企業がERPシステムの導入効果を引き出すには、技術面だけでなく変革を推進する「チェンジマネジメント」や協働など、包括的な専門知識を備えた次世代の人材を育成する必要がある。
IT関連の人材不足が、デジタルトランスフォーメーション(デジタル時代に適応するためにビジネスや企業風土を変革すること)を妨げる障害の一つになっている。ERP(企業資源計画)分野も例外ではなく、必要な技術スキルを備えた人材を見つけるのは難しい。だが現代のERPシステムにおいては、変革を効率良く進めるための「チェンジマネジメント」や協働などに関するソフトスキル(非定型なスキル)不足の方が課題となっている。
空席になった職務を埋めるのに苦戦する企業は少なくない。人材サービス企業ManpowerGroupのレポート「2018 Talent Shortage Survey」(2018年版人材不足調査)によると、全世界の企業の45%が必要な人材を確保できていないという。この数値は2017年の40%から増加しており、ここ10年で最高の値だ。中でも、IT関連の人材確保は特に難しい。ManpowerGroupの2016〜2017年版レポートによると、米国だけでIT関連の求人が60万件に上るという。コンピュータサイエンス教育の支援をする非営利団体Code.orgの調査では、2020年までにコンピューティング関連の求人数は、求職者数に比べて100万人以上多くなると予測する。
ERPシステムの基盤はオンプレミスからクラウドへと移っている。それに伴い企業が確保すべきERPスキルの種類が変化している。ネットワークとサーバの専門家や、具体的なERPシステムに精通する専門性の高いプログラマーを育成することは必要ではない。企業は運用の最適化、チェンジマネジメント、業務プロセスの統合と変更など、ビジネスに基づいた専門知識を多く持つIT専門家を採用し、チームを補強する必要がある。
SAP製品の開発に利用するプログラミング言語「ABAP」(Advanced Business Application Programming)やシステム管理、業務職のスキルなど、核となる専門知識が求められることは変わらない。だが「こうしたスキルのいずれかに的を絞って習得するだけでは、十分とはいえない」と、中規模企業向けのSAP製品の関連サービスを提供するitelligenceで、配送部門のシニアバイスプレジデントを務めるダルシャン・シャー氏は話す。市場で起きているパラダイムシフトによって、担当者は技術スキルと業務スキルの両方を兼ね備えなければならなくなっている。「もはやどちらか一方では足りない」(シャー氏)
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