医療機関クラウド移行のメリットとデメリット【前編】
いまさら聞けない、医療機関が「クラウドサービス」に移行する4つのメリット
医療機関がクラウドサービスにシステムを移行させるメリットには、どのようなものがあるのか。主要な4つのメリットを紹介する。
調査会社Gartnerの予測によると、2020年のパブリッククラウド市場規模は前年比17%増の2664億ドルに達するという。これはクラウドサービスにシステムを移行させる企業が驚異的に増えていることを示す調査結果の一つだ。
医療業界にとって、クラウドサービスへの移行に伴うセキュリティ強化、コスト削減、柔軟性向上は、特に魅力的な要素になる。クラウドサービスへの移行によって幾つかの業務はする必要がなくなり、患者の予後の改善とコスト削減に専念しやすくなる。ただし意図しない結果を引き起こす恐れもある。
クラウドサービスに移行すれば、病院やクリニックなどの医療機関は第三者が用意したネットワークリソースとコンピューティングリソースを使用して、医用画像管理システム(PACS)、電子カルテ(EMR:電子医療記録)、臨床検査情報システム(LIS)といったシステムをホストして管理する体制に変わる。医療機関は自前のデータセンター設備を所有して管理する必要がなくなる。
ここ数年、クラウドベンダーはユーザー企業に対して、オンプレミスのサーバでシステムを運用管理する慣習を廃止して「クラウドに飛び込まざるを得ない」と決断する新たな理由を提示するようになった。本稿は、医療機関がクラウドサービスに移行することで得られる4つのメリットを紹介する。
メリット1.大規模なセキュリティ投資の成果を享受
特に「Amazon Web Services」(AWS)や「Microsoft Azure」「Google Cloud Platform」のような主要なクラウドサービスは何百万ドルもの投資をして、ユーザー企業のデータをホストする自社インフラを保護している。Microsoftで仮想マシンサービス「Microsoft Azure Compute」のプロダクトリーダーを務めるエリン・チャップル氏は、同社がセキュリティに年間10憶ドル以上の投資をし、3500人を超えるセキュリティ専門の従業員を採用していることを明らかにした。医療機関がこうした大規模なセキュリティ投資を独自に進めるのは極めて難しい。
メリット2.開発・テスト環境などの一時的なインフラを手軽に調達
クラウドサービスは一般的に従量課金の料金体系を採用する。医療機関はEMR、LIS、PACSなど各種システムの開発環境やテスト環境を一時的にクラウドサービスにプロビジョニング(配備)して、実際に使用した時間だけ料金を支払えばよい。IT管理者は1、2回しか使用しそうにないハードウェアやソフトウェアの購入に資本を投入する必要がなくなるため、IT管理者にとって大きな価値がある。
メリット3.「HITRUST CSF認定」に基づく患者データ保護の実現
MicrosoftやAWS、Googleは「HITRUST CSF認定」を保有している。HITRUST(Health Information Trust Alliance)はヘルスケア産業のリーダー的存在によって構成される業界団体。HITRUST CFRとは同団体が作成したサイバーセキュリティフレームワークだ。医療関連の規制・標準に関するセキュリティフレームワークの認証を取得しているということは、保存している患者データのセキュリティを確保し、十分な保護を実施できることを意味する。HITRUST CSF認定は、医療業界ではレベルの高いセキュリティ認定の一つだと考えられている。
メリット4.医療機関にとって重要な周辺サービスが充実
クラウドサービスへの移行の魅力的な側面として、Microsoft、AWS、Googleなどの大手クラウドベンダーが提供する付加価値の高い周辺サービスを利用できることが挙げられる。医療機関はIaaS(Infrastructure as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、SaaS(Software as a Service)といった通常のクラウドサービスを利用できるだけでなく、ベンダーとパートナー契約を結んで医療業界固有のサービスを活用することもできる。例えば
- 医療情報の共有を目的とした標準仕様「FHIR」(迅速な医療情報相互運用のためのリソース:Fast Healthcare Interoperability Resources)に準拠したホスティングサービス
- 医用画像解析に役立つ人工知能(AI)関連サービス
- 診療予約や請求処理に役立つインテリジェントbot開発サービス
などがある。
後編は、医療機関がクラウドに移行する際に留意すべきポイントやデメリットを解説する。
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