パンデミックと投資動向【後編】
新型コロナで「OneDrive」「Dropbox」などの需要が拡大する理由と注意点
パンデミックによって企業の間でテレワークに移行する動きが広がったことで顕著になったのは、「OneDrive」「Dropbox」をはじめとするファイル同期サービスへの需要の高まりだ。その背景には何があるのか。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が拡大する中で、投資意欲が高まっているIT製品・サービスに「ファイル同期サービス」がある。フローリングメーカーのMohawk Industriesは、新型コロナウイルス感染症によるパンデミック(感染症の世界的な大流行)を機に、非構造化データの保存用途としてファイル同期サービスの利用が増える見通しだ。
ファイル同期サービスやクラウドストレージには課題も
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ストレージの業界動向
Mohawk Industriesが利用を増やしているファイル同期サービスはMicrosoftの「OneDrive」だ。同社はオフィススイートの「Microsoft 365」(旧「Office 365」)を長く使ってきた。「従業員のファイル保存先をOneDriveに集約することは自然な進化だ」と、Mohawk IndustriesでITインフラ分野を統括するジェビン・ジェンセン氏は語る。同社はかねてオンプレミスのストレージコストを削減しようと検討していた。ほぼ無限の容量を持つと言ってもいいファイル同期サービスへの移行は魅力的な選択肢だったという。
フリードリッヒミーシャー生物医学研究所(FMI:Friedrich Miescher Institute for Biomedical Research)は、パンデミックに対処するための長期的なIT投資戦略を2020年3月に始動させた。まずリモートアクセス用のVPN(仮想プライベートネットワーク)のライセンスを100接続から300接続にアップグレードし、職員がテレワークを実施するための環境を早期に整えた。
FMIのディーン・フランダース氏は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックから得た一つの教訓として、「テレワーカーが個々人の必要とするデータに簡単にアクセスできるようにすることがまず重要だ」と語る。FMIはファイル同期サービス「Dropbox」を利用していたが、パンデミックが発生する以前は要望のあった職員にのみライセンスを付与していた。現在はDropboxの利用を広げて、各職員のデータ保存と職員同士のファイル共有をDropboxで実施する戦略に切り替えようとしている。
ただし研究機関ならではの問題がある。ファイル同期サービスはペタバイト規模の研究データには適さない場合がある点だ。小規模なデータを扱う分には、ファイル同期サービスは「自家用車に対するタクシーのようなもの」であり、手頃な選択肢だとフランダース氏は説明する。だが「タクシーを頻繁に使わなければならないなら、私は車を購入するだろう」と同氏は語る。大量のデータを扱うとなると、ファイル同期サービスはかなり高額になってしまうことがあるのが問題だという。この問題はストレージアレイをクラウドサービスとして利用できる「クラウドストレージ」にも当てはまる。
2020年第1四半期のストレージ支出は増加
ストレージベンダー各社の決算報告によれば、2020年第1四半期(1月~3月)の企業のストレージへの支出は増加したことを示している。
IBMは2020年度第1四半期(1~3月期)の決算報告で、ストレージの売上高が前年同期比で18%伸びたことを明らかにした。だが今後も同じように好調が続くとは限らない。IBMのCEO(最高経営責任者)であるアービンド・クリシュナ氏は、「信頼性の高い短期的な業績予想を発表することはできない」と述べ、2020年第2四半期(4月~6月期)以降の業績については具体的な見通しを示していない。これは競合であるDell EMCやHewlett Packard Enterprise(HPE)、NetAppも同様だ。
HDDベンダーのSeagate Technologyは、2020年度第3四半期(2020年1~3月期)の売上高が前年同期比18%増になったと報告した。その要因として同社の経営幹部は、テレワークへの移行が進みファイル同期サービスやクラウドストレージに対する需要が拡大したことを背景に、クラウドベンダーに対するHDDの販売が急増した点を挙げた。SeagateのCEO、デーヴ・モーズリー氏は「当社のビジネスの好調さを支えたのは、何よりも新型コロナウイルス感染症によるパンデミックだ」と説明する。
パンデミックによるこうした購買の傾向がいつまで続くのかは分からない。モーズリー氏は「今われわれは、これまでの慣れた状況を脱して、変動が激しく、不安定な時期にいる。これは誰にとっても異常事態だ」と語る。
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