病院内の部門システム間や医療施設間の医療情報の共有化には、情報の標準化と相互運用性が重要になる。そのためにはメッセージ交換の標準規格が広く普及する必要がある。
医療分野のICT化を推進する上では、医療情報システムが取り扱う情報をより広範囲に活用するための「情報の標準化」が重要となる。現在、さまざまな団体によって医療分野における標準規格が開発されている。中でも多くの種類の情報を取り扱う規格が「HL7」(Health Level Seven)だ。本稿では、日本HL7協会 情報教育委員会 委員長を務める、高坂 定氏(メディック総研)がHL7の概要を解説する(編集部)。
HL7は、患者管理やオーダー、会計、検査報告、予約、患者紹介および看護ケア、人事管理など広範囲の医療情報を交換するメッセージ形式の標準規格である。HL7の「Level Seven」という名前は、国際標準化機構(ISO)の開放型システム間相互接続(OSI)通信モデルの最上位層(7層)の「アプリケーション層」に由来する。アプリケーション層では、交換されるデータやその交換タイミング、アプリケーションに特定のエラー通信などを定義する。HL7では、このアプリケーション層のセキュリティチェックや参加者の識別、有効性チェック、交換メカニズムなどを調整し、構造化データ交換などの機能をサポートしている。
HL7規格は、医療情報の標準規格の開発やその普及促進を目的とする団体「HL7協会」によって開発されている。HL7協会は1997年に設立された非営利ボランティア団体。その本部は米国ミシガン州アナーバーにあり、HL7協会は米国規格協会(ANSI)の医療分野における認定標準開発団体でもある。また、HL7の国際支部は英国やカナダ、ドイツ、韓国、オーストラリア、日本など34地域にある。現在、HL7協会にはTC(技術委員会)とSIG(分科会)など54のグループがあり、標準規格の研究や開発、普及を進めている(関連記事:医療のIT化推進の鍵を握るのは誰か?)。
HL7規格は「HL7 Version 2.x」(以下、HL7 V2.x)と「HL7 Version 3」(以下、HL7 V3)の2つに大別される。
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