2019年05月15日 05時00分 公開
特集/連載

ストレージの新旧交代劇【前編】HDDがストレージ市場から“消え去る”とは言い切れない、これだけの理由

SSDへの置き換えが徐々に進み、HDD全体の市場は縮小傾向にある。ただし、HDDが市場から消え去るわけではなく、新たな役割にシフトしている。HDDはこれからどう使われるのだろうか。

[渡邉利和,著]

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 HDDからフラッシュストレージへの切り替えが進んだのは、おおよそ2017〜2018年の間だろう。フラッシュストレージの高速性を生かして「データ圧縮」や「重複排除」を併用した論理容量という比較条件になるが、この当時におけるフラッシュストレージの容量当たり単価はHDDと同等、もしくは若干下回る程度までになっていた。企業が積極的にHDDを選ぶ理由が少なくなったのだ。このインパクトは大きく、このタイミングで市場では急速にストレージの新旧交代が進んだといえる。

 この「逆転劇」ともいえる新旧交代は、フラッシュストレージ側に視点を置いて「どうやってHDDを追い越したか」という文脈で語られることが一般的だ。これをHDD側から見るとどうなるのか。そしてHDDは今後どこに活路を見いだしていくのだろうか。

 本稿では、2019年初頭時点でのHDDの将来展望について紹介する。

HDDは今、どのような状態なのか

 1956年にIBMが発表した世界初のHDD搭載コンピュータ「IBM 305 RAMAC」を皮切りに、コンピュータの外部記憶装置として重要な役割を担うことになったHDD。その後もさまざまなメーカーが市場に参入したものの、HDDを開発する企業はM&A(合併・買収)などによる事業統廃合で徐々に集約されていった。これは「価格低下の圧力がある中で事業として成立させるためには、十分な出荷数を確保できる企業規模が必要」という市場原理によるものだ。さらにフラッシュストレージの登場によって、HDDメーカーの事業環境は厳しさを増していった。

 現在、主要なHDDメーカーはグローバルで3社しか残っていない。日本の東芝デバイス&ストレージ(以下、東芝デバイス)、Western Digital(以下、WD)、Seagate Technology(以下、Seagate)だ。中でも東芝デバイスの親会社である東芝は、1984年に世界初のNAND型フラッシュメモリの開発に成功。いち早く実用化を果たしフラッシュ時代の開拓者となった。その後の経営環境の変化などを受け、東芝の半導体事業は東芝メモリとして独立した。その影響もあってか、WD、Seagateいずれも製品ラインアップにSSDを加えているのに対し、東芝デバイスはストレージ製品としてHDDのみを供給するという立ち位置になっている。

HDD市場の変化

 調査会社テクノシステムリサーチの資料に基づいて市場動向を見てみると、HDDの市場規模は右肩下がりという予測になっている(図1)。グラフで「2.5型」「3.5型」とあるのはPC向けのHDDで、こちらは台数ベースではまだ相応のボリュームを占める。ただし、もともと容量、価格共にエンタープライズ向けの製品には及ばないため、金額ベースで見た場合にはさほど大きなインパクトはない。

画像 図1 HDDの市場規模予測(出典:テクノシステムリサーチ)《クリックで拡大》

 現在オールフラッシュストレージのベンダー各社が積極的に展開しているエンタープライズ市場も、台数、金額、出荷容量のいずれの指標で見ても市場は縮小しつつある(図2)。少なくとも、エンタープライズストレージ市場においてはHDDからフラッシュストレージへの世代交代は完了しつつある。ではHDDの命運もこれで尽きたかというと、そうはなっていない。台数ベース、金額ベースで堅調に成長し、容量ベースで急激な成長が見込まれているニアライン(NL)市場が目を引く(図2、3)。

画像 図2 エンタープライズ向けドライブ市場の市場予測(出典:テクノシステムリサーチ)《クリックで拡大》

画像 図3 ニアライン市場の市場規模動向(出典:テクノシステムリサーチ)《クリックで拡大》

「ニアライン」に商機を見いだすHDD

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