パンデミックが招くサプライチェーンへの影響【前編】
コロナ禍の“トイレットペーパーパニック”を「ブルウィップ効果」で説明する
新型コロナウイルス感染症の拡大によって世界各地で買いだめの問題が生じている。その結果、一部の商品の流通に「ブルウィップ効果」が生じる可能性があるという。どういうことなのか。
専門家は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大が広範囲に引き起こす「ブルウィップ効果」に企業が備える必要性を警告している。ブルウィップ効果とは、需要の変動がサプライチェーンの上流に上るにつれて増幅されることだ。
パンデミック(感染症の世界的な流行)への対処に必要となるさまざまな商品だけでなく、トイレットペーパーのようにパンデミックとは明白な関係がない日用品でさえ売り上げが大幅に伸び、サプライチェーンを大混乱に陥れている。世界中の店の商品棚が空になり、中には買いだめに走る客のパニックをなだめるために配給制を導入する店舗もある。
消費者の買いだめ行動は、短期的には売り上げ増加に直結する可能性がある。だがメーカーからサプライヤーに至るサプライチェーンでは、トイレットペーパー、消毒液、漂白剤といった生活必需品の原材料を過剰生産してしまうという現実的な問題を生み出す恐れがある。
“トイレットペーパーパニック”から見える「ブルウィップ効果」
「これはブルウィップ効果の生きた研究事例だ」。ジョンキャロル大学(John Carroll University)で非常勤教授を務めるビジネスストラテジスト、マイク・グルダー氏はそう話す。消費者が商品棚を空にすると「価格が吊り上がり、メーカーは生産量を最大限に高めようと躍起になる」とマイク氏は説明。「次にサプライチェーン全体を不規則に襲う衝撃は予測でき、最終的には多大な供給過剰に陥る」と語る。
需要の予測不能な変化を経験する商品の典型例といえばトイレットペーパーだ。パニックに陥った消費者は、在庫を確保するためにトイレットペーパーを買いだめし、基本的には自宅に保管する。商品棚が空になった店の様子がニュースで流れれば、同じくパニックに陥った消費者が駆け込み、消費量は必ずしも増えないにもかかわらず、購入量が増える。「人がトイレに行く頻度は変わらない。6カ月分のトイレットペーパーを買った人は、6カ月間は新たな購入をしない」(グルダー氏)
こうした事態が起きると、企業はトイレットペーパーの在庫を確保し、パルプなどの原料、梱包(こんぽう)材、木材在庫を大量に管理しなければならないリスクに直面する。
買いだめにおける販売数と消費数
買いだめという社会現象は、ERP(統合業務)システムがサプライチェーン全体の発注規模を自動調整するきっかけにつながるだろう。こうした変化は、購買行動の変化を反映するだけのものもあれば、消費の変化を反映するものもある。
トイレットペーパーのような日用品の使用頻度が急激に増えることはまずない。だが消毒液やマスクのような、パンデミック対策に直結する商品について、サプライチェーンの管理者が今後の使用量を予測するのは難しい。新型コロナウイルス感染症の恐怖が広がる中、消毒液やマスクのような商品の消費レベルはしばらくの間増える可能性がある。
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