患者対応に変革を起こすIT【後編】
病院が「空き病床削減」「外来チェックイン」をIT化 各システムの中身は?
在院日数や病床稼働率は、病院が効率的に稼働しているかどうかを示す重要な指標だ。これらの改善にITを生かした2つの医療グループの事例を紹介する。
2019年9月にボストンで開催された医療カンファレンス「Annual Thought Leadership on Access Symposium」(ATLAS)には、医療機関の「変革責任者」(Transformation Officer)が集い、患者への医療サービス提供に関するワークフロー改善をテーマにさまざまな発表があった。前編「『診療予約日に来ない患者を減らすシステム』を病院が構築 その仕組みとは?」に続き、本稿は同カンファレンスの講演内容から、患者への利用サービス提供の改善に役立つ幾つかのトピックスを紹介する。
医療グループHartford HealthCareは、同グループで起きていた問題に対して大掛かりな変革をしようとしている。同グループの最高戦略および変革責任者を務めるデイビッド・ホワイトヘッド氏は、同グループを悩ませている問題は2つあると説明する。一つは患者の在院日数が長期化する問題。もう一つは特定の深刻な医療環境下で、収容可能な病床を活用し切れていない問題だ。
ITが最大限の病床活用を可能に
こうした問題に対処するため、Hartford HealthCareは医療ロジスティクスセンターを設立した。このセンターが同グループ全ての病床を管理し、患者全員の移動業務を担うことで、空き病床の最適化を実現している。その結果、同グループ全体で病床の利用率が大幅に改善した。これは「組織全体の励みになっている」とホワイトヘッド氏は語る。同グループは、患者がグループ内医療機関での治療を継続的に受けられるようにするための調整を徹底したいと考えている。
ホワイトヘッド氏によると、Hartford HealthCareは今後、人工知能(AI)テクノロジーの導入を検討することになる。必要な病床や空き病床の予測を可能にするためだ。
緊急医療施設のオンラインチェックイン導入
医療グループChristianaCare Health Systemが緊急医療施設(アージェントケアセンター、注1)に患者が事前に訪問時間と受診理由を連絡するための「オンラインチェックイン」機能を導入することに決めたとき「最初に重要だったのは最前線で働くスタッフの賛同を得ることだった」とロビンソン氏は話す。
注1:米国の医療制度におけるアージェントケアセンターとは、命に関わるほどではないが当日中の応急手当てが必要なレベルのケアを提供する医療機関。医療費は救急治療室(Emergency Room)を利用するよりも比較的低額になる傾向がある。
変革の取り組みを成功させるには、その前に従業員、職場文化、ワークフローに対処することが欠かせないとロビンソン氏は述べる。変化の影響を受ける医療関係者と率直に話し合う場を設け、院内における医療関係者の職務の重要性を高めた上で、変化を取り入れることが不可欠だという。「肝心なのはテクノロジーではなく人だ。このような話し合いを重ねれば、臨床現場の文化が変わり始め、順応するようになる」と同氏は語る。
オンラインチェックイン機能で事前に訪問予定を連絡すると「待機リスト」に登録され、患者が医療施設に到着する前にオンラインで待ち行列に並ぶことができ、待合室の混雑回避につながる。ChristianaCare Health Systemがオンライン待ち行列の仕組みを業務フローに組み込んだときにうまくいったのは「基盤の準備ができていたからだ」とロビンソン氏は言う。以前、同グループの医療機関の患者はほぼ全員が飛び込みでの受診だったが、その後50%近くがオンラインチェックインを利用するように変化した。同氏は「こうしたテクノロジーの変化を受け入れ、実施するチームの下地が整っていた」と話す。
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