CIOが直面するジレンマ、シャドーIT対策とセルフサービスBIを同時に?将来のためのBIチーム制作

CIOが今後着目すべきは、中央集権型ITと分散型ITの両方をサポートするIT戦略だ。そのIT戦略を実現するための具体的なアプローチを紹介する。

2015年04月21日 15時00分 公開
[Nicole LaskowskiTechTarget]

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 最高情報責任者(CIO)は新たなジレンマを抱えている。IT戦略では、標準化と業務の持続性に重点を置くべきだろうか。それとも、実験的な取り組みに必要な柔軟性を持たせるべきだろうか。このどちらも正解とはいえない。CIOは、この両立を求められることが増えており、CIO自身もこの状況を十分認識している。

 2015年3月30日〜4月1日に開催された「Gartner Business Intelligence & Analytics Summit」で、米Gartnerのアナリストは、このジレンマをうまく制御することが可能だと参加者に語った。ただし、そのためには、一部のCIOは、現行のセルフサービス型のビジネスインテリジェンス(BI)のIT戦略を刷新して再考する必要がある。例えば、中央集権型ITと分散型ITに関するジレンマがある。それに対し、片方の要素を選ぶ考え方に固執せず、バイモーダルの(2つの流儀を持つ)IT戦略を策定して、両方の要素を取り入れる考え方にシフトするよう、GartnerのアナリストはCIOに促した。

 CIOが単一の中央集権型BIチームを組織に導入していた当時は、中央集権型IT戦略が非常に理にかなっていた。Gartnerでアナリストを務めるクルト・シュレーゲル氏によると、CIOが中央集権型BIチームを設立した目的は、ビジネスの意思決定に一貫した情報を使用できるようにすることだったという。

 だが、データやリポートに対する需要が増えるにつれ、中央集権型BIチームはビジネスの意思決定のボトルネックになっていった。「応答性の欠如により、スローガンは『single version of the truth』(唯一の真実)から『self-service』(セルフサービス)へ変わった」と、シュレーゲル氏はサミット冒頭の基調講演で語った。事業部門は、データにアクセスできるだけでなく、データを分析して独自のリポートを作成する必要もあった。これを実現したのが、新しいテクノロジーである。中でも注目すべきはクラウドだ。だが、同時に多くのCIOが言うところの「シャドーIT」(会社の許可を得ずに私物端末を業務利用すること)が生まれることになった。

 シュレーゲル氏は、この現象について否定的な見方をしているわけではない。シチズンデベロッパー(※)による開発を新たな視点で考えるべき時期にさし掛かっているかもしれないと指摘する。「このようなシチズンデベロッパーは、非公式に行動する有能な人材で、会社に変化をもたらすことができる」とシュレーゲル氏は語る。同氏が呼びかけているのは、中央集権型ITを分散することではない。CIOが中央集権型BIチームと分散型BIチームの両方を同時にサポートすることだ。

※IT部門に承認された開発環境とランタイム環境を使って、アプリケーション開発に手を出すIT部門以外の従業員のことを指す。

 「バイモーダルのIT戦略を採用する企業には2通りの運営方式が必要だ」とシュレーゲル氏は語る。1つは企業の構造やセキュリティに重点を置いたトップダウン方式のアプローチだ。シュレーゲル氏によると、このアプローチでは標準化が重要で、全従業員が共通の同じ目標を目指すパフォーマンス管理を行う。もう1つは、分析と実験に重点を置いた機敏性の高い反復型のアプローチだ。シュレーゲル氏は、このアプローチを「domain of exploration」(調査領域)と呼んでいる。このアプローチは、ビッグデータと高度な分析を利用し、失敗は許容されるだけでなく奨励される。

 バイモーダルなIT戦略には膨大なコストが掛かると考えているCIOもいるかもしれないが、実際はその逆だとシュレーゲル氏は話す。「反復型のアプローチで『流動性』と呼んでいるものは、トップダウン方式のアプローチでは『例外』だと見なされる。こうした例外を、取り除いてセルフサービス化することで、従来のBIチームが担っていたリポート作成負荷を軽減できる。」

2年後のHadoop

 参加者を交えたサミットの討論会で、シュレーゲル氏は参加者に、大量のデータを複数のマシンで分散処理する「Hadoop」が、2年後に自社の分析インフラで複雑な部分を担うようになるかどうかを問いかけた。約400人の参加者の回答はほぼ均等に分かれ、46%は同意し、41%は反対という結果になった。残りの13%は中立の立場を取った。

 米eBayでグローバルデータインフラの統括責任者を務めるデバシス・サハ氏は、「これは驚くべきことだ」と語った。サハ氏は、シュレーゲル氏の質問に反対の立場を示した参加者に対して、Hadoopがこの2年間で大きく変わったと述べ、Hadoopについて再検討するよう勧めた。Hadoopの要は大規模な分析で強力なエンジンとなる分散コンピューティング機能だと同氏は言う。

 米Nationwide InsuranceでITアーキテクチャの統括責任者の補佐を務めるタラ・ペイダー氏もサハ氏の意見に同調し、Hadoopは今後企業の分析プログラムで極めて重要な役割を果たすようになるとの見方を示す。Nationwide Insuranceでは、ワークロード分散とコスト削減のためにHadoopを採用した。これは、企業で最も多く見られるHadoopの使用例だ。同社のHadoopクラスタでは、現在17個のアクティブなプロジェクトをサポートしている。「調査、研究、分析の全てにHadoopを使用している」とペイダー氏は語る。

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