クラウドサービスやモバイルデバイスの導入を推進する企業にとって、重要性が高まっているのが「アイデンティティーおよびアクセス管理」(IAM)だ。IAMツールの機能と、その必要性をあらためて理解しておこう。
「アイデンティティーおよびアクセス管理」(IAM)ツールは、サイバーセキュリティに関して2019年に企業が導入すべきツールとして注目を集めている。
IAMツールとはどのようなものか。そのトレンドはどのように変化しているのか。企業がIAMツールを導入する理由は何か。導入に伴い、どのような課題や問題点があるのか。企業の技術者は、どうすればIAMツールの導入を成功に導くことができるのか。本稿では、こうした疑問を順番に見ていく。
IAMツールは、適切なユーザーだけが、適切なデータやアプリケーションにアクセスできるようにする機能を持つ。この仕組みは一見単純であり、IAMツールを「ユーザーと、そのユーザーがアクセスを許可されたリソースを含む単純なデータベース」だと考えている技術者は少なくない。
「IAMツールは、Microsoftのアクセス権限・ディレクトリ管理機能『Active Directory』(AD)のようなものだ」という考え方があっても不思議ではない。ADを利用することで、初めてIAMの概念に触れる技術者もいるからだ。IAMツールと同様、ADはアクセス制御と認証のサービスを提供し、特定のコンピュータやアプリケーションへのアクセスをユーザーに許可する。
問題は「ユーザー対コンピュータ」という構造が時代遅れになっていることだ。今日の企業にはシステム基盤にクラウドを取り入れる動きがある。コンテナがアプリケーション開発の主流になり、マイクロサービスアーキテクチャやDevOps(運用と開発の一体化)の取り組みが進むにつれ、アプリケーションの概念そのものの定義が見直されるようになっている。
モバイルデバイスをはじめ、ユーザーが利用するデバイスも多様化している。自動化やIoT(モノのインターネット)によってユーザーそのものの定義も変わりつつあり、bot、IoTデバイス、ソフトウェアサービスがユーザーになる可能性がある。
その結果、データやアプリケーションはさまざまな場所に存在するようになり。コンピュータ別にアクセスを制限する意味が薄れつつある。今日の環境では、アプリケーションがますます動的になり、コンテナの生成から破棄までがごく短時間になる場合がある。
そうした背景から、IAMの定義を見直す時期が来たといえる。現在のIAMは、人間かどうかを問わない「ユーザー」が、権限のあるリソースのみにアクセスできるようにする仕組みだ。リソースがどこにどれだけの期間存在するかは関係しない。
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