必要だからこそ自動化技術に取り組む好機
コロナ禍で「AIをサプライチェーンに使う」企業が急増か?
新型コロナウイルス感染症の世界的流行に直面し、市場は混乱している。サプライチェーンの管理を安定させ、少しでも正確な予測を立てるためには人工知能(AI)技術が役に立つ可能性がある。それはなぜか。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(感染症の世界的な流行)が発生し、企業は制御できない予測不能な変化に対処しなければならなくなった。市場で生き残るためには、機械学習をはじめとする人工知能(AI)技術を活用したデータ分析ツールを使って、変化に追い付き適応する必要がある。
ほとんど全ての業種が新型コロナウイルス感染症による影響を受けたが、製造業のサプライチェーンを抱える業種が特に大きな被害を受けた。製造業者が工場を閉鎖し、小売業者も店を閉じたからだ。サプライチェーン予測のためのAI技術は、刻々と変化する状況に迅速に適応し、パンデミックを乗り切るのに役立つ可能性がある。
サプライチェーンにAI技術を組み込むメリット
「サプライチェーン向けのAI技術によって、新しいデータに素早く適応できる」。そう語るのは、FICO(Fair Isaac)の意思決定管理ゼネラルマネジャーであるビル・ウェイド氏だ。同社はクレジットスコア(信用偏差値)でよく知られるデータ分析会社である。
機械学習を使用することで、予測不能な時期にも予測を立てることができる。少量の実データまたは仮想データに基づいて需要予測モデルやロジスティクスモデルを作成することも可能だ。ただし「そのためには人の手で機械学習モデルを直接操作し、事前にデータと予測を入力し、モデルが提示する数百個または数千個の潜在的な未来予測から選択する必要がある」とウェイド氏は語る。
工場が閉鎖されたり、小売業者の製品の一部のみが販売されたりする状況など、仮説のシナリオを作成することで、企業は最悪のプランを含む最も可能性の高いプランを立てられる。パンデミックの真っただ中で収集した需要データ、といった少量のデータを追加するだけで、未来予測にある程度の予見を追加できる。
例えば過去2週間に基づくモデルならば、トイレットペーパーの需要が40%急増する一方で、新しい服の需要はほぼ同率で急減する、といった予測を立てられ、生産と配送ルートを調整できるようになる。そして企業は、多数の仮説シナリオを選択して実行できる。例えば「パンデミックが3カ月で収束し、衣類が通常の需要レベルに戻るシナリオ」などだ。このモデルは少なくとも、その状況が発生した場合に取るべき手順を教えてくれる。
これらの予測には「人の直感に加えて、コンピュータの膨大な処理能力が必要だ」とウェイド氏は指摘。「部分的にでも予測不能なことを予測できるようになれば、毎時または毎日の変化に対処しやすくなる」と説明する。
単に古いデータを取り込み、それを使用して将来を予測する静的モデルはあまり役に立たないとウェイド氏は指摘する。例えば3カ月前の出来事に基づいて予測する場合、これらの数値を非常に迅速に処理できる機械学習モデルがない限り分析は不可能だ」(同氏)
仮想アシスタントベンダーAvaamoのCEOであるラム・メノン氏によると、サプライチェーンのニーズに対処するために、機械学習だけでなく仮想アシスタントやチャットbotの活用にも注力している企業は少なくない。「注文状況や請求書の支払い時期など、フロントエンドの問題を処理するために、企業はAI技術と自動化にますます注目するようになる」とメノン氏は語る。
サプライチェーン向けAIの未来
Coca-ColaやProcter & Gamble(P&G)といった最大規模のサプライチェーンを持つ大手メーカーは「サプライチェーンには流動性があるという事実に慣れている」とウェイド氏は語る。こうした企業以外では、サプライチェーンでAI技術を使用している企業は比較的少ないと同氏は指摘する。
とはいえパンデミックに対処するために、サプライチェーンを含むさまざまな部門でより頻繁にAI技術を使用するようになることが予想される。「今回の事態は、この規模の健康危機(生命や健康に広範かつ重大な危害が生じる緊急事態)に備える準備ができていない企業の数を示した」とウェイド氏は述べる。「現在の危機をいったん乗り越えたら、人々は『二度と巻き込まれたくない』と言うはずだ」(同氏)
在庫管理ソフトウェアのベンダーであるSmart SKUs(「INTURN」の名称で事業展開)のCEO兼共同創設者、ロネン・ラザール氏は、ウェイド氏の考えに同意する。ラザール氏によると多くの業界で、サプライチェーンの変動性が通常の予測可能なレベルを超えている。企業はサプライチェーンを管理するために、今までとは違う環境に順応できるデジタルツールが必要であることを認識しており、INTURNは過去数週間で数カ月分以上の忙しさだったという。「イノベーションは必要に駆られて進むことがある。これはそのような状況だった」と同氏は語る。
メノン氏によると、Avaamoも多忙だった。同社のユーザー企業は新型コロナウイルス感染症に関する多数の質問に答えられる無料の仮想アシスタントをリリースした。そのユーザー企業はパンデミックの間、仮想アシスタント技術をさらに提供するようAvaamoに要求した。
「企業はAI技術と自動化に突入し、パンデミックの最中には必要に応じてこれらの技術に目を向けている。パンデミック後もその状態を継続する可能性がある」とメノン氏は言う。「この機会を逃したら、同じ機会は二度と戻ってこないだろう。今は自動化のトレンドにとって非常に重要な時期だ」(同氏)
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[富士ソフト株式会社] 受注業務は既に変革のステージ 出遅れて競争力を失わないためのDX戦略 -
市場調査・トレンド
[富士ソフト株式会社] 受注業務でありがち 「今は困っていない」と見直しを先送りにすることの弊害 -
製品資料
[富士ソフト株式会社] 「B2B EC」選定を製品比較から始めると迷走する理由 -
技術文書・技術解説
[SB C&S株式会社] 「Everpure FlashArray」技術詳細解説資料:概要から認証、サイジングまで解説 -
市場調査・トレンド
[セコムトラストシステムズ株式会社] EDR導入を成功に導くロードマップ:選定/稟議/運用のつまずきを防ぐコツ
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
2
生成AIが普及しても「技術書」を手放せないエンジニアの本音
-
3
IT業界の女性は9割が10年で消える 人材枯渇を招く“見えない壁”の正体
-
4
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
5
生成AIのルール整備が進む一方で活用は遅れがち? 日本企業のAI利用状況
-
6
脱VMwareの真実:データセンター大手がNutanixを選んだ「コスト以上の理由」
-
7
ChatGPTの「GPT」とは? 仕組みや用途など“ChatGPTの基本”を解説
-
8
積水化学工業が「SAP S/4HANA Cloud」の“全グループ導入”に踏み切った訳
-
9
使いやすさにこだわった電子カルテ「SimCLINIC T3」
-
10
どこでも通用するはずの情シス管理職が“詰む瞬間” 前もってしておくことは?
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
プログラミング不要で誰でも実現できる、ネットワーク運用管理の自動化とは
-
4
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
5
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
6
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
7
ランサムウェア攻撃“究極の対策”はこれだ
-
8
サイバー脅威「トップ50」完全解説ガイド、新たな攻撃手法に対抗するには
-
9
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
10
生成AIの活用を阻む「5つの壁」とは? AIネイティブ組織へ変革を遂げる方法
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー