不動産管理会社のERPレポート活用事例【前編】
不動産管理会社が「ERPの標準レポート機能は不十分」と感じた理由
不動産管理を手掛けるMidwest Property Managementは、ERPシステムが標準搭載するレポート機能に不満を抱いていた。それはなぜなのか。どのように解消したのか。
企業にとってERP(統合業務)システムは心臓部に当たる。だが、そこから有用なデータを簡単に引き出せるとは限らない。カナダの不動産管理会社Maclab Properties Groupの一部門、Midwest Property Managementもそうした組織の一つだった。だが、それはinsightsoftware(Global Software)のERPレポートツール「Spreadsheet Server」に出会うまでの話だ。
Midwest Property Managementは、MRI Software(以下、MRI)の不動産業界向けERPシステムを使って運用データを扱っている。同社で不動産アナリストを務めるジョセリン・ルルー氏によると、このシステムには堅牢(けんろう)なERPレポートツールが欠けていたという。同社は、自社の管理レベルに合わせて微調整できるレポート機能を必要としていたが、MRIのシステムにはその種のレポート機能がなかった。「MRIのERPシステムは優れている。だが最適なレポートソフトウェアが付属していない」(ルルー氏)
この状況を変えたのがSpreadsheet Serverだった。Spreadsheet Serverを使うと、ERPシステム内のデータをリアルタイムに反映した財務報告書の作成に加え、特定のユーザーや機能に合わせた財務報告書の設計ができるようになる。ルルー氏は、こうした対象を絞った機能と使いやすさこそが、Spreadsheet Serverと一般的なビジネスインテリジェンス(BI)ツールとの違いだと考えている。ただしSpreadsheet Serverは競争の激しいBI市場で著名ブランドと対抗するのに苦戦する可能性があるとも考えている。
なぜERPの標準レポート機能では満足できないのか
ルルー氏がSpreadsheet Serverに出会ったのは2016年、MRIのユーザーカンファレンスでのことだった。インストールが簡単で「Microsoft Excel」(以下、Excel)と容易に連携できる点に引き付けられた。同氏はSpreadsheet Serverのことを、現在ERPレポートを手作業で作成しているあらゆる組織に「革命を起こす製品だ」と見ている。「Excelについてごく最低限の知識しかなくても、このソフトウェアがあれば最新の収支報告書や会計報告書を好みの形式で直接作成できる」(同氏)
導入1年目は、Spreadsheet Serverの基本ライセンスだけで「レポート作成時間を恐らく100時間以上節約できた」とルルー氏は語る。以前は全ての作業を毎月手作業で一つずつこなしていたが、Spreadsheet Serverの導入でこのプロセス全体を自動化できた。
insightsoftwareのCEO、マイク・リップス氏によると、Spreadsheet Serverを含む同社のERPレポートツールは、ERPの標準機能として実装されているレポートツールには欠けている機能を補うという。「ERPシステムの標準レポートツールが扱うのは、そのERPシステムのデータのみだ。だが多くの企業は複数のデータソースを抱えており、ERPシステムを複数導入している企業もある」(リップス氏)。insightsoftwareのツールは、SAP、Oracle、Microsoftのような主要ベンダーの汎用(はんよう)製品から、MRIのように業界を特化した製品まで、140種類を超えるERPシステムと連携する。
買収によって成長している企業があるとする。この企業はSAPのERPシステムを使用している。だが買収先の企業が旧PeopleSoftや旧JD EdwardsのERPシステム(いずれも現在はOracleが販売)を使用している可能性がある。時間やコストをかけて、それら全てのERPシステムを1つに統合する企業はほとんどない。そのため「財務報告に必要なデータが、メインのERPシステム以外に多数存在することになる」(リップス氏)。
ERPにかかる時間の節約
不動産業界に属する組織であればどこも同じだが、Midwest Property Managementにとって「時は金なり」だ。ルルー氏は、Spreadsheet Serverによって、同氏の部署がレポート準備にかかる時間を、少なくとも毎週20時間短縮できていしていると推定する。同組織の経理部門もSpreadsheet Serverを使用し、ほぼ同程度の時間を削減している。
レポートの書式を整える以外にも仕事はあるので、短縮できた時間全てが自身の部門や経理部門の自由になるわけではない。ただし付加価値を会社に提供することはできる。Midwest Property Managementは全ての不動産管理者とバイスプレジデント(VP)向けにダッシュボードを作成し、現金の締め日中に提供できるようにしている。「ユーザーは細目を掘り下げることができる。ダッシュボードの外観はまさに利ユーザーが求める形式になっている」(ルルー氏)
会議中に不動産管理者や上級管理者から受ける質問にリアルタイムに回答することが可能で、答えの準備に数日かけることはなくなったという。「急な質問でも2分もあれば答えることができる。これにより、ビジネス上の意思決定をさらにリアルタイムに近いタイミングで下すことが可能になった」(ルルー氏)
Spreadsheet Serverは、Midwest Property ManagementのERPシステムのデータを1つのビューに表示する。そのため手作業のプロセスにありがちなミスを最小限に抑えられるという。「少数精鋭で運営しているため、当社にとって簡単に使える製品は大歓迎だ」とルルー氏は話す。
後編は、一般的なERPシステムにおける標準レポートツールの不足点を取り上げる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
不動産管理会社のERPレポート活用事例
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[オーティファイ株式会社] AIでコーディングは加速したのにテストはそのまま? いまQAに必要な進化とは -
事例
[オーティファイ株式会社] QAで開発サイクルを遅延させない 8社の事例に学ぶ「テスト工程」の課題解決策 -
製品資料
[株式会社ガラパゴス] 「AIっぽい広告」の山に埋もれさせない AIマーケで着実に成果をだす秘訣とは? -
製品資料
[株式会社ガラパゴス] 「広告投資」調査レポート2026:勝ち組企業は何に投資しているのか? -
製品資料
[株式会社Helpfeel] 「問い合わせの渋滞」を解消、情シスの負担を軽減する“次世代型AI”活用方法
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
2
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
3
膨らむAIコストに歯止め GitHubのマルチモデルルーターは何が違うのか
-
4
マンガで解説:採択率は3割台? デジタル化・AI導入補助金申請の落とし穴
-
5
9割が頓挫する「AI内製化」 差がついたのはツールより設計力
-
6
覇権争いは終了? SnowflakeやSAPが「Apache Iceberg」の採用を急ぐ理由
-
7
「コンテナ型データセンターの検討状況と課題」に関するアンケート
-
8
多要素認証導入済みでもランサムウェア被害に 復旧費用は平均2億7000万円
-
9
「ネットワークインフラの現状と課題」に関するアンケート
-
10
社内開発×ノーコードで検証速度を4倍にしたエアトリのWebサイト改善術
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
2
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
3
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
4
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
5
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
6
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
7
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
8
ドラマで分かる、標的型攻撃メールの被害を受ける企業と回避できる企業の分岐点
-
9
少額減価償却資産が40万円未満へ拡大、令和8年度税制改正で押さえるべき変更点
-
10
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー