「5G」による製造業改革【後編】
「5G」で製造現場はどう変わる? VR研修の実現や道具の紛失対策に効果
「5G」の活用がとりわけ期待されているのは製造業だ。工場のような現場に高速で低遅延のネットワークを導入することで、研修や資産管理といった業務の非効率性を一掃できる可能性がある。
従業員が新たに加わった場合、一般的には業務知識やノウハウを身に付けてもらうための研修を実施する。これは製造業でも同様だ。製造業で研修に使われている教材は、以前からほとんど変わっていない。企業は相変わらずその教材にお金をかけ、昔ながらの研修に時間を割いている。
製造業の中には離職率が高い企業も少なくない。短時間で従業員が入れ替わってしまえば、研修のために投じたコストは無駄になる。職場の生産性を大幅に下げることにもつながりかねない。
併せて読みたいお薦め記事
「ローカル5G」とは何か
「5G」の特徴をおさらい
5Gで変わる従業員研修
「5G」(第5世代移動体通信システム)の大きな利点は、データの送信元から受信先までエンドツーエンドのレイテンシ(遅延)が極めて低い点だ。この特性を活用することで、拡張現実(AR)や仮想現実(VR)を使った新しい従業員研修を提供できる可能性がある。
ARやVRを研修に使うことの利点は、遠隔でありながらリアルタイムできめの細かな研修ができることだ。研修生は実際の現場にいるかのように行動できるため、職場の実態を把握して作業のポイントを見極め、作業ミスを避けるために自分の行動をどのようにコントロールすべきかを確認できる。
工場などの現場で実際に5Gを利用する際は、ARやVR用のヘッドマウントディスプレイ(HMD)を現場内の5Gネットワークに接続する。そのネットワークは高速なデータ処理が可能なサーバと接続している。こうしたITインフラを整備することで、データ伝送とデータ処理を高速化できる。結果としてARやVRによる研修時に、研修生や講師のコミュニケーションにライムラグが発生する可能性が低減する。こうした研修を取り入れる企業は、新人研修のための時間を短縮でき、研修による学習の成果を高め、従業員の入れ替えによる生産現場の効率性の低下を低減し、ミスによる事故を減らすことができるだろう。
道具の紛失対策にも5Gが効果
製造現場や建設現場では、作業用の道具や機器が間違った保管場所に置かれたり、盗まれたりすることが珍しくない。現状は現場責任者が目視によって道具や機器など資産の在庫状況を確認し、手作業でその状況を記録していることが一般的だ。こうした作業は定期的に実施しなければならず、手間と時間を要する。目視や手作業という、正確性や信頼性が疑わしい方法にコストと時間を浪費しているのだ。道具が紛失した場合は、それを探すためにも手間がかかってしまう。
管理対象の資産に対してセンサーを装着し、IoT(モノのインターネット)用のソフトウェアと接続すれば、対象の道具や機器の使用状況、修理や交換の必要性などを遠隔で確認できる。紛失した場合にもデータでその場所を確認することは難しくないため、時間をあまり無駄にすることはない。
5Gは低消費電力という特性も持っているため、複数のアンテナに常時接続しておく運用が可能だ。三角測量によって正確に道具の場所を特定できる。現場の生産性は向上し、原因不明の資産の紛失や盗難が減り、在庫管理の正確性が高まる。資産管理の状況を分析することで、将来に役立つ洞察を引き出すことも可能だろう。
5Gの未来に向けた製造業者の備え
製造業者は、5Gが業務にもたらす変化を見据えて、以下の項目を検討しておくとよい。
- 今後の実施を検討しているPoC(概念実証)のうち、将来的にネットワークを5Gに置き換えることが可能な取り組みはあるかどうか
- そのPoCで5Gを導入するのであれば、何か用意しておくべき技術や5Gに準拠させるべきものはあるかどうか。さらにそれは他の用途に活用することはできるのかどうか
- セキュリティ対策やエッジ(データが発生する現場)におけるデータ処理など、PoCを実施するに当たって求められる可能性のある条件は他にあるかどうか
- 5Gの活用に着手し、将来的に発展させるためにどのようなパートナーの協力を得るべきか
- 5Gの活用への投資効果を最大化するためには、どのようなソフトウェアやハードウェアが必要になるか
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「5G」による製造業改革
製造業の現場は、「5G」の導入によって大きく生産性が向上する可能性がある。既に進められている生産工程の自動化に加え、生産設備を監視するセンサーやAI技術を低遅延で接続することで、製造現場全体へと効率化の波が広がる。5Gが製造業をどのように変えることができるのか。具体的に紹介する。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
技術文書・技術解説
[Jamf Japan 合同会社] MDMだけでモバイルセキュリティは十分? 不足する対策を16項目でチェック -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 世界的な家電メーカーが実践する「クリエイティブプロセス効率化」の方法とは? -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 世界的テクノロジー企業に学ぶ、プロセス標準化とプロジェクト納品自動化の秘訣 -
事例
[Wrike Japan 株式会社] ソニー・ピクチャーズ テレビジョンに学ぶ、次世代サービスデリバリーのヒント -
事例
[Wrike Japan 株式会社] ソミック石川に学ぶ、ICT浸透後に直面した「工数管理」の課題と解決策
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
2
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
3
「Microsoft一択」で本当にいいのか 知らぬ間にライセンス費用が膨らむ真相
-
4
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
5
ANAが専用回線から移行した「NaaS」の全貌 ネットワーク準備が数カ月から数週間に
-
6
「プログラマー不要論」にThe Linux Foundationが示した答え
-
7
VBAマクロ“原則ブロック”後に「Office」でマクロを実行する方法
-
8
「VMware離れ」は本当か 3000社がVCF 9にかじを切った現実的な理由
-
9
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
10
Qlik Senseを使った教育機関の予測分析は現場に何をもたらしたか
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
2
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
3
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
4
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
5
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
6
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
7
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
8
ドラマで分かる、標的型攻撃メールの被害を受ける企業と回避できる企業の分岐点
-
9
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
10
少額減価償却資産が40万円未満へ拡大、令和8年度税制改正で押さえるべき変更点
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー