QLC NANDフラッシュ製品がついに登場した。TLCの2倍の記憶密度を誇るQLCは、フラッシュストレージの大容量化に貢献するはずだ。にもかかわらず、その用途が限定されるのはなぜか。
Micronは最近、ただでさえ頭字語が氾濫しているNANDフラッシュストレージ市場に、また新たな用語を持ち込んだ。初のQLC(Quad Level Cell)フラッシュ製品を投入したのだ。Intelも2018年後半にQLCフラッシュ製品を発売する計画だ。
QLC、つまり4層セルは、SLC(Single Level Cell:1セル当たり1bit)に始まりMLC(Multiple Level Cell:1セル当たり2bit)そしてTLC(Triple Level Cell:1セル当たり3bit)と進化してきたフラッシュの最新世代だ。
そもそもQLCとはどのようなものなのか。また、フラッシュストレージ市場において、QLCはどのような意味を持つのか。
その名が示す通り、QLCはフラッシュセル1個当たり4つの0または1の状態を取ることができる。つまり、セル1個で16通りの異なる組み合わせを表現できる。その組み合わせを全て列挙すると、0000、0001、0010、0011、0100、0101、0110、0111、1000、1001、1010、1011、1100、1101、1110、1111だ。
SLCは0か1かの2通り。MLCとTLCはそれぞれ4通りと8通りの状態を表現できる。よって、QLCのストレージ密度はTLCの2倍になる。これは軽視できない。
その一方で短所も存在する。QLCは既存の世代のフラッシュよりも多くのデータを格納できるが、書き込み時の消耗が非常に激しい。
そこでQLCはそう何度も書き換えることができない媒体になる点に、ここで少し目を向けて考えよう。これは、フラッシュストレージが異なる物理層間の電圧の流れを読み取ることに基づいており、実際の電圧の流れは量子物理学のレベルで説明できるためだ。
一般論として、QLCは非常に狭いスペースでスイッチングと測定を行わなければならない。これは消耗による悪影響を受けるためで、電圧の読み取りの確実性が著しく下がる。従ってフラッシュに一度書き込むと、特にQLCの場合は、データの書き込み能力が文字通り失われて、データを書き換えられなくなる。
MicronはQLCを採用した「5210 ION SSD」の性能について、それ自体の数値は公表していないが、TLCを採用した同社の「5200 ECO SSD」との性能比を発表している。例えば、ランダム読み取りは9万5000IOPSの0.8〜1倍、シーケンシャル書き込みのパフォーマンスは520MBpsの0.6〜0.8倍だ。
ランダム書き込みのパフォーマンスは、2万2000IOPSの0.25倍だという。つまり約6500IOPSということになる。それでも従来のHDDに比べれば格段に速い。昔のHDDは1台当たり200IOPS前後の性能だったのだから。
しかし、QLCドライブの泣きどころは読み書きの速度ではない。
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