アンドリュー・ウン氏のAIプレイブック【前編】
GoogleとBaiduで活躍した先駆者が語る、AI開発の正しい進め方
人工知能(AI)の第一人者でオンライン教育の先駆者でもあるアンドリュー・ウン氏が、企業向けにAIプレイブックを考案している。本稿ではそのエッセンスを紹介する。
近い将来、人工知能(AI)テクノロジーがもたらす大きな恩恵の一部は、大ヒットしたアルゴリズムではなく、ビジネスプロセスを改善する新たな方法を見つけることで得られるようになるだろう――。これはアンドリュー・ウン氏の見解だ。ウン氏はGoogleとBaiduでAI開発を手掛けた先駆者で、現在はLanding AIの共同設立者として、同社CEOを務めている。
米サンフランシスコで2019年3月下旬に開催された「EmTech Digital 2019」に登壇したウン氏は「これまでとは異なりAIの発展による経済成長の多くは、販売、輸送、流通といったソフトウェア以外の分野で見られるようになるだろう」と自身の見解を述べている。
2017年に設立したLanding AIは、さまざまな業界の企業がAIを活用することをサポートする目的で、ベストプラクティス集である「AIプレイブック」を作成している。AIは有益なテクノロジーだが、導入が困難なのは誰もが認めるところだ。そして、同氏はAIを利用しやすくすることを目的とした教育プログラム「deeplearning.ai」も手掛けている。
6つの推奨事項
現時点でAIプレイブックを策定していない企業へのウン氏からのアドバイスは、パイロットプロジェクトに着手することだ。同僚から懐疑的なまなざしを向けられることについても心の準備をしておきたいという。同氏は「Googleで働いていたときですら、深層学習プロジェクトの導入に着手したときには、少なからぬ数の懐疑的な人たちに行く手を阻まれた」と当時を振り返る。そこで同氏がGoogleで手始めに採った戦略は、既に他のAI手法を使用しているグループ(音声チーム)にプロジェクトを示し、深層学習の可能性を例示するというものだった。
「最善の策は、パイロットプロジェクトに着手して実績を迅速に勝ち取ることだ。これは、チームが専門技術を習得して、自信を得るのに役立つ」とウン氏は語る。
テクノロジーに精通していない企業がAIプレイブックを軌道に乗せるためのウン氏からのアドバイスは、以下6つの推奨事項に集約される。
- ブレインストーミングから始める
- AIが新たな方法をもたらすことを理解する
- 少量のデータに備える
- 全社的な理解を得ることでAIパートナーシップを構築する
- AIの影響を測定する
- シンプルにする
ここからは、各アドバイスのエッセンスを紹介する。
1.ブレインストーミングから始める
AI開発戦略を立ち上げるに当たって企業が犯しがちなミスは、最初のプロジェクトの選定をCEOに委ねることだ。そうではなく、ブレインストーミングで6~12個のアイデアを出して、それぞれについて十分なビジネスレビューとテクニカルレビューを実施するのが適切だとウン氏は話す。ビジネス部門のマネジャーは、各アイデアについて予測される価値をまとめたスプレッドシートモデルを作成する。技術的な適正評価では、アルゴリズムとデータの観点からプロジェクトが遂行可能かどうかを評価する。
現状のAIができることとできないことについて適切に判断するのは難しい。その点でCEOには楽観的になり過ぎる傾向がある。その理由の一つは、科学界とメディアがAI活用の成功例を多く取り上げ、失敗例をあまり取り上げないことにある。この状況が、AIは何でもできるという間違った認識につながる。
「AI開発に対する経営陣の認識によって、非現実的な期待が寄せられる。多くのプロジェクトが失敗に終わったチャットbotは、その典型例だ」とウン氏は指摘する。このようなAIの神話を薄めるため、ウン氏は「AI For Everyone」という無料のコースプログラムを作成した。このプログラムを受講すると、技術に明るくなくてもAIの基本概念を理解できるようになる。例えば、AIができることとできないことを判断できるようになる。
「全ての企業が短期間で大きな成果を挙げられるわけではない。だが多くの企業にはその可能性がある」(ウン氏)
このプログラムには、AIが適切に機能するために必要なデータの種類についての考え方の手引きも含まれている。データレイクがあっても、そのデータがAIに適しているとは限らない。保有するデータの量が多いほど成果が保証されるわけでもない。「医療業界のある企業は、データを収集するために同業者の買収に多額の資金を投入した。だが、この企業は収集したデータを有効活用する方法をいまだ見つけられずにいる」とウン氏は語る。
中編と後編で、残る5つの推奨事項を紹介する。
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アンドリュー・ウン氏のAIプレイブック
企業が人工知能(AI)テクノロジーを正しく活用するには、どうすればよいのか。GoogleやBaiduでAI開発に携わってきた第一人者、アンドリュー・ウン氏が語る6つの推奨事項を確認しよう。
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