オンプレミスに拡張するクラウド【後編】
「Anthos」と「Azure Stack」を比較 2大ハイブリッドクラウド製品の違いは?
主要クラウドベンダーが新たな製品やサービスを発表することで、ハイブリッドクラウドの選択肢が広がっている。本編ではGoogleとMicrosoftが提供するハイブリッドクラウド製品を紹介する。
前編「“オンプレミス版AWS”を実現する『AWS Outposts』とは? 何ができるのか?」では、主要クラウドベンダーが提供するハイブリッドクラウド製品として、Amazon Web Services(AWS)が提供を発表したアプライアンス「AWS Outposts」を紹介した。後編では、GoogleとMicrosoftが提供するハイブリッドクラウド製品について、その特徴的な機能を紹介する。
Googleが提供するAnthos
Googleが2019年4月に一般公開した「Anthos」は、2018年に同社がハイブリッドクラウド構築用として発表したソフトウェア「Cloud Services Platform」(CSP)をベースにしている。同社はCSPへの機能追加に合わせて名称を変更して一般公開した。同社がソフトウェアを提供し、それを搭載するハードウェアを顧客が選択する提供形態となっている。
Anthosの管理機能は、コンテナオーケストレーションツールの「Kubernetes」を中核的なコンポーネントとしている。マネージドKubernetesの「Google Kubernetes Engine」(GKE)と、オンプレミスでGKEを利用するためのソフトウェア「GKE On-Prem」が主要要素となっている。
GKE On-Premは、企業のオンプレミスサーバに配置するソフトウェアだが、Googleがリモートでコンポーネントのライフサイクルを管理する。ポリシー運用を自動化する機能「Anthos Config Management」を使用すれば、オンプレミスとクラウドにまたがってKubernetesのマルチクラスタに適用されるポリシーを作成できる。
Anthosでは、マイクロサービス間の通信を制御するサービスメッシュを構築するためのソフトウェア「Istio」を利用することもできる。Istioはオープンソーステクノロジーで、マイクロサービスの接続、保護、監視などの作業を簡素化するための機能を備えている。
Kubernetes中心戦略は吉か凶か
Kubernetesを中心的なコンポーネントとするAnthosは、オンプレミスにおける既存のアプリケーションをパブリッククラウドに接続させることもよりも、新しいアプリケーションを構築することに適している。Googleのこの戦略が成功するかどうかはまだ分からない
「Googleはハイブリッドクラウド市場への参入に後れを取っている」と、ITコンサルティングファームAlcala IT ConsultingのCEOを務めるマルコ・アルカラ氏は指摘する。ただしGoogleは、ハイブリッドクラウド市場をリードするクラウドベンダーになるための資金力と技術力を有している。
Microsoftが提供するAzure Stack
主要クラウドベンダーの中で、Microsoftはハイブリッドクラウド市場における先駆者といえる。2015年に「Microsoft Azure Stack」(Azure Stack)を発表し、2017年に同製品の提供を開始した。Azure Stackは、オンプレミスとパブリッククラウドにおける統合的なアプリケーションの構築、運用をサポートする。Azure Stackはリソース管理ツール「Azure Resource Manager」で、クラウドサービス群「Microsoft Azure」と同じ管理ポータルやAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を利用できる。
これ以外にも、Azure StackはAzureの各種サービスと連携する。例えば、
- LinuxおよびWindowsの仮想マシンを作成する「Virtual Machines」
- Webアプリケーション構築ツール「Web Apps」
- サーバレスコンピューティングツール「Azure Functions」
- クラウドアプリケーションの暗号化キーを保護する「Key Vault」
- オンラインマーケットプレース「Azure Marketplace」
- コンテナ管理ツール「Container Instances」
- IoT(モノのインターネット)デバイスの管理ツール「Azure IoT Hub」
- ビッグデータのストリーミング処理サービス「Event Hubs」
などがある。
開発者がAzure Stackで利用できる機能としては、継続的インテグレーション/継続的デリバリー(CI/CD)実現のためのツール「Jenkins」と、開発チームを支援するサービス群「Azure DevOps Server」などがある。構成機能を自動化するためのサーバ設定ツール「Chef」と構成管理の自動化ツール「PowerShell Desired State Configuration」(DSC)の拡張機能が利用できる点も開発者にとっての利点となっている。
Azure StackはハードウェアにAzureのソフトウェアを組み込んだアプライアンスとして提供される。導入する際は、Microsoftのパートナーとなっているハードウェアベンダーから購入する必要がある。Cisco Systems、Dell Technologies、富士通、Hewlett Packard Enterprise(HPE)、Huawei Technologies、Lenovo、Wortmannが、各社独自のサーバ、ストレージ、ネットワークまたはハイパーコンバージドインフラ(HCI)にAzure Stackを組み込んで提供する。
現状ではAzure Stackへの関心はあまり高くない。ハードウェアベンダーから購入するという販路が原因の一つだと考えられる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
オンプレミスに拡張するクラウド
AWS、Google、Microsoftは、パブリッククラウドの環境をオンプレミスに拡張する製品/サービスを強化している。この3大クラウドベンダーが、ハイブリッドクラウド環境を実現する方法をどのように提供しているのか解説する。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品レビュー
[Dropbox Japan株式会社] ランサムウェア対策で見直したい「復旧できるファイル基盤」とは? -
製品資料
[Dropbox Japan株式会社] さよならファイルサーバー クラウドストレージへの移行はこう進める -
比較資料
[セコムトラストシステムズ株式会社] 「EDR」選定ガイド:比較・検討フェーズで整理すべきポイントを解説 -
製品資料
[株式会社キーエンス] 過去にRPA導入をあきらめた企業こそ知っておきたい 失敗しない自動化導入術 -
製品資料
[株式会社キーエンス] 自分ひとりでデスクワークを効率化 「AI&ナビ搭載RPA」で実践する業務自動化
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
鹿島建設のDXを阻む「10年前のAWS」 安全性と自由度を両立したモダナイズ
-
2
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
3
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
4
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
5
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
6
IT製品の導入に関するアンケート「PC&デバイス」編
-
7
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
-
8
IBM iのブラックボックス化を打破 資産継承と進化を実現する「IBM Bob」の実力
-
9
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
10
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
3
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
8
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
9
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー