CIOは答えを見つけられるか
「ERPデジタルトランスフォーメーション」の成否を分ける7つの重要問題
本稿では、ERPデジタルトランスフォーメーションに乗り出すに当たって答えを見つけなければならない重要な疑問をまとめた。変革が自社のビジネス目標に沿っているかどうかを確認してほしい。
いよいよ最高情報責任者(CIO)がERP(統合業務)システムを通じたデジタルトランスフォーメーション(以下、ERPデジタルトランスフォーメーション)に乗り出す時期のようだ。デジタルトランスフォーメーションは、デジタル時代に適応するために、ビジネスや企業風土を変革することを指す。
テクノロジーはここ数年で大きく進化している。ERPパッケージやクラウドERP、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)など、新たなテクノロジーの進歩によって、企業業績の飛躍的な向上が可能になっている。これまでのERPシステム導入は、テクノロジーをアップグレードして、バックオフィスのシステムを置き換えるか、効率を高めることに主な重点が置かれていた。これに対して、ERPデジタルトランスフォーメーションでは、新しいビジネスモデルを作り出すことが重視される。
ERPデジタルトランスフォーメーションがもたらし得る成果は非常に大きい。だが明確な戦略と指針がなければ、テクノロジーの多数のオプションに混乱し、圧倒される可能性がある。さらに、これまでのERPシステム導入と同様、ERPデジタルトランスフォーメーションの成功には、テクノロジー戦略と包括的ビジネス戦略をそろえることが不可欠だ。
本稿で挙げる7つの疑問の答えを見つければ、成功を確実にするために必要な連携を生み出すのに役立つ可能性がある。
1.自社が新しいテクノロジーから得たいと考えていることは何か
ERPデジタルトランスフォーメーションとは、比較的単純なテクノロジーの置き換えにはとどまらない。少なくとも、それ以上のことをする必要がある。ピンとこない人は必要なテクノロジーについて具体的に考える前に、そのテクノロジーによって自社をどのように変革するかの明確なビジョンを持つことが重要だ。
この疑問は、「~しなければならないから」「自社の古いシステムが期待通りに機能しないから」といったごく単純な答えでは済まない可能性がある。単純な答えは出発点としては優れている。だがERPデジタルトランスフォーメーションでは、もっと大きな改善を実現すべきだ。自社では、収益の大幅な増加や効率の向上、在庫の削減といった戦略的メリットの実現を求めているだろうか。
2.新しいシステムやテクノロジーに順応するために必要な組織の変化とは
ERPデジタルトランスフォーメーションを遂行する理由を把握したら、次は戦略のパラメーターを定義することが重要になる。例えば、戦略の一環として、購買部門や人事部門内での業務を特定の組織に集約するシェアードサービスを実現するために、部門内の再編成をすべきかどうかといったことだ。
3.組織の変化が必要だとして、それが現時点で実現可能か
戦略をサポートするために必要な変化を定義したら、次はその変化に対する自社の真のリスク許容度を評価する。変化の程度が大きいほど、組織変化の管理やプロジェクト全体のリスクは高くなる。そのため、ERPデジタルトランスフォーメーションに取り組む前に効果的なリスク軽減プランを立てておきたい。
変化の大きさとそれに付随するリスクを把握したら、戦略全体の見直しが必要になることもある。
4.変革をサポートするのに必要な変化を管理するための戦略とは
従業員が変化の影響を受ける可能性は、会社が考える以上に高いだろう。変化の影響は、組織の大規模な再編成から、従業員の日常業務の細かい部分まで、多岐にわたる。ERPデジタルトランスフォーメーションが全社規模での変化を生み出す可能性もある。
変化が従業員にどのような影響を及ぼすかを明らかにして、自社に合わせた組織変化に対する戦略と計画の概要を定めておきたい。後に必要となるコミュニケーションとトレーニングの計画に、変化によって生じる影響の詳細を含めることで、変化に備える時間を用意するのだ。
5.変革をサポートするのに最適なテクノロジーは何か
これまで挙げた疑問の答えを見つける前に具体的なテクノロジーを直感的に選んでしまう企業は珍しくない。だが、それは間違っている。テクノロジーはビジネスや組織の変化を実現する。その逆ではない。
テクノロジーを選ぶ前に、これまでの疑問に対する答えを理解すればするほど、ERPデジタルトランスフォーメーションの全体戦略が大局的な目標に沿うようになるだろう。
6.一連の疑問への答えに対処する戦略と計画はどのようなものか
ERPシステムを含むテクノロジー導入の全体的な戦略と計画を策定する上で、ここまでの全ての答えを参考にする必要がある。プロジェクトや予算の遅れの原因は通常、テクノロジーではなく、人材とプロセスの問題だ。プロジェクトの全体像における個別の人の行動が、自社の計画にどのように影響するかを明らかにしておこう。
またERPデジタルトランスフォーメーションの全体的な戦略と計画を、全社の目標とニーズに確実にそろえることも大切だ。実際、ERPシステムの導入戦略が自社の目標や想定に合っていないケースは無数にある。
7.変革に向けたビジネスケースはどのようなものか
この疑問には、通常、プロジェクトの計画とソフトウェア評価の段階全体を通して答えることになる。だが、ROI(投資対効果)の予測など、ERPデジタルトランスフォーメーションに乗り出す前にビジネスケースを確定しておくことが重要になる。そうすれば、社内の期待値の管理に役立ち、チームが変革に優先順位を付けやすくなる。またプロジェクトのパラメーターが変化する場合に、ガバナンスフレームワークも提供できる。優れたビジネスケースは、ERPデジタルトランスフォーメーションの成功に必要な要素として過小評価されているものの一つだ。
ここで紹介した疑問の一覧には、ERPデジタルトランスフォーメーションの早い段階で答えを見つける必要があるもの全てを含めたわけではない。ただし最も重要な部分は取り上げている。これらの疑問の明確な答えを見つけることが、優れた出発点になる。
答えがまだ見つからないのであれば、時間を取って事前に明らかにすることが重要だ。そうすれば、時間やコストを削減し、長期的なリスクを防いで、成功への絶好のチャンスを確実につかむことができる。
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