「RPAは役に立たない」を払拭? 自動化が“これなら使える”場面6選生成AI登場で効果的に?

さまざまな業務を自動化する「RPA」は、定型的な仕事を自動化する手段として期待を集めたものの、期待外れだったという声がある。しかし生成AIが登場し、自動化技術も進化している。6つの有用な場面を紹介する。

2025年03月11日 06時00分 公開
[John MooreTechTarget]

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 「業務効率を改善せよ」。IT部門がそのような指示を受けたとき、選択肢として挙がるのが定型的な反復作業の自動化だ。自動化といえば、「RPA」(ロボティックプロセスオートメーション)や「DPA」(デジタルプロセス自動化)の他、人工知能(AI)技術の活用がある。自動化ツールを使えば何ができるのか。企業のCIO(最高情報責任者)や専門家の意見を紹介する。

自動化が“使える”場面6選

1.エンドユーザーのサポート

 エンドユーザーにソフトウェアの使い方を指導したり、技術的な問題が発生したときに支援したりするのが、IT部門のサポート担当者の主な業務だ。こうした業務には、エンドユーザーからの依頼の処理、チケットの発行や管理といったさまざまな定型業務がひも付いている。

 業務自動化ツールを導入することで、このような定型業務を効率化できる。RPA、最低限のソースコードを記述する「ローコード開発ツール」、ソースコードを記述しない「ノーコード開発ツール」などを利用できる。

 AI技術を使い、エンドユーザー自身で問題を解決する「セルフサービス」の効率を向上させることも一考だ。故障したPCの修理やセキュリティ上の懸念への対処といった、エンドユーザーの問題への一次対応を自動化できる。

 「以前は『チケットを発行すれば誰かが対処する』という流れだったが、人間による対処が不要になりつつある」。クラウド監視ツール「PagerDuty」を手掛けるPagerDutyのCIOであるエリック・ジョンソン氏はこう述べる。

 ジョンソン氏によると、テキストや画像などを自動生成するAI技術「生成AI」が登場した前後で、人間を介さずに解決できたエンドユーザーサポートの割合は変化したという。生成AIが登場する前は全体の25〜50%程度だったが、登場した後は75〜80%まで上昇していると同氏は説明する。

 LLM(大規模言語モデル)、自然言語処理、「AIエージェント」(業務の流れの中でリアルタイムに意思決定し、タスクを自律的に遂行できるシステム)によって、セルフサービスの高度化が進んでいる。こうした技術について、ジョンソン氏は「IT部門だけでなく、人事や法務、調達、営業部門にも展開できる」と評価する。

2.文書作成

 資料からデータを抽出し、文書テンプレートに読み込むことで書類やレポート作成を自動化する取り組みも、業務プロセスの効率化に寄与する。調査会社Forrester Researchでバイスプレジデント兼主席アナリストを務めるクレイグ・ル・クレア氏は「自動化をどの業務に適用するかを考えているのであれば、文書作成の自動化は検討すべきだ」と述べる。

 ル・クレア氏によると、文書作成の自動化は、顧客とのコミュニケーションやデータ分析、財務会計の処理などで活用可能だ。例えば財務会計では、AI技術を使ってデータを抽出し、そうしたデータをbotがERP(統合基幹業務システム)に読み込ませて処理することが想定される。

 文書作成の自動化はこれまでも存在した技術だが、生成AIの登場によって強化された。「生成AIの助けを借りて、取得可能なデータの量や抽出可能な文書の数が増加した」とル・クレア氏は説明する。

 FinTech(金融とITの融合)企業Fiservは、RPAベンダーUiPathのRPAソフトウェアを組み合わせ、ベンダーとの契約内容からサービスレベル契約(SLA:サービスの内容や品質について合意する契約)の内容と関連データを抽出している。従来この作業は、必要なデータを見つけるために数十ページの契約書を人手で精査していた。

 FiservのエンタープライズAI駆動自動化ディレクターであるシャーブス・シャーヤ氏によると、同社はAIエージェントを使用し、契約で定めた品質基準や未達成時にベンダーが支払うことに同意した費用のデータを、契約書から抽出する実験を進めている。

3.従業員のオンボーディング

 新入社員のアカウント設定やデバイスの準備をはじめとした従業員のオンボーディングでも自動化は有用だ。この業務に役立つのが、RPAやDPA、IT資産管理システムやID管理の自動化ツールだ。

 南イリノイ大学(Southern Illinois University、以下SIU)医学部では、新しい従業員が健康管理室に入職する前に必要な資料を自動的に集める仕組みを構築した。同大学のIT管理部門を率いるジェニファー・ウォッシュバーン氏は「入職日には準備が整い、速やかにオンボーディングに進むことができる」と説明する。

4.承認作業

 SIUのバックオフィス業務には、医療従事者の資格認定や、ラボの資金調達、昇進管理に関する処理などがある。ウォッシュバーン氏によると、これらは従来、紙ベースで処理されていた。一部の業務では、PDF化した書類に情報を記入し、紙に印刷して郵送することもあった。承認作業が必要な書類の場合、紙の状態で数週間、時には数カ月をかけてオフィスからオフィスに配達員が運んでいた。

 こうした業務プロセスを電子化、自動化したことで、処理時間を短縮できた。ウォッシュバーン氏は「バックオフィス業務では、最も投資効果が得られた例だ」と述べる。

5.インシデント管理

 インシデント管理(インシデント発生時の状況把握から対処までのプロセス)を自動化し、対処にかかる時間を短縮できる。

 PagerDutyでは、潜在的な脅威を検出した場合、自社のインシデント管理製品を使用している。ジョンソン氏によると、問題を迅速に特定し、適切な担当者に作業を割り当て、可能な限り早く問題を解決できるという。ジョンソン氏は「インシデントの検出から解決までの平均時間を改善することは重要だ」と述べる。問題が放置される時間が長くなればなるほど、リスクは増大するからだ。

6.フィードバックの収集

 IT部門は、技術的な問題への対処、ソフトウェアの更新、業務プロセスの効率化など、さまざまな場面でエンドユーザーをサポートしている。こうした取り組みの効果を測定する満足度調査のプロセスを自動化すれば、時間の節約や改善の迅速化につながる。

 ウォッシュバーン氏によると、SIUの業務自動化部門は「プロセスオーナー」(特定の業務プロセスの管理者)に関する調査を実施している。自動化技術を活用することで、プロセスオーナーからのフィードバックを収集したり、ROI(投資対効果)を定期的に測定したりできるようになった。これらを基に継続的にプロセスを改善し、定期的に評価する仕組みを構築できたという。

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