「モバイル医療アプリ」のメリットとセキュリティリスク【前編】
患者満足度9割超えも 医師と患者を近づける「モバイル医療アプリ」の実力
手術室から患者の家族に最新情報を送信できるなど、「モバイル医療アプリ」は医療機関にも患者にもメリットをもたらす。ただしセキュリティの懸念は残る。
ドナルド・プラムレー医師は小児患者を手術する際、患者の容体を知らせるためにその家族を数時間待たせることはない。米フロリダ州オーランドにあるアーノルド・パーマー小児病院で、小児外科医兼最高品質責任者を務めるプラムレー医師の患者の家族には、30~45分おきに最新情報が伝わる。手術室で指名を受けた看護師が、HIPAA(米国における医療保険の相互運用性と説明責任に関する法令)に準拠した医療用のモバイルアプリケーション(モバイル医療アプリ)を使って、手術室内の最新の情報をテキスト、写真、動画で家族に送ることができるからだ(写真)。
EASE Applicationsのモバイル医療アプリ「Electronic Access to Surgical Events」(EASE)を利用すれば、医師や看護師は、テキストや動画、写真で患者の家族とコミュニケーションを取ることができる。医師がいつ手術室を出て家族と会話できるかを知らせることも可能だ。家族が受け取ったメッセージは表示から60秒後、自動で消える。
併せて読みたいお薦め記事
医療現場における、セキュリティと利便性のトレードオフ
- 医療機関が「Microsoft Teams」を使う4大メリットと3大リスクは?
- 生体認証導入で医療機関でもパスワードはなくなる? そのメリットと課題
- 病院の情報セキュリティは、ベストプラクティスとユーザーニーズのバランスが難しい
モバイルアプリケーションで変わる医療
プラムレー医師は、EASEによって患者の満足度評価が上がり、手術室の環境の透明性が高まったと説明する。
アプリケーションで患者家族との信頼関係を築く
「EASEが提供する医療行為の透明性と、医療従事者とのコミュニケーションを、患者は高く評価している」とプラムレー医師は話す。情報の共有は、小児患者の家族との信頼関係を築くことに役立つという。プラムレー医師と同氏が率いるスタッフは、EASEを使うことで患者に対して、手術後のいつ、どこで家族と会えるかを伝えることができる。そのため患者の家族が医師やスタッフを探し回る必要はなくなる。「患者の家族は患者のケアに、従来よりもはるかに多く関わるようになっている。EASEはこの点でも医師にとって非常に価値あるものになっている」(プラムレー医師)
患者満足度9割超えを実現
プラムレー医師だけがEASEを導入し、活用しているわけではない。アーノルド・パーマー小児病院とそのグループ病院が実施した、HCAHPS(病院利用者による医療機関と医療システムの評価:Hospital Consumer Assessment of Healthcare Providers and Systems)に基づく6カ月にわたる比較調査によると、EASEを使用している病院は、使用していない病院と比べて、患者から高い評価を得ているという。HCAHPSは米国政府が開発した、患者の視点から医療サービスの質を評価する指標だ。
EASE ApplicationsのCEO、パトリック・デ・ラ・ロザ氏によると、EASEはテキサス小児病院など、他の病院でも患者の満足度を高めているという。同社はWebサイトに、テキサス小児病院が独自に実施した診療体験に関する患者アンケートの結果を掲載している。EASEの患者満足に対する影響度の調査結果もあり、そこにはEASE導入前の2016年1月から導入後の同年9月までに、患者満足度が87.5%から96.7%へ向上したとの記載がある。
患者データの安全性とセキュリティには注意が必要
モバイル医療アプリは、医療従事者と患者間のコミュニケーション方法を変えている。CMS(メディケア・メディケイドサービスセンター:Centers for Medicare and Medicaid Services)やONC(医療IT全米調整官室:Office of the National Coordinator for Health IT)のような連邦規制機関でさえ、モバイル医療アプリよるデータ共有を推奨している。
ただしコンサルティング企業Frost & Sullivanでアナリストを務めるビクター・キャムレック氏とグレグ・キャレッシ氏はこう話す。「EASEのようなモバイル医療アプリを利用する場合、医療機関の最高情報責任者(CIO)は、アプリケーションの利用状況を把握して、患者データの安全性とセキュリティを確保する必要が生じる」
後編は、EASEをはじめとしたモバイル医療アプリのセキュリティ対策について詳しく説明する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「モバイル医療アプリ」のメリットとセキュリティリスク
医療用のモバイルアプリケーション(モバイル医療アプリ)は、医療機関や患者、その家族にどのようなメリットをもたらすのか。利用に当たっては、どのようなセキュリティリスクに対処する必要があるのか。EASE Applicationsの「Electronic Access to Surgical Events」(EASE)を例に解説する。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
3
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
4
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
5
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
6
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
7
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
8
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
9
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
10
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー