は著しく低い。多くの企業は依然としてスイッチ、ルーター、ファイアウォール、ロードバランサー、ゲートウェイなどの物理デバイスのポートフォリオを用いてネットワークを構築している。
そのため、ネットワークインフラにゼロトラストセキュリティを導入するに当たって重要となる手順は、仮想化への移行ということになる。データセンターにソフトウェア定義ネットワーク(SDN)を、WANにSD-WANを導入する。そうすれば、ネットワーク機能とファイアウォールなどのネットワークセキュリティ機能を物理デバイスではなくVMとして作成するのに必要なプラットフォームが用意できる。こうしたことが、機能の細かい単位での自動化と管理の実現を可能にする。
ゼロトラストを目指す
これまでセキュリティやネットワーク製品を提供してきたCisco Systems、Checkpoint Software Technologies、Juniper Networks、Fortinet、Palo Alto Networksのようなベンダーも、128 Technologyのような新興ベンダーも、個別のセッションの細かい単位での管理と動的なアクセス制御を可能にする仮想化製品を提供している。
ツールを選ぶ際は、ポリシーの一元化を考えることも重要になる。ネットワークポリシーエンジンになる方向を目指すベンダーもある。こうしたポリシーエンジンは、さまざまなパートナー企業のテクノロジーにフックを提供し、一元化されたポリシーの導入を可能にする。どのベンダーのポリシーエンジンを選ぶにしても、インフラ全体に変更を波及させられる一元化したポリシーリポジトリを用意する点から考えることが重要になる。
ゼロトラストセキュリティは、その名前が暗に示す意味とは異なるが、最終的には全てを変えることになる。ゼロトラストセキュリティを導入する場合、ネットワークインフラが最も弱い箇所になるため、ネットワークインフラの仮想化とセキュリティ確保に特別な注意を払うことになる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
3
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
4
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
5
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
6
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
7
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
8
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
9
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
10
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー