すぐ採用すべきケース、様子見が良いケースの違いは
QLC方式のNAND型フラッシュメモリとは? 正しく知る4つの質問
「QLC」方式のNAND型フラッシュメモリへの関心が高まっている。容量面でのメリットからその将来性まで、よくある4つの疑問について解説する。
1つのメモリセルに4bitのデータを保持できる「QLC」(Quad Level Cell)方式のNAND型フラッシュメモリの開発は、NAND型フラッシュメモリ分野における最先端の動きだ。QLC方式は、それ以前の方式と比べて容量が大幅に増大する。その半面、複雑性が生じる。
NAND型フラッシュメモリは、さまざまなコンシューマー向けデバイスの他、企業向けサーバやストレージに使われている。高密度でデータを保持でき、データ読み書きの高速処理が可能で、他のフラッシュメモリと比べて比較的、製造コストが安い。QLC方式のNAND型フラッシュメモリを使えば、容量はかつてなく増大する。
本稿では、QLC方式のNAND型フラッシュメモリについて、よくある質問への回答をまとめた。メリットとデメリット、現在の市場での位置付け、今後の見通しなどについて解説する。
1.自社の環境に適しているかどうか
QLC方式のNAND型フラッシュメモリが自社の環境に適しているかどうかを判断するに当たって、単純に容量が増えるほど良いと考えてはいけない。容量の増大だけを目指すならば、QLC方式は有力な候補となる。
1GB当たりのコストが下がれば、予算面でも採用しやすくなる。だがQLC方式のNAND型フラッシュメモリへ切り替えるかどうかの判断は、現在の環境にもよる。もし1つのメモリセルで保持できるデータが1bitの「SLC」(Single Level Cell)方式、2bitの「MLC」(Multi Level Cell)方式、3bitの「TLC」(Triple Level Cell)方式のNAND型フラッシュメモリを現在導入していて問題がないのであれば、恐らくQLC方式への移行をそれほど急ぐ必要はない。移行したとしても目覚ましい改善は見込めないだろう。
古くなったHDDの運用で苦慮している企業であれば、QLC方式のNAND型フラッシュメモリへの移行は、相当のアップグレードになるだろう。NAND型フラッシュメモリはHDDと比べて消費電力が少なく、データの読み書きが高速で、ハードウェアの更新にかかるコストを削減できるというメリットが得られる。
サーバによる読み込みが集中するアプリケーションで利用する場合、QLC方式のNAND型フラッシュメモリを採用すれば、相当のメリットが得られる可能性がある。一方で書き込みが集中するアプリケーションの場合、注意が必要になる。QLC方式は、他の方式と比べて書き込みに対する耐久性が低いためだ。
2.他の方式とは何が違うのか
QLC方式のNAND型フラッシュメモリは、SLC方式やMLC方式、TLC方式と比べて容量が増大するが、幾つか懸念すべき問題もある。その一つが、容量の増大は期待するほど見込めない可能性がある点だ。
MLC方式のNAND型フラッシュメモリの容量は、SLC方式の約2倍になり、TLC方式はMLC方式と比べて約33%容量が増大する。QLC方式はTLC方式と比べて約25%の増大にとどまる。NAND型フラッシュメモリの技術が一世代新しくなるごとに、容量の増大率は縮小し、耐久性は低下する。ドライブが耐えられる書き込みサイクルの数は、SLC方式と比べるとQLC方式では大きく減少し、ドライブが劣化するタイミングが速くなる。
こうしたデメリットがあるにもかかわらず、QLC方式のNAND型フラッシュメモリを採用する理由とは何だろうか。欠点があることは確かだが、欠点を補うための機能も実装している。例えば一部のメモリセルに読み書きが集中しないようにして使用の寿命を延ばす「ウェアレベリング」や、容量の一部を余剰領域として確保する「オーバープロビジョニング」といった機能を備えている。これらはドライブを長持ちさせることに役立つ。ドライブの進化に伴い容量増大の伸び率が縮小しても、結局のところ、QLC方式はSLC方式と比べると依然として大きな進歩なのだ。
3.企業向けに適しているかどうか
他の半導体メモリと比べると、QLC方式のNAND型フラッシュメモリは耐久性や性能の面で難はあるが、企業で利用できないと決め付けるのは早急だ。1GB当たりのコストが下がる点で、QLC方式はフラッシュメモリ市場における比較的手ごろな選択肢であり、大規模で調達するメリットはあるだろう。
QLC方式のNAND型フラッシュメモリの理想的な用途としては、高いデータ読み込み速度が求められる機械学習やデータ分析がある。動画ファイルのホスティングには高速性と容量が求められることから、メディアストリーミングにもQLC方式が適している。
4.将来性はあるのかどうか
QLC方式のNAND型フラッシュメモリを採用した製品は、既に市場に出回っている。Micron Technology、Samsung Electronics、Intel、ADATA TechnologyといったメーカーがQLC方式の製品を提供している。その性能や容量の増大を考えれば、QLC方式の市場が減速することはないだろう。
フラッシュメモリの価格は一昔前と比べて値下がりしたため、高コストが普及の障壁になることはもうなくなったといっていい。コストが下がったことは、HDDからSSDへの切り替えを進める上では朗報だ。密度、速度、コスト、省電力性を考えると、QLC方式のNAND型フラッシュメモリを搭載したSSDは向こう数年にかけ、フラッシュストレージの有力な候補になるだろう。
加えてQLC方式のNAND型フラッシュメモリの高い処理能力は、IoT(モノのインターネット)デバイスやエッジデバイスに搭載する記録媒体の候補にもなる。QLC方式の人気に直ちに火が付く可能性は低く、2019年中は大きな変化が起きない可能性さえある。それでもQLC方式の市場は確実に広がり、今後も注目を集め続けるだろう。
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