“専用”と“汎用”のクラウド比較【前編】
「ニッチクラウド」と「ハイパースケールクラウド」の4つの違いとは?
比較的小規模な「ニッチクラウド」と大規模な「ハイパースケールクラウド」にはそれぞれメリットとデメリットがある。どちらのクラウドが適しているかを判断するための4つのポイントを紹介する。
「パブリッククラウド」という用語で、多数のサービスを提供する大規模なクラウドベンダーをイメージする人は少なくない。しかしあまり知られていないもう一つのタイプのパブリッククラウド「ニッチクラウド」もある。ニッチクラウドは、特定の用途で利用するとより効果的だ。
「専用クラウド」や「単一目的クラウド」とも呼ばれるニッチクラウドは、単一のサービス、あるいは一つの用途に適したサービス群の提供に特化している。これらのクラウドは「Amazon Web Services」(AWS)や「Microsoft Azure」(Azure)、「Google Cloud Platform」(GCP)など、幅広い用途に対して汎用(はんよう)的に数多くのサービスを提供するハイパースケール(大規模)クラウドよりも自社のニーズに合っている場合がある。
クラウド戦略を策定する際、企業のIT管理者や開発者は、さまざまなニーズを網羅するハイパースケールクラウドか、特定のニーズを満たすニッチクラウドのどちらかを選ぶ必要がある。ただしこの両方を組み合わせることもできる。
3回にわたる連載の前編に当たる本稿でまず紹介するのは、ニッチクラウドとハイパースケールクラウドのどちらを選ぶかを判断するためのポイントだ。
パブリッククラウドの選択を一様に左右する単純な基準はない。企業はクラウドで管理するシステムとデータに適した選択肢を検討する際、各クラウドサービスの特性を詳細に知る必要がある。ニッチクラウドとハイパースケールクラウドを選ぶ際に重要になる4つの主要な要素を以下に示す。
1.コスト
ハイパースケールクラウドは世界規模で運営されており、非常に大きい。そのため価格競争では有利だ。複数のアプリケーションの運用を1つのパブリッククラウドに統合すれば、データ転送料金を最小限に抑え、クラウド全体のコストを削減できる可能性がある。
ただしハイパースケールクラウドが安価とは限らない。ニッチクラウドは用途や目的に合わせてクラウドストレージのような特定のサービスの運用を最適化できるため、よりコストを削減できる可能性がある。
2.機能
ニッチクラウドは特定の用途や業界に適した機能やサービスを提供する傾向がある。例えばTalendやInformaticaなどデータ分析を専門とするクラウドベンダーは、データ分析の分野において多岐にわたる機能やサービスを提供している。
大規模なクラウドベンダーであれば、Azureの「Azure HDInsight」やAWSの「Amazon Elasticsearch Service」などのデータ分析サービスがある。しかしこれらは膨大な製品ラインアップのごく一部にすぎないため、ユーザー企業の期待に応えるものではない場合がある。
3.信頼性と可用性
AWS、Azure、GCPなどのハイパースケールクラウドは、世界中にデータセンターを配置している。そのためデータを複数の地域のデータセンターに保存したり、複数の地域のデータセンターにまたがるシステム構成にしたりすることで、冗長性を確保し、高い信頼性と可用性を得られる。
ニッチクラウドは、ハイパースケールクラウドで確保できる冗長性のレベルには及ばないが、高レベルな信頼性と可用性を提供している。これらのニッチクラウドサービスのアップタイム(システムが稼働している状態の時間)は、企業の一般的なセキュリティ要件を十分に満たしている。
ただし金融系のアプリケーションのようにダウンタイムが発生した場合に重大な混乱を引き起こす可能性が高いシステムは利用する際に注意が必要だ。非常に高いレベルの可用性を必要とする場合には、ハイパースケールクラウドの方が適している。
4.継続性
ハイパースケールクラウドがすぐに廃業するとは考えにくい。他社に買収される可能性も低い。そのためクラウドのユーザーが、望まない変化への順応を強いられる可能性も低い。
しかしニッチクラウドはそうはいかない。データセンターや事業者としての規模が小さいことから、システム障害の影響を受けやすい傾向にあり、買収される可能性もある。クラウドストレージサービスの専業ベンダーだったNirvanixは、2013年に突然廃業した。2016年のAWSによるCloud9の買収もその一例だ。Cloud9のサービスは、AWSが提供するサービス群の一部として現在でも利用可能だ。2019年にはAWSがクラウド移行ツールベンダーのCloudEndureを買収した。CloudEndureが提供していたクラウド移行ツールの機能はAWSの機能として現在利用可能だ。しかし今後AWS以外のパブリッククラウドでどの程度利用できる状態になるかは不明だ。
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“専用”と“汎用”のクラウド比較
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