2010年2月にTechTargetジャパン「医療IT」専門メディアが開設してから1年。これまでの公開記事を踏まえ、今後医療のIT化で注目すべき3つのトピックを紹介する。
医療機関で活用されている情報システムにはさまざまな種類があります。電子カルテや医用画像管理システム(PACS)、オーダリングシステム、医事会計システム、往診自動受付・予約システム、医療過誤防止・リスク管理システムなど、多岐にわたります。また、医療機関の担当者は、自院の規模や対応診療科目、期待する効果や目的、予算などに応じて、その導入を慎重に検討されていることでしょう。
その中でも、政府のIT化戦略や法制度の改正などを考慮すると、より多くの導入が見込まれる分野があります。本稿ではこれまで公開してきた記事を踏まえ、その中から今後特に注目されるであろう3つのトピックを紹介します。
日本政府のIT戦略本部は2010年5月、国家のIT戦略である「新情報通信技術戦略」を発表しました。この戦略の3つの重点項目の中には「地域の絆(きずな)の再生」が盛り込まれています。また、その具体的な取り組みとして「2015年までに“シームレスな地域連携医療”を実現すること」が掲げられています。
政府が掲げる地域連携医療とは「情報通信技術を活用した、地域医療支援病院を中心とする地域連携クリティカルパスや、医療・介護などの施設間におけるデータの共用などを可能にする体制」のことを指しています。今後、医療機関での地域医療連携ネットワークを活用するシステムの導入が増えると考えられます。また、2010年度から全国94カ所の二次医療圏を対象とする「地域医療再生基金」を活用した情報連携基盤の構築なども各地で進められています。
例えば、NTTデータは2010年7月、千葉県立東金病院と共同開発した「慢性疾病管理プログラム」が千葉県の地域医療連携ネットワーク「わかしお医療ネットワーク」において運用を開始したことを発表しています。このプログラムは、患者ごとに設定された診療指針や検査情報などを地域の病院と診療所間で共有し、患者の疾病の状態に応じて処置の必要性をシステムが自動的に検知することで、適切な時期に適切な治療を提供するというものです。
さらに、学会研究会jpは2010年11月、遠隔画像診断システムを提供する京都プロメドと提携し、地域の各病院における医療機器の稼働状況を管理する「地域医療連携室」サービスを学会研究会jpのサイト内で開始しました。地域医療連携室では、病院が持つ高度な医療機器の稼働スケジュールを地域の診療所などの医療機関に公開し、その検査予約や専門家による診断、結果配信などを情報共有することが可能です。
その他にも、2010年は各ベンダーの地域医療連携ソリューション事業への参入が相次いで発表されました。NEC、三洋電機、シーエスアイの3社は2010年6月に同市場での協業を、日本オラクルは2010年10月に同市場への参入をそれぞれ発表しています。複数の医療機関の情報連携では各ベンダーのシステムを連携させる必要があり、今後はベンダー間の協業も広がっていくと考えられます。
厚生労働省は2010年2月、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第4.1版」を発表しました。これにより「民間のデータセンター事業者が契約に基づき、医療機関の保有データの外部保存を受託する」ことが可能になりました。機密性が高い利用情報の外部保存が可能になる「医療クラウド」が実用化されれば、複雑なシステムの運用負荷を軽減し、本来の業務である診療行為に専念できるというメリットがあります。また、地域医療連携を促進する観点からも医療クラウドに対する必然性や期待が高まっているといえるでしょう。
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