「QLC」の期待と課題【前編】
「QLC」方式のNAND型フラッシュメモリはHDDの代わりになるのか?
QLC方式のNAND型フラッシュメモリはデータを高密度で保持できる利点があるが、犠牲になる性能もある。それを理解する上で役立つのが、データを保持する仕組みを知ることだ。
NAND型フラッシュメモリに格納できるデータ量を増やすため、メモリベンダー各社は1つのメモリセル(データの記憶素子)に保存できるbit数を増やす技術を開発してきた。始めは1メモリセルに1bitだったものが2bitになり、やがて3bitになった。そして1メモリセルに4bitを格納する「クアッドレベルセル」(QLC)方式のNAND型フラッシュメモリが登場した。1メモリセルに3bitを格納する「トリプルレベルセル」(TLC)方式のNAND型フラッシュメモリと比べ、QLC方式はデータ保持の密度が約33%増加するため、コスト効率が上がる。
デメリットもある。適したアプリケーションが限定されることだ。QLC方式のNAND型フラッシュメモリの採用を急ぐ前に、その制約を理解し、どのようなアプリケーションが適しているのか確認しておく必要がある。
QLC方式のNAND型フラッシュメモリを搭載したフラッシュストレージは、データセンターで広く採用されているHDDの有力な代替策になる。
QLCの実力と中身
Micron Technologyによると、同社が製造するQLC方式のNAND型フラッシュメモリの読み取りIOPS(1秒間に処理できるI/O数)は、一般的なHDDの450倍以上になるという。QLC方式のNAND型フラッシュメモリを搭載したフラッシュストレージは設置スペースを節約でき、電力消費量が少ない上、価格はHDDとほぼ同等だ。
不揮発性メモリの一種であるNAND型フラッシュメモリは、複数のシリコンダイ(回路を作り込んだシリコンの薄辺)から構成されている。1枚のシリコンダイは複数の「プレーン」という領域に分かれ、各プレーンは複数の「ブロック」という領域に、各ブロックは複数の「ページ」という領域に、各ページは複数のメモリセルに分かれ、各メモリセルにデータを格納する。データの読み出しと書き込みはページ単位であるのに対し、データの消去はブロック単位であるため、書き込みと消去のプロセスは複雑になる。
各ドライブが搭載する「メモリコントローラー」がデータの読み書きを制御する。例えば、データの書き換えを複数のメモリセルに均等に分散させる「ウェアレベリング」、空きブロックを作り出す「ガベージコレクション」に加え、誤り訂正、データ暗号化といったタスクをメモリコントローラーが制御する。ウェアレベリングとガベージコレクションは、書き込みと消去のプロセスの影響を緩和し、フラッシュメモリの耐久性(寿命)を延ばす上で重要だ。
注意すべき「P/Eサイクル」課題
NAND型フラッシュメモリの寿命には、さまざまな要因が影響する。中でも「P/Eサイクル」(データを書き込む際の一連のプロセス)の回数の影響は大きい。フラッシュメモリのP/Eサイクル数には限界があり、それを超えると障害が発生する要因となる。
P/Eサイクル数の限界には「ライトアンプリフィケーション」(書き込み増幅)が大きく関係する。書き込み増幅とは、変更したいデータ量を上回る量の書き込みが発生することだ。これは、データの書き込みはページ単位でできるのに対し、消去はブロック単位でしかできないという、NAND型フラッシュメモリの特性に起因する。データを書き換える際には元のデータを先に消去する必要があり、書き換えたい部分が少なくても、ブロック全体をいったん消去しなければならない。そのため、変更対象より多くのデータ量を書き込み直すことになる。ウェアレベリングとガベージコレクション、「オーバープロビジョニング」(総容量の一部を別途確保しておくこと)などの機能により、この問題をある程度緩和できるが、ドライブのP/Eサイクル数に限界があることに変わりはない。
1個のメモリセルに保持するbit数は、ドライブが故障するまでに耐えられるP/Eサイクル数に直接的に関係する。推定値には幅があるが、1メモリセルで保持するbit数が多いほど最大P/Eサイクル数は少なくなる。例えば1メモリセル当たり1bitのSLC(シングルレベルセル)方式のNAND型フラッシュメモリの場合、最大P/Eサイクル数は約10万回となる。対して1メモリセル当たり2bitのMLC(マルチレベルセル)方式は3000回〜1万回、1メモリセル当たり3bitのTLC方式は1000回〜3000回となる。QLC方式の最大P/Eサイクル数は1000回未満で、100回程度という推定値もある。
データの密度が高くなるほど最大P/Eサイクル数が少なくなるのは、書き込み時に電圧がメモリセルに加わることが関係している。書き込みプロセスは複雑だが、ここで重要なのは、書き込みをするたびにメモリセルは少しずつ劣化するということだ。1メモリセルのbit数が多いほど劣化しやすいため、QLC方式のNAND型フラッシュメモリは他の種類のNAND型フラッシュメモリより劣化しやすく、最大P/Eサイクル数が少なくなる。
後編は、本稿で紹介した特性を備えたQLC方式のNAND型フラッシュメモリに適したアプリケーションを考察する。
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「QLC」の期待と課題
QLC方式のNAND型フラッシュメモリは、1個のメモリセルで4bitを保持でき、高密度のデータ保管を可能にする。ただし密度を高めている分、犠牲にしなければならない性能もある。どのようなアプリケーションであれば適しているのだろうか。
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