医療のIT化を推進する有識者が医療の現場で使われているIT用語を解説する本連載。今回は、医師の診療行為を支援する最も身近なITシステム「電子カルテ」を取り上げる。
現在、医療分野ではさまざまなITシステムが導入され、実に多くのIT関連用語が存在する。本連載では医療の現場で使われているそうしたIT用語について、医療のIT化を推進している有識者が解説していく。今回は、医師の本業である診察行為を支援する「電子カルテ」を取り上げる。
1999年4月に厚生省(当時)から「診療録等の電子媒体による保存について」の通知が発行され、カルテ情報の電子保存が認められた。その後、2001年12月に示された「保健医療分野の情報化にむけてのグランドデザイン」によって、電子カルテの普及が始まったといえる。しかし、政府主導の導入推進策などが展開されてきたが、普及率は決して高いとはいえない。
本稿では、20年以上前から自ら電子カルテを開発・活用してきた開業医である大橋克洋氏が、現場の医師の立場から見た電子カルテの定義やその導入メリット、今後のシステム像などを紹介する。
電子カルテとは、基本的には読んで字のごとく「コンピュータで読み書き可能な診療録」を指す。しかし、ワープロのように単に診療録を電子化するだけではその意味を成さない。忙しい医療の現場において「いかにユーザーの負担を軽減し、正確な診察業務をサポートできるか」が重要なポイントだ。医師が診察中、カルテ画面ばかりを見て患者の顔を見てくれないような電子カルテでは、全くの本末転倒である。プロの道具であるなら、仕事を邪魔しない使い勝手でなければならない。
紙カルテと比較した電子カルテの導入メリットを幾つか挙げていこう。
「紙カルテはパラパラめくれるが、電子カルテではそれができず不便だ」という声もある。しかし、電子カルテにはさまざまな手段でカルテ情報の閲覧性や検索性を向上させる工夫を施すことができる。過去カルテの参照については、診療歴要点の箇条書きを一画面に表示して全体を把握することもできる。また、ある文言(キーワード)を含むカルテを抽出したい場合、よほど複雑な検索や膨大な量のカルテを対象とする検索でなければ、瞬時あるいは数秒のうちに検索結果をリストアップしてくれる。さらに、さまざまな分析視点で関連データを組み合わせた検索や表示なども可能だ。その他にも、指定した定型リポートの形式に沿って、検査データや処方などのデータを反映させて表示することも容易にできる。これらも紙カルテではできないことだ。
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