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医療分野にRPAは普及するか? 自動化技術が変える、医療事務の今と未来
医療費精算やレセプト請求のような定型的な医療事務作業は、ロボティックプロセスオートメーション(RPA)をはじめとする自動化技術が大きな効果を発揮する可能性があります。
近年、「ロボティックプロセスオートメーション」(RPA)への関心が高まっています。2019年は医療分野でもRPAのような自動化技術に注目が集まるのではないかと考え、現状と今後の可能性を考察します。
労働人口の減少、生産性向上の手段としてRPAに注目
RPAとは、これまで人間が行ってきた事務作業の一部を、ロボットを使って自動化する取り組みだといえます。ロボットというとSF(サイエンスフィクション)映画に登場する存在のようなイメージを抱くかもしれませんが、ここでいうロボットはそのような見た目ではありません。RPAの「ロボット」はPCでソフトウェア的に処理される仕組み、もしくは概念を示す言葉です。
少子高齢化が進むわが国において現在、労働人口の減少が大きな社会問題となっています。その解決策として、労働力の有効活用や生産性を向上させるための方策が議論されています。このような背景の下、従来よりも少ない人数で生産力を高めるための手段としてRPAが注目されているのです。
RPAの自動化レベルは3段階に分類可能
総務省Webサイト「RPA(働き方改革:業務自動化による生産性向上)」によると、RPAには3段階の自動化レベルがあり、現在のRPAの多くはクラス1というレベルで定型業務向けだと定義されています。
- クラス1:その都度考えて判断する必要がある作業は難しい。
- クラス2:人工知能(AI)技術を活用することで、非定型業務でも一部は自動化できる。
- クラス3:より高度なAI技術を活用することで、業務プロセスの分析や改善だけでなく意思決定までを自動化できる。
RPAは今のところクラス1の普及が始まっている段階です。ホワイトカラーがこれまで担ってきた大量の事務作業を処理するのに適していると見込んで、金融機関などの提携業務が多い企業がRPAを先行的に導入しています。ソフトウェアロボットは一度覚えた方法を正確に間違いなく、24時間365日実行できます。ロボットはいくら働いても「疲れた、休みをくれ」とは言いません。システムが壊れない限り、黙々と同じ作業を続けることが可能です。
参考
「RPA(働き方改革:業務自動化による生産性向上)」(総務省)
自動精算機で入力間違いや釣り銭間違いを防止
医療業界でも、RPAをはじめとする自動化技術を採用した事例が登場しています。例えば、電子カルテおよびレセコンと連携して、自動的に精算業務を実行する自動精算機が代表的です。自動精算機は大病院から診療所まで徐々に導入が進んでいます。
従来は医療事務が、電子カルテに入力された情報をレセコンで診療報酬点数に置き換え、患者の自己負担額を計算していました。ほとんどの医療機関は、受付担当者がその金額を見ながらレジスターに入力し、精算業務をしていました。電子カルテに連動した自動精算機を導入すると、これらの業務を自動化できます。患者に自ら診察券を入れてもらうだけで、その日の負担額を表示したり、お釣りを自動で出したりすることが可能になります。精算額の入力間違いや釣り銭の渡し間違いは起きにくくなります。
RPAで自動的に統計データを作成 レセプト点検/請求にも活用可能か
多くの医療機関は定期的に「Microsoft Excel」などの表計算ソフトウェアを使って、経営に必要な統計データを算出しています。この業務を人間が担当する場合、電子カルテからCSV形式でデータを抽出し、表計算ソフトウェアで加工し、グラフにするという作業の流れになります。この業務でRPAを使うことで、毎日自動的に定型フォーマットで欲しいデータのグラフを作成可能になります。この機能は病院経営において非常に求められており、電子カルテを導入する要求仕様書(RFP)に「自動的に統計データが算出できること」という項目を盛り込む医療機関は少なくありません。
レセプト請求業務(注1)においても、RPAを活用できる可能性があります。毎月レセプト請求をする時期になると、自動的にレセプトチェックを実行し、問題点を修正し、正しいレセプトを作成し、それを決まった時期に請求する――こうした一連のプロセスを自動化できるようになるでしょう。この作業にAI技術の支援が加われば、過去のレセプトの返戻・査定状況を分析し、地域性や個別性を配慮した対処が可能になるかもしれません。ただしこの事象については、まだ具体的なことは始まっていませんので、あくまで筆者の希望として挙げておきます。
※注1:医療機関の医療事務がレセプト(診療報酬明細書)を作成、点検し、国民健康保険などの公的医療保険の保険者に提出して診療報酬を請求する仕事。
定期的な書類作成にもRPAを
医療現場は日々、定型的な書類を大量に発行しています。診断書、診療情報提供書、訪問看護指示書、療養計画書、健康保険傷病手当金支給申請書、障害者手帳、年金手帳など、挙げれば切りがありません。これらの書類もRPAによって電子カルテのデータを加工して、自動的に作成できれば、現場は大幅な業務の効率化が図れる可能性があります。
このようにRPAをはじめとする自動化技術は、医療分野でも十分に活用可能な技術です。現場で日々の作業を見て非効率に感じる部分こそ、自動化技術が得意とするところです。自動化技術に事務作業を担わせ、人は人にしかできない業務分野に集中できる体制が整えば、医療の質の向上に資するはずです。医療分野の自動化技術の進展に期待します。
次回は、「在宅分野における多職種間コミュニケーション」について解説します。
著者紹介
大西大輔(おおにし・だいすけ)MICTコンサルティング
一橋大学大学院経営学修士(MBA)コース修了。医療コンサルティング大手に入社。2002年に医療IT機器の常設展示場「MEDiPlaza」を立ち上げ、企画運営、スタッフ指導、拠点管理などを担当。2016年10月に医療ICT専門コンサルタントとして独立し、MICTコンサルティングを設立。医療機関向けシステムの開発アドバイス、導入アドバイス、医療IT人材の育成などを行う。過去2000件を超える医療機関へのシステム導入の実績から、公的団体を中心に講演を多数実施している。現在、医療事務・クラーク専門学校の非常勤講師も務めている。
このコラムについて
医療機関のIT化は他の業界に比べて5~10年は遅れているといわれます。また、医療現場でIT製品を導入する際、スタッフから不安の声が上がるなど、多かれ少なかれ障害が発生します。なぜ、医療現場にITが浸透しないのか。その理由を探るとともに、解決策を考えていきます。
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