AWSやMicrosoftの戦略から見えるもの
AIフィーバーはまだ冷めない 次はどの分野でAIが活躍するか?
2019年は人工知能(AI)技術にとって大きな年になりそうだ。仮想アシスタントの普及や、活発なベンチャーキャピタル投資といったトレンドが続き、新たな流れも生まれるからだ。
2018年は、人工知能(AI)技術にとってもAI企業にとっても輝かしい年だった。世界の国々がAI戦略を導入し、AIに特化したスタートアップ(新興企業)へのベンチャーキャピタル投資が活況を呈し、あらゆる業種がAI技術の恩恵を受けた。
2019年もAIの導入が鈍化する兆しはなく、多くの点で、2018年に見られたトレンドがさらに勢いを増しそうだ。だが本稿では、2018年からの流れが進むとの見通しを示すだけでなく、AIが2019年にどのような分野で躍進するかについて幾つかの予想を述べる。
AIアシスタントが企業に定着
2018年には音声アシスタントが注目を集めた。Amazon、Apple、Microsoft、Google、Samsung Electronics、Baiduなどが重要な製品を相次いでリリースし、ベンダー各社の製品が市場に押し寄せた。これらの製品は、より快適に会話で操作できるようになった。ベンダーは主に消費者に力を入れているが、企業にも目を向けるようになっているのは明らかだ。
2018年に消費者向けの音声アシスタントが大きく台頭したように、2019年には、企業で音声アシスタントの導入と実装が進む見通しだ。既に企業は、ビジネスの幅広いタスクをサポートできるというAIベースの会話技術のメリットを実現している。
人々はスケジューリングや、基本的な情報検索、電話会議の支援といった職場の比較的単純なタスクだけでなく、電子メールや経費報告書の処理のような複雑な業務タスクにもAIアシスタントを適用し、拡張インテリジェンスなどの高度な会話機能を利用するようになっている。
こうした新しいデバイスが便利なエンタープライズアシスタントとなるためには、インテリジェンス機能の強化が必要になる。筆者が勤務する調査会社Cognilyticaが2018年に発表したベンチマークレポートは、こうした音声アシスタントには、重要性の高いエンタープライズタスクのサポートに必要な、判断や行動につながるクリティカルインテリジェンスや、常識推論の機能が欠けていることを示している。
だが、既に音声アシスタントベンダーの間では、製品のインテリジェンス機能を強化する動きが出始めている。われわれはこの観点から、こうしたデバイスは2019年に全体的な知識やインテリジェンス機能が向上し、拡張インテリジェンスツールとしての付加価値が高まると予想している。
AI開発:トレーニング済みモデルやサードパーティーのデータセットが重要に
データはAIの言語だ。データサイエンティストは機械学習アルゴリズムをトレーニングし、必要な予測結果や分析結果を得るために、高品質な大量のトレーニングデータを必要とする。結局のところ、学習なしには機械学習アルゴリズムは機能せず、適切にラベル付けされたクリーンなデータがなければ、学習は行われない。
ますます幅広い機械学習アプリケーションでデータの必要性が増大の一途をたどっていることから、2019年は、トレーニング済みの機械学習モデルや、サードパーティーデータセットおよびモデル、オープンソースのトレーニングデータが重要な焦点となるのは明らかだ。
実際、主要なAIクラウドコンピューティングベンダーは既に、インフラ技術を提供するにとどまらず、多様な業種にわたって適用できる再利用可能なデータセットの構築に動き出している。
Amazon Web Services(AWS)は、2018年11月に開催したカンファレンス「AWS re:Invent 2018」において、「AWS Marketplace」(AWSで実行するソフトウェアを販売・購入できるオンラインストア)でトレーニング済み機械学習モデルパッケージを提供開始することを発表した。これにより、幅広いカテゴリーをカバーする無料および有料のさまざまなアルゴリズムやモデルを選択して使えるようになった。こうしたカテゴリーにはコンピュータビジョン、自然言語処理、音声認識、テキスト、データ、音声、画像、動画分析、予測分析などが含まれる。
AWSは、業績や売れ行きの時系列予測サービス「Amazon Forecast」と、個別のレコメンデーションを簡単に作成できる機械学習サービス「Amazon Personalize」の各プレビュー版など、特定の業種や用途向けのモデルも発表した。この2つは、予測や、パーソナライズされたレコメンデーションの提供に関するAmazon.comのノウハウを利用している。さらにAWSは、同社が医療業界のデータセットを利用できるようになったことも発表した。近いうちに法律のデータセットも利用できるようになる見込みだ。
MicrosoftもAWSに負けじと、特定分野向けの機械学習モデリングに対応した「Azure Machine Learning」プラットフォームのアップデートを発表した。同社はアップデートでAutoML(自動機械学習)機能に重点を置いた。AutoMLは、システムが自動的に機械学習アルゴリズムを選択、最適化し、特徴抽出、アルゴリズム選択、ハイパーパラメーター調整を実行する機能だ。
GoogleやIBMなどのベンダーも、こうしたすぐに使える機械学習機能でプラットフォームを強化し、データサイエンティストや開発者に加えて、ビジネス部門のワーカーによるAIや機械学習の利用拡大を図っている。こうしたベンダーは、AI開発が、適切にトレーニングされた膨大なデータセットを持つ人々や企業だけに限らず、広く行われなければならないと考えるようになっている。2019年には、そうしたデータセットを誰もが活用できるようになるだろう。
チャットbotが顧客サービスの主役に
2018年には、さまざまな企業が顧客とのエンゲージメントにおける最前線にAIチャットbotを導入した。2018年に報道されたり、議論されたりしたユースケースには、多くの場合、顧客サポートへのAI技術の導入が含まれていた。顧客サポートにAIシステムを役立てている企業では、既に投資利益率(ROI)がプラスになり、従業員と顧客の満足度が上昇し、より迅速に問題解決ができるようになっている。
2018年はチャットbotが顧客サービスに導入された年だったが、2019年は顧客志向企業における顧客とのやりとりの大部分で、チャットbotが絶対的な主役になりそうだ。
AIチャットbotを顧客からの問い合わせの振り分けや処理に使っている企業では、コールセンター業務や顧客とのエンゲージメントを担当する従業員は、一次対応しやすい定型的なサポート依頼から解放された。そして彼らは、時間がかかるような案件や、直接のやりとりが必要になるエスカレーションされた顧客案件を処理できるようになっている。
オンライン旅行予約プロバイダーは現在、AIの利用シーンを拡大している。顧客の最近の検索や予約の履歴に応じた提案をするのに役立つからだ。AIチャットbotは顧客サポートの最前線を担い、貴重な顧客エンゲージメントの獲得に貢献している。顧客はこうしたチャットbotといつでも会話でき、予約やフライト変更、ホテル予約、レストラン予約、自分の好みや季節に基づく現地観光の案内など、さまざまなことについて手助けを受けられる。
レストランもこうした流れに乗って、エンゲージメントや顧客対応の向上にチャットbotを利用するとともに、顧客サポートコストを低減している。AIチャットbotは、予約の管理、顧客からの問い合わせへの対応、顧客注文のカスタマイズといったさまざまな局面で貴重な役割を果たし、そのおかげでスタッフは、店内の顧客への対応に時間をかけることができる。
2019年にはこうしたトレンドが大きく拡大し、幅広い業種の企業がチャットbotを導入するだろう。1990年代は、顧客とやりとりする主要な手段として電話コールセンターが使用され、2000年代はそれがWebサイトや電子メールに移行した。今後の10年間は、顧客の一次対応にセルフサービスチャットbotを使うことが主流になるだろう。
責任ある倫理的なAIに向けて
2018年は顧客データの乱用が表面化し、当事者企業が報いを受けた。Facebookは、ユーザーデータを他社に提供していた方法が大きな批判を浴びている。Equifaxのような企業はデータの漏えいでブランドに傷がついた。TwitterやGoogleなどの企業も、自社の広告主の利益になるようにユーザーデータを提供することを、エンドユーザーに納得させるのが困難になっている。人々は、自分のデータに対する企業の管理状況について、信用や信頼をしなくなっている。2019年には良くも悪くも、こうした状況がAIに影響することになる。
自動運転車の事故やソーシャルネットワークの自動bot、顔認識技術の利用拡大など、企業は、AI技術の利用が広範な影響を与えることを理解している。2018年には、AIをより倫理的な責任ある方法で使用するよう企業に求める声が聞こえてくるようになった。
2019年はこうした声が一段と高まりそうだ。Googleなどの企業はAI倫理委員会などの組織を設置したが、さらに多くのことを実現する必要が出てくるだろう。2019年には、公共スペースでのAIの利用や、人々が持つ情報の利用に関する初の法律や規制を政府が制定すると予想される。2019年には企業も、AI倫理の監督およびガバナンス組織を設け始めるだろう。
さらに、企業は2019年に新規制により、機械学習モデルをトレーニングするために顧客データをどのように使っているかを開示することや、個人や企業がそうしたデータの使用を、必要に応じて拒否できるようにすることが必要になるかもしれない。2019年がどんな年になるとしても、倫理的な責任あるAIはニュースになるだろう。
業界の勢いは続く
AIの導入は拡大を続けており、企業はコグニティブ技術を幅広い用途に実装している。こうしたトレンドに伴う活気や期待も高まる一方だ。2019年にAI分野で、ブレークスルーやディスラプション(創造的破壊)が起きたり、ユニークな製品が実現したりするのは確実だ。それらの動向を追うのは間違いなくエキサイティングな体験になるだろう。
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