非常に高度な分析を可能にする技術として「量子コンピューティング」がある。Microsoftはその課題の一つであるエラー発生の解決に取り組んでいる。同社幹部に施策を聞いた。
Microsoftは、エラーが発生しやすい現状の「量子コンピューティング」の改善に注力する方針を明らかにした。量子コンピューティングは、量子力学を用いて複雑なデータ処理を実施する計算技術だ。Microsoftは人工知能(AI)技術やハイパフォーマンスコンピューティング(HPC:高性能計算)を使い、量子コンピューティングにおけるエラーを減らすことを目指すという。そのために、何に取り組んでいるのか。
Microsoftは英Computer Weekly編集部の取材に対し、量子コンピューティングにAI技術やHPCを取り入れる方針を明らかにした。同社量子部門バイスプレジデントのズルフィ・アラム氏は、量子コンピューティングが「大きな転換点を迎えている」とみる。
量子コンピューティングは現在、NISQ(Noisy Intermediate-Scale Quantum)の段階にある。NISQはノイズがある小中規模(量子ビットが数十〜数百程度)の量子コンピュータを指す。計算中に発生するノイズの影響を回避するには、大量の物理量子ビットを使って誤りを訂正する「論理量子ビット」を必要とする。アラム氏によると、NISQの時代が終わり、量子コンピューティングの研究開発は次のフェーズに入ろうとしている。
NISQはノイズの影響を受けることから、量子誤り訂正ができず、エラーが発生しやすいことがネックだ。アラム氏によれば、Microsoftが現在注力しているのは、エラー修正ができる新しい論理量子ビットの開発だ。その成果として同社は2025年2月、量子プロセッサ「Majorana 1」を発表した。このプロセッサは電子を分割し、ノイズから保護された量子ビットを形成することを可能にしているという。
Majorana 1についてアラム氏は、「電子を2つに分割することで、ノイズから保護された状態を強制することができる」と説明する。Majorana 1の投入を背景に、Microsoftは米国防高等研究計画局(DARPA)のプログラムに選定され、2033年までに産業用途に適した量子コンピュータを設計するプロジェクトに参加することになった。
Microsoftは量子コンピュータを一般的なコンピュータではなく、特定の問題を解決するための特別なものと位置付けている。「量子コンピュータを支えるために、一般的な高性能コンピュータとの共存が欠かせない」とアラム氏は述べる。
アラム氏によると、データ処理の役割分担を決めるといった、両方の間の“調整役”としてAI技術が重要な役割を果たす。具体的には、ある課題に対し、どの部分を古典コンピュータで、どの部分を量子コンピュータで処理するのが最適かをAI技術が判断し、実行を振り分ける。
Microsoftで量子およびAI担当バイスプレジデントを務めるスリニバス・プラサド・スガ氏は、AI技術がもたらす「量子計算の民主化」を強調する。同社のAIコーディングツール「GitHub Copilot」のようなAIツールを活用することで、エンドユーザーが自然言語で指示を出すだけで、AIツールが複雑な量子回路を自動で設計できるようになるという。「収率をX%向上させる新しい触媒を設計して」と入力すれば、AIツールが最適なワークフローを組み立ててくれるといった具合だ。専門家ではない人でも、対話形式で量子コンピューティングの力を引き出せる未来がすぐそこまで来ているのだ。
後編は、Microsoftが考えている量子コンピューティングの活用方法やセキュリティを取り上げる。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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