医療ITとベンダー特権アクセス管理【前編】
医療機関が「ベンダーのアクセス監視」をせざるを得なかった“潜在的リスク”
米国の医療機関UMass Memorial Health Careは、自施設のシステムに対するベンダーのリモートアクセスを管理するために「ベンダー特権アクセス管理」ツールを導入した。決断に至った危機感とは。
UMass Memorial Health Careは米国マサチューセッツ州中部で最大(同機関調べ)の非営利医療機関だ。3つの病院を運営し、総病床は1125床、1万4000人以上の従業員を抱えている。同機関は第三者独立系機関の監査によって、自施設のシステムに関与するベンダーのリモートアクセス(VPNを含む)をほとんど制御できていないことが明らかになった。
監視こそが平穏をもたらす
大半のベンダーは、UMass Memorial Health Careの内部アカウントを保持しており、その中にはアクセスが制限されているものもあれば、制限されていないものもあった。この事実が判明したことでUMass Memorial Health Careは2014年に、SecureLinkが提供する同名のベンダー特権アクセス管理ツールを導入することを決めた。
UMass Memorial Health CareはSecureLinkを導入したことで、誰がどのアプリケーションに、いつ、どのくらいの期間アクセスしたかを細かく制御できるようになった。ベンダーのセッションについてはあらゆるキー入力を追跡し、セッションの詳細なスクリーンショットや報告を提供することも可能になった。
「可視性が向上することで、セキュリティが強化され、平穏がもたらされた」と、UMass Memorial Health Careでシニアアプリケーションセキュリティアナリストを務めるスコット・エメリー氏は語る。同機関はベンダーに、システムを監視していることを通達している。「監視されていることが分かると、何でもできると考えていたときとは様相が少し違ってくる」(エメリー氏)
医療機関向けのSecureLinkである「SecureLink for Healthcare」は、キー入力のログや動画ログなど、より詳細な監査ログを提供する。これは医療機関がベンダーのアクティビティを追跡して、ベンダーがHIPAA(米国における医療保険の相互運用性と説明責任に関する法令)などのセキュリティ要件を満たしていることを確認するのに役立つ。
UMass Memorial Health CareがSecureLinkを導入する以前、UMass Memorial Health Careと提携しているベンダーは、異なるレベルのアクセス権を持つ個別の内部アカウントを保持していた。この慣習が同機関にもたらす潜在的なリスクは「尋常ではなかった」とエメリー氏は話す。
「このリスクをできるだけ早く取り除きたいと考えていた」とエメリー氏は強調する。というのも、ベンダーがネットワークにアクセスしても「それを制御するすべはないも同然だったからだ」(同氏)。
UMass Memorial Health CareがSecureLinkの導入を決めてから、ベンダーのアクセス制御の仕組みを同ツールに移行するまでに、約2カ月の歳月を要した。2014年当時、UMass Memorial Health Careは約70社のベンダーと提携していた。2020年現在、その数は200社を超える。
SecureLinkが搭載している機能のうち、優れているのは「ネットワークへのログインに失敗したときに送信される警告メッセージだ」とエメリー氏は言う。このメッセージを受信したときには、ベンダーのIPアドレスを調べて、ネットワークにログインしようとした理由をベンダーに確認し、そのアクセスを承認または拒否できる。
UMass Memorial Health CareはSecureLinkの導入によって「各ベンダーのアカウント設定作業など、ベンダーの関係管理のためにIT部門が費やしていた時間にも大きな影響があった」とエメリー氏は話す。
SecureLinkで製品管理のバイスプレジデントを務めるロブ・パレルモ氏によると、医療機関向けのSecureLink for Healthcareは、標準版のSecureLink「SecureLink for Enterprises」を基盤としており、顧客が必要とする医療業界固有の機能を搭載している。ベンダーは医療ITシステムに直接接続したりVPN経由で接続したりするのではなく、SecureLink経由で接続するためのユーザー名とパスワードを使うことになる。
後編はSecureLink for Healthcareの仕組みと、ベンダーのアクセス制御を管理するためのルール整備のコツを説明する。
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣 -
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
6
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
9
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
10
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー