コスト削減や効率化を追求するSystems of Record(SoR)と、企業を変えて新しいビジネスチャンスを生み出すSystems of Engagement(SoE)。この2つを推進する「バイモーダルITモデル」とは。
「バイモーダルITモデル」では、ITは2つの異なるモードに分割される。Systems of Record(SoR)としてのモード1と、Systems of Engagement(SoE)としてのモード2だ。ではITが分割されるとコストも2倍に増えるのだろうか。
モード1の構造は、安定性と信頼性が求められるレガシーハードウェアと中核的なバックエンドソフトウェアスタックで構成され、これは一般的に、従来型のIT運用を通じて達成される。モード2は高速で非直線的なアジャイル業務で構成され、一般的には会社にとっての新しいチャンスをもたらす。2つの独立したチームが同時に機能して、その2種類のシステムの最適化に当たる。バイモーダルIT戦略の長期的な価値についてはITエキスパートの間で論議があるものの、この概念は、システム開発の中核的な前提、すなわち必ずしも1つで全てに対応できるとは限らないという前提を追認したものだ。
サイロの解消や人材と技術の最適化を図るこの時代にあって、バイモーダルITでは新旧の間の壁が制度化され、組織が予想せず、予算割り当ても行っていないコストが発生する。そのような見過ごされたコストは、バイモーダルITの戦略を台無しにしかねない。
組織では、バイモーダルIT環境のためのハードウェアおよびソフトウェアスキルセットを育成あるいは獲得するために必要な投資が見過ごされがちだ。新しいITプロフェッショナルは、メインフレームのような従来型のハードウェアプラットフォームに関する専門知識をほとんど持っていない。同様に、新しい開発者はC++、Java、HTML、Python、PHPのことをほとんど知らず、メインフレームOSに使われているCOBOLやジョブ制御言語(JCL)などのスクリプトを扱う年配プログラマーの代替を務めることができない。モード1では、GoやSwiftといった新興の言語に機会を求める人材の獲得は難しい。
企業は割増給与を支払ってスキルを持った従業員を獲得したり、つなぎ留めたりすることもできるが、金銭だけではそれほど長期的な動機付けにはならない。横断的な研修を行って既存の従業員に両方のモードを担当させることも可能だが、研修は予想が付きにくく、従業員の職務が変わったり退社したりすれば繰り返しコストが発生する。業務の外部委託は、少なくともレベルの低いタスクの場合はもう1つの選択肢となり得るが、一部のプロジェクト管理や知的財産は社外に移転される。
たとえ適切なスキルが存在していたとしても、既存の従業員の構成ではバイモーダルITが現実的ではない場合もある。すなわち、バイモーダルITモデルにおける別々の2つのITデリバリグループを支えられるだけのスキルを持った適切な人材が不足しているかもしれない。企業はいずれかのモード、または両方のモードについて、従業員数を増やさなければならない。
追加的な人件費に加え、バイモーダルは従業員の動機やキャリア目標に複雑な影響をもたらす。バイモーダルITに対する主な不満の1つとして、レガシーシステムと革新システムとを意図的に切り分けることによって、モード1の従業員がただシステムを稼働させ続けるだけなのに対し、モード2の従業員はビジネスの価値を増大させる興味深い業務を担うことになる。ITプロフェッショナルならどちらのチームに所属したいと思うだろうか。
バイモーダルIT戦略を採用するビジネスリーダーは一致して、モード1プロジェクトの価値の高さを強調し、それに応じた報酬をモード1の担当者に支払う努力をしなければならない。一部の組織はチーム間で定期的に担当者の入れ替えを実施する。これは横断的なスキル獲得の一助となり、チーム間のコミュニケーションや協力を促して互いの間の障壁やサイロを緩和させる。
ITデリバリのそれぞれのモードは、必然的に、異なるツール群を必要とする。メインフレーム管理プラットフォームやソフトウェア開発ツールは、クラウドリソースを使うDevOps形式の継続的な開発やデプロイには適さない。
例えば、特定のメインフレームではCOBOL、TSO I/Oスプーラ、z/OS、Interactive System Productivity Facilityのソースコード、テキストエディタおよびJCLスクリプトを必要とする。同じ会社内の分散型サービスクラスタはWindows Server 2012 OSインスタンスを搭載し、仮想化ツールのVMware ESXiやMicrosoftの管理ツールであるSystem CenterやChefといったポイントツールを使ってモニタや管理を行っている。そのシステムでホスティングされているサービスは、.NETなどの開発プラットフォームに依存する。
エンタープライズITツールの利用が無料であることはほとんどなく、特に複数のツールセットは予算上の課題となっている。全てのツールについて、取得コストとそのツールをホスティングする環境、ライフタイムを通じたメンテナンス(構成、パッチ、更新を含む)、ユーザーの継続的な研修のコストを考慮する必要がある。ベンダーによるサポート料金がかかるツールも多い。オープンソースツールでさえも時間を取られ、チームの専門知識が求められる。
ITツールセットが異なれば、バイモーダルITチーム間のコミュニケーションギャップが生じる可能性もある。
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