復権する「ストレージ階層化」【前編】
枯れたはずの「ストレージ階層化」がフラッシュメモリの進化でよみがえる
一時は廃れたかと考えられた「ストレージ階層化」だが、いま再び注目を集めている。その陰にあるのは、多様な進化を遂げるフラッシュメモリの存在だ。
企業の間で「ストレージ階層化」が広く採用されるようになったのは、フラッシュメモリの高いパフォーマンスとHDDと同じストレージインタフェースを備えたSSD(ソリッドステートドライブ)が使用され始めた時だ。フラッシュメモリの価格下落とともにSSDの容量が増大し、オールフラッシュストレージに移行する動きが広がった。その結果、ストレージ階層化の人気は低迷した。
さらに時が流れ、パフォーマンスもコストも異なるさまざまな種類のフラッシュストレージが登場した。例えば、IOPS(1秒当たりに処理できるI/O数)の性能が高い「NVMe」(Nonvolatile Memory Express)、データ読み書きの待ち時間が長くなりやすい「Serial ATA」(SATA)などのストレージインタフェースを採用したフラッシュストレージがある。さらに「ストレージクラスメモリ」(SCM)というメモリの新たな技術も登場した。こうしたさまざまな技術によるコストとパフォーマンスの利点を最大限に活用する方法として、ストレージ階層化が再び脚光を浴びようとしている。
いったんは廃れたストレージ階層化
ストレージ階層化とは、データの利用価値に応じてコストとパフォーマンスを最適化するようポリシーベースで管理する手法だ。データは、古くなり利用頻度が低下するに連れてその価値が低下する。価値が下がったデータは、高速なデータの読み書きを実現するSSDのような階層から、HDDのような低いパフォーマンスで低コストの階層に移される。データの古さに応じてストレージを階層別に管理することで、コスト効率を高める効果がある。
ある調査によると、データはその大半が作成後72時間以内に利用される傾向がある。その後は徐々に利用頻度が下がり、30日後に急減するのが一般的だという。ポリシーを設定する際は、最後にそのデータを利用した日時や作成日時を基準にして、経過時間を基にデータ管理の階層を移動する。
ストレージ階層化に用いるソフトウェアは、ポリシーで設定するしきい値に基づいてデータを配置または移行する仕組みを採用している。パフォーマンスが高くコストも高いストレージ層を、利用価値の高いデータに使用する。古くなって利用頻度が下がったデータを、パフォーマンスが高い層から低い層に移す。SSD、高速HDD、大容量HDDといった複数層で構成される階層化の例もあり、こうした場合はデータを複数回移動する。
フラッシュメモリの進化による影響
フラッシュメモリの価格が下がったことで、フラッシュメモリを利用するSSDと高速HDDの価格差は実質的になくなった。価格の下落に加えてSSDの容量が急増したことで、SSDがHDDに取って代わった。ストレージシステムは全ての容量をフラッシュストレージで賄う「オールフラッシュストレージ」が主流になり、ストレージを階層化するニーズは縮小した。
しかし状況はストレージ技術の進化に応じて変化している。SSDなどのフラッシュストレージが採用するNAND型フラッシュメモリは、
- 1つのメモリセルに2ビットのデータを格納する「マルチレベルセル」(MLC)
- 1つのメモリセルに3ビットのデータを格納する「トリプルレベルセル」(TLC)
- 1つのメモリセルに4ビットのデータを格納する「クアッドレベルセル」(QLC)
- メモリセルを垂直方向に積層する3次元(3D)化の技術を採用した「3D MLC」「3D TLC」「3D QLC」
といったさまざまな種類が誕生している。このような進化を背景として、ストレージ階層化を取り巻く状況も変化している。
フラッシュメモリはメモリセル当たりのビット数が多くなるほど、パフォーマンスが低下してメモリの消耗は早くなる傾向がある。こうした違いがあるため、SSDメーカーは個々の要望に応じるために多種多様なSSDを開発している。例えば、待ち時間、IOPS、容量、耐久時間、コストなどの違いがある。
大容量で低コストの3D QLCを採用したSSDを考えてみよう。このSSDの耐久時間は3D TLCを採用したSSDの10分の1程度、3D MLCを採用したSSDの100分の1程度だと考えられる。そのため書き込み負荷が高いアプリケーションに適しているとはいえない。それよりも適しているのは、読み取り負荷が小さく、耐久時間には影響しないアプリケーションだ。ただし、こうしたさまざまな技術を生かしてストレージ階層化を実施するとなれば、コストやパフォーマンスなどの観点を取り入れて運用する必要があり、管理者にとっては手ごわい。
どのようなストレージインタフェースを採用しているかも考慮する必要がある。高いパフォーマンスを実現できるNVMe、パフォーマンスは落ちるが低コストの「Serial Attached SCSI」(SAS)、最もコストを抑制できる可能性のあるSATAなど、幾つかのストレージインタフェースを選択可能だ。ストレージインタフェースはストレージのパフォーマンスとコストに影響する。オールフラッシュストレージといえども、もはや単一の階層ではないということだ。
ストレージクラスメモリ
ストレージクラスメモリに分類される次世代のストレージ技術も登場している。IntelとMicron Technologyが共同開発した「3D XPoint」をはじめ、「ReRAM」(抵抗変化型メモリ)、「STT-MRAM」(スピン注入メモリ)、「NRAM」(カーボンナノチューブメモリ)、「MRAM」(磁気抵抗メモリ)などがある。これによってストレージの階層はさらに増える可能性がある。ストレージクラスメモリはフラッシュメモリよりも待ち時間が短く、高いIOPSを誇り、耐久時間が長くなる。ただしストレージクラスメモリはフラッシュメモリよりもかなり値が張る。
大幅にコストを増やすことなくさまざまなフラッシュメモリとストレージクラスメモリを活用したいのであれば、ストレージ階層化の技術が鍵になる。さまざまなメモリ技術が実現するパフォーマンスやコストを有効に活用するためには、機械学習のようなAI(人工知能)技術を利用するのが理想的な手法となる。
後編は、企業の間で広がるクラウドストレージの利用を考慮して、ストレージ階層化の必要性を説明する。
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復権する「ストレージ階層化」
フラッシュストレージの登場で一時はその必要性がなくなったかに見えた「ストレージ階層化」。皮肉なことに、フラッシュメモリがさらに進化することで、今またその価値が見直されている。さらにクラウドストレージの普及で階層化の対象が広がる中、ストレージ階層化によってストレージシステムがこれからどう変わるのかを考える。
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