「NAND型フラッシュ」価格下落の裏側【前編】
フラッシュメモリが安くなってもSSDが安くならない“意外な理由”
NAND型フラッシュメモリの価格が低下しても、それを積載するフラッシュストレージの価格が下がるわけではない。それはなぜなのか。
供給過剰が原因でNAND型フラッシュメモリの価格が下落しても、必ずしもフラッシュストレージの値段が下がるわけではない。
ストレージベンダー各社の話を基にすれば、フラッシュストレージの販売価格を左右する要素は、フラッシュメモリの原価だけではない。競争圧力や性能、市場環境、さらには「ムーアの法則」(半導体の集積度が約2年で2倍になるという経験則)に基づく観測など、さまざまな要素が影響する。
NAND型フラッシュメモリの価格が低迷する状態は、当分続く見通しだ。半導体分野の調査会社Objective Analysisの主席アナリスト、ジム・ハンディ氏は「NAND型フラッシュメモリの供給過剰は少なくとも2021年まで、長ければ2025年まで続く可能性がある」と予測する。これはメモリメーカーにとっては良くないニュースであり、顧客にとっては朗報に聞こえる。だがフラッシュストレージの価格にもそのまま影響するわけではない点に注意が必要だ。
NAND型フラッシュメモリの価格下落だけではSSDの価格が下がらない“本当の”理由
IBMの最高マーケティング責任者(CMO)を務めるエリック・ハーゾグ氏によると、同社は2019年4月に発売したミッドレンジのフラッシュストレージアレイ「IBM Storwize」について、NAND型フラッシュメモリの価格が低下する中で、価格を10~30%引き下げた。ただしハーゾグ氏は「当面の間はNAND型フラッシュメモリの価格下落よりも、他の要因の方がフラッシュストレージの価格に大きな影響を持つ」と語る。
ハーゾグ氏はIBM Storwizeの価格設定について「IBMには大きな“貯金”があるので、それを価格に転嫁した」と前置きした上で、「ベンダー各社の財務状況を含めて、制御できない要因がある」と指摘する。
ストレージベンダーのNetAppは、直近の業績が低迷していることを明かした。IBM、Dell EMC、Pure Storageといったストレージベンダー各社も、直近の業績は振るわないようだ。もしこの傾向が続けば、NAND型フラッシュメモリの原価よりも、各社の業績の方が価格低下に大きな影響を与える可能性があると、ハーゾグ氏は予想する。同氏によれば、大手ストレージベンダーは市場シェアを維持するためにフラッシュストレージの価格を引き下げる可能性があり、そうなれば規模の小さいストレージベンダーも競争力を維持するには価格の引き下げが必要になる。
ストレージベンダーが価格を引き下げる可能性があることは、大きな不安要素だとハーゾグ氏は話す。「もし大手ベンダーがその“過ち”を犯せば、価格の下落が市場全体に波及する可能性がある」(同氏)。ストレージ業界ではそうしたことが起こりがちだ。価格競争は4~5年ごとに起きる傾向があり、「しばらくの間起きていなかったことを考慮すれば、そろそろ価格戦争が起きてもいいころだ」と、同氏は説明する。
NAND型フラッシュメモリの性能は、一般的には磁気ディスクを上回る。そのため価格面ではフラッシュストレージの代表格であるSSD(ソリッドステートドライブ)の価格が、HDDを上回る状態が続くと予測できる。一方でフラッシュストレージベンダーは、SSDとHDDの価格差を埋める可能性がある他の要因を強調する。Pure Storageのチャッド・ケニー氏は、ベンダー各社はNAND型フラッシュメモリのコストと関係なく、データ圧縮機能を強化したり、容量密度を高めることによって、GB当たりの価格を引き下げたりできると指摘する。
ケニー氏は価格決定の要因について「寄せ集め」だと形容する。「『最安値まで価格を引き下げてはならない』という市場からの圧力がある。だがデータ圧縮機能が価格に関連する課題を軽減し、そのおかげでわれわれは安全な価格帯にとどまることができている。データ圧縮機能の性能次第では、ほとんどのアプリケーションの要件を満たせる経済的に良好な範囲内にとどまることが可能だ」(同氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「NAND型フラッシュ」価格下落の裏側
「NAND型フラッシュメモリ」の価格が下落することで、フラッシュストレージをより安く調達できるようになるのではないかと期待する人もいるだろう。だが、この2つの関連性はそれほど直接的ではない。どのように価格決定のメカニズムが動いているのか。市場関係者の話を基に整理する。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品レビュー
「電子帳簿保存法対応」実践術:タイムスタンプ付与などの要件の手軽な実現方法 -
事例
「大企業のデジタル化」成功事例集【コクヨ、九州電力、ヨネックスなど21社】 -
製品資料
“顧客管理の課題”を簡単に解決する方法とは? -
製品資料
契約管理の“あるある課題”をノーコード開発で解決するためのポイント -
製品資料
揺らぐ境界防御 いま企業が特に警戒すべき「3つのセキュリティ課題」とは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
2
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
3
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
4
継続利用は4割どまり M365 Copilotが「効く業務」と期待外れの境界
-
5
画面をティッシュで拭くのはNG Dellが推奨するPCの正しいお手入れ方法
-
6
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
7
VDI運用の“生きたノウハウ”を共有 歴史あるユーザー会の魅力とは?
-
8
メインフレームは死なず AI活用で20年来の高収益をたたき出す基幹システムの底力
-
9
VMware離れを食い止めるか? 今「VCF 9.1」が再評価される理由
-
10
「GitHub Copilot」3000人に配布も基本機能しか使われない 保険大手が得た教訓
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
3
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
4
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
7
「結局、一部の人しか使わない」 AI活用が業務に定着しない根本的な理由
-
8
AIエージェントで成果は出る? 調査結果に見る費用対効果の実態
-
9
PostgreSQLの「機能」「性能」「運用」「拡張性」に関する悩みの解消法
-
10
ゼロトラストにおける「IDaaSの課題」と補完すべき重要機能とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー