「NAND型フラッシュ」価格下落の裏側【後編】
「SSDがHDDよりも安くなる未来」は来ないと言える“納得の根拠”
価格面でフラッシュストレージがHDDにすぐに追い付くわけではない。フラッシュストレージと磁気ディスクの特性に違いがあるためだ。フラッシュストレージの価格に影響する要素を考察しよう。
前編「フラッシュメモリが安くなってもSSDが安くならない“意外な理由”」では、NAND型フラッシュメモリの価格変動がフラッシュストレージの価格にどのように影響するのか、ストレージベンダーの動きを基にまとめた。フラッシュストレージの価格に影響する要素を知る上では、容量とパフォーマンスの関係や、需要と供給の関係も大事だ。NAND型フラッシュメモリを取り巻く市場は、今後どのように動くのだろうか。
NAND型フラッシュメモリや、Intelの「Optane」のようなストレージクラスメモリ(ストレージ用途で利用できるメモリ)は、「クリティカルマス(製品が爆発的に普及する臨界点となる市場普及率)に到達すると価格が下落する」と、ストレージベンダーInfinidatの最高技術責任者(CTO)を務めるケン・ステインハルト氏は説明する。それでもフラッシュストレージがHDD水準まで価格が低下することはないとステインハルト氏は見ている。
フラッシュストレージの代表格であるSSD(ソリッドステートドライブ)を主力とする他のベンダーと違い、Infinidatのストレージ製品はHDDをベースにしている。フラッシュメモリを採用しているのはデータのキャッシュのみだ。同社のストレージ製品のパフォーマンスは、値段は高いがフラッシュメモリよりも高速なDRAM(Dynamic Random Access Memory)に依存している。
HDDとフラッシュストレージの価格に響く決定的な違い
歴史的に、フラッシュメモリのコストは技術に関係なく下がり続けてきた。NAND型フラッシュメモリのコストは、確かにハイエンドの磁気ディスクにかなり近づいている。ただし大半のアナリストによれば、NAND型フラッシュメモリとニアライン(利用頻度の高いオンラインと長期保存を目的とするオフラインの中間)ディスクの間には、価格に約10倍の差がある。「容量当たりのコストを選ぶか、パフォーマンスを選ぶかは究極の選択だ」とステインハルト氏は語る。
オールフラッシュストレージベンダーPavilion Dataの最高マーケティング責任者(CMO)を務めるウォルト・ヒントン氏は、「ストレージの価格はプロセッサなどのコンポーネントと同様のパターンをたどっている」と述べる。「ストレージにもムーアの法則との類似性が見られる。容量は増大し続け、容量に反比例してコストは下がるという法則だ」(ヒントン氏)
HDDと同様、市場に投入されるフラッシュストレージの容量が増大すれば、フラッシュストレージのGB当たりのコストは下がるとヒントン氏は指摘する。だがフラッシュストレージは容量が増えても、性能が劣化しないため、価格はそれほど大きく下落しない可能性がある。ここにHDDとフラッシュストレージの違いがある。「HDDは大型化すると速度が遅くなる。だがフラッシュストレージは容量が増えるほど高速化する」(ヒントン氏)。フラッシュストレージは、容量が大きくなるほど高速化するのだ。
NAND価格の低迷はいつまで続くか
半導体分野の調査会社Objective Analysisの主席アナリスト、ジム・ハンディ氏によれば、「現在のNAND型フラッシュメモリの価格低下は、ベンダーが需要に応じるために過剰生産した後、生産を一気に減らして供給不足に陥るパターンの一部」だという。供給過剰が続く間は価格が下がり、供給不足になると価格が上がる。「現在のように価格が低い状況をもたらしている供給過剰の期間は、少なくとも2年は続く」と同氏は予測する。
他にも日本と韓国の貿易戦争や、中国による半導体市場への参入もNAND型フラッシュメモリの価格に影響する可能性がある。キオクシア(旧東芝メモリ)とWestern Digital(WD)連合が生産するNAND型フラッシュメモリの生産が、四日市工場の停電によって6E(エクサ)B減少するといった要因も関係する。
ハンディ氏の予測に対しては異論も投げ掛けられる。「四日市工場の停電による生産減も一因となり、供給過剰は数カ月前に終わったということが十分に理解されていない」。調査会社Dragon Slayer Consultingの社長を務めるマーク・ステイマー氏はこう語る。キオクシア・WD連合は世界のNAND型フラッシュメモリ市場の約3分の1を供給している。「余剰分はなくなった。実際にはNAND型フラッシュメモリの供給はタイトな状態にあるのが現状だ。価格が上がるとまでは言わないが、その可能性はある」(ステイマー氏)
一方ハンディ氏は、他のサプライヤーが膨大な量の在庫を抱えていて停電による影響を緩和させたため、これによるNAND型フラッシュメモリの価格上昇はごくわずかだったと説明する。停電による影響は、短期間にとどまる見通しだ。「実際、価格に大きな変動はなかった。過去にわれわれが経験した価格崩壊に比べれば大した変化ではなく、恐らくそれほど長くは続かないだろう」(同氏)
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「NAND型フラッシュ」価格下落の裏側
「NAND型フラッシュメモリ」の価格が下落することで、フラッシュストレージをより安く調達できるようになるのではないかと期待する人もいるだろう。だが、この2つの関連性はそれほど直接的ではない。どのように価格決定のメカニズムが動いているのか。市場関係者の話を基に整理する。
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