オンプレミスに拡張するクラウド【前編】
“オンプレミス版AWS”を実現する「AWS Outposts」とは? 何ができるのか?
AWS、Microsoft、Googleの主要クラウドベンダー3社がハイブリッドクラウドを実現する製品分野の取り組みを強化している。本記事ではこうした製品の一つである「AWS Outposts」を解説する。
パブリッククラウドベンダーは、その戦いの場をオンプレミスのデータセンターという予想外の場所に移している。これはデータセンターにおける既存のシステムやアプリケーションをパブリッククラウドに移行するのではなく、パブリッククラウドの機能をオンプレミスのデータセンターで利用することを支援する動きだ。
オンプレミス環境を主戦場とするベンダーは、何年にも渡ってハイブリッドクラウドを推奨してきた。オンプレミスとパブリッククラウドのITインフラを1つの管理ツールで一元的に管理したいという企業のニーズが大きいためだ。企業はオンプレミスとパブリッククラウドの間でアプリケーションとデータを迅速かつ簡単に移行できればさらにいいと考えている。
パブリッククラウドが登場した当初、それはオンプレミスのデータセンターの延長線上にあると考えられていた。Amazon Web Services(AWS)、Google、Microsoftが新たに提供する製品は、このモデルを覆す。伝統的な企業ITインフラのアーキテクチャの中核を担うデータセンターに、パブリッククラウドの要素を取り入れようとしているのだ。
主要クラウドベンダーが提供するハイブリッドクラウド製品が、オンプレミスとパブリッククラウド間の相互運用をどのように実現できるかを確認する。
AWS Outposts
AWSは2018年11月、同社のパブリッククラウドの機能を、オンプレミスに配備するためのアプライアンス「AWS Outposts」を発表した。開発に当たってAWSは、VMwareの協力を仰いだ。AWS Outpostsは企業のデータセンター内に設置し、AWSがリモートで管理する。AWSが設計したコンピューティング(CPUやメモリなどのサーバリソース)とストレージを1つのラックに収めて提供し、AWSのパブリッククラウドのサービスや機能と連携する。
現時点ではAWS Outpostsの導入で、仮想マシンサービス「Amazon Elastic Compute Cloud」(Amazon EC2)のインスタンスと、ブロックストレージサービス「Amazon Elastic Block Store」(Amazon EBS)のボリュームをオンプレミスで利用できる。今後は、コンテナオーケストレーションツール「Kubernetes」のマネージドサービス「Amazon Elastic Kubernetes Service」(Amazon EKS)や機械学習サービス「Amazon SageMaker」なども利用可能になる見込みだ。
AWS Outpostsは、2種類のモデルを用意している。一つはAWSのサービスのみで構成するモデルで、もう一つはVMwareの製品をベースとするモデルだ。後者にはベースとなるサービスとして、VMware製品による仮想環境をAWSのベアメタルクラウドに構築する「VMware Cloud on AWS」が含まれている。VMwareの仮想化製品はオンプレミスのデータセンターで広く普及しており、既存環境をパブリッククラウドにつなぐハイブリッドクラウドを実現する選択肢を求めているユーザーが少なくない。
ITコンサルティングファームAlcala ConsultingのCEO(最高経営責任者)を務めるマルコ・アルカラ氏は次のように語る。「AWS Outpostsは企業にとって魅力的な選択肢だ。簡単に調達し、導入できる利点がある。ケーブルをコンセントに差し込めば、VMwareの管理コントロールにAWS Outpostsのリソースが表示される、という印象を受けるほど簡単だ」
AWS Outpostsは導入時の柔軟性も特徴で、例えばファイアウォールの内側にも外側にも配置できる。調査会社Evaluator Groupでシニアパートナーを務めるジョン・ウェブスター氏はその利点を強調する。厳しいコンプライアンス要件を抱えていたりセキュリティを懸念したりする企業は、AWS Outpostsをファイアウォールの内側に配置する選択ができる。
アプリケーション面でも興味深いものがある。「低遅延が要件となるアプリケーションを必要としている企業がある。例えば音声処理、動画編集、ロボット工学といったアプリケーションだ」(アルカラ氏)。AWS Outpostsはパブリッククラウドではなくデータセンターに配置されるため、ネットワークにおける遅延の問題を緩和できる。
AWS Outpostsは、オンプレミスの災害復旧(DR)の手段としても魅力的な選択肢になり得る。ただし注意点がある。VMware製品をベースとするモデルを希望する企業は、AWSとVMwareの両方のスキルを必要とすることだ。AWS Outpostsは、AWSが用意するハードウェアとソフトウェアに加え、VMwareの製品を運用管理する必要がある。AWS Outpostsを最大限に有効に活用するには、VMwareとAWSの両方に精通したスタッフを育てなければならない。
後編では、Google、Microsoftが提供するハイブリッドクラウド製品を紹介する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
オンプレミスに拡張するクラウド
AWS、Google、Microsoftは、パブリッククラウドの環境をオンプレミスに拡張する製品/サービスを強化している。この3大クラウドベンダーが、ハイブリッドクラウド環境を実現する方法をどのように提供しているのか解説する。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
比較資料
[セコムトラストシステムズ株式会社] 「自社に合うEDR」はどれか分かる? 比較・検討時の見極めポイントを解説 -
製品資料
[アルプス システム インテグレーション株式会社] まだ社内で眠らせたまま? AI活用の糧となる「データ資産」を有効利用するには -
市場調査・トレンド
[AvePoint Japan株式会社] “SCS評価制度”対応の第一歩、自社環境と要求事項とのギャップを把握する方法 -
製品資料
[株式会社BREXA Technology] 情報整理の自動化でインシデントの初動対応を効率化、AIエージェント活用のコツ -
製品レビュー
[ヴィーム・ソフトウェア株式会社] SCS評価制度を導入するだけで十分? 組織の防御力を高める活用方法とは
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
2
「WSUS」終了の時限爆弾 “本命”移行先ツールとMicrosoft提唱の新管理手法
-
3
Claude Codeでは「エージェントを作るな、スキルを作れ」 Anthropicが示すAI構築術
-
4
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
5
VMware離れの決め手は“機能”以外だった 情シス109人が選んだ新基準と死角は
-
6
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
7
「ERP(統合基幹業務システム)の導入・活用」に関するアンケート
-
8
パッチなしで「今すぐサーバを落とせ」 Kiteworks異例警告の波紋
-
9
「ITインフラとデータ保護・バックアップ対策」に関するアンケート
-
10
「IBM i(AS/400)はクローズドなシステム」という誤解 DXに寄与する一歩
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
「Google Workspace」活用事例34選、先進の生成AIによる組織変革の全貌
-
2
Linuxのスキルを証明する“激推し”の認定資格はこれだ
-
3
バックアップは“取っているから大丈夫”なのか? ランサムウェア時代の備え方
-
4
ネットワーク遅延の原因、「パケットロス」の基礎知識と効果的な解決策
-
5
月1000枚の紙を削減 9年動けなかった組織が、業務改革のその先に得たもの
-
6
「改正物流効率化法対策」徹底解説 総物流費を抑制するサプライチェーン戦略
-
7
Windows PCとMacの選択制で生産性向上 LINEヤフーが実践する運用管理方法とは
-
8
ソフトウェア開発の属人化と手戻りをどう防ぐ? 速さと品質を両立させる方法
-
9
AI活用を停滞させる「2:6:2の壁」を乗り越えるためのポイントとは?
-
10
ドラマで分かる、標的型攻撃メールの被害を受ける企業と回避できる企業の分岐点
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー