サービスの安定運用に欠かせないのが「ロードバランシング」(負荷分散)だ。ネットワーク層とアプリケーション層での違いや使い分け、代表的な製品やツールを紹介する。
「ロードバランシング」(負荷分散)とは、ユーザーからの膨大なリクエストを、分散した複数のサーバに効率よく振り分けることによってサービスの応答性や可用性を確保する仕組みだ。特にクラウドサービスやWebアプリケーションを含めて構成が複雑になる中で、ロードバランサー(負荷分散装置)による処理はますます重要になっている。
ネットワークロードバランシングとアプリケーションロードバランシングという2種類のロードバランシングがある。ネットワークロードバランシングは「OSI参照モデル」(OSI:開放型システム間相互接続)の第4層(レイヤー4、トランスポート層)で機能し、アプリケーションロードバランシングは第7層(レイヤー7、アプリケーション層)で機能する。
2つのロードバランサーのどちらを使用すればいいのかを決める観点に加え、選択肢としてどのような製品やサービスがあるのかを本稿で解説する。
ネットワークロードバランシングとアプリケーションロードバランシングには、利用するシステムの特性に応じて得られるそれぞれの利点がある。ネットワークロードバランサーは、リクエスト内容を解析せずに転送するため、処理が高速だ。これはリアルタイム性が求められる用途に適している。一方、アプリケーションロードバランサーは、リクエストの内容に応じて最適なサーバに振り分けるため、リソースの有効活用や全体の処理効率を高めるのに有効だ。
ネットワークロードバランシングとアプリケーションロードバランシングのどちらを選択すべきかは、状況によって異なる。例えば、以下が判断材料になる。
米ニュースメディア「CNN」のWebサイトを例に挙げよう。CNNのWebサイトを訪れる目的は、たいてい最新ニュースの閲覧だ。中には特定の記事へのリンクをクリックして直接アクセスするユーザーもいるが、多くはトップページを表示し、そこから記事を選択する。後者のケースでは、アプリケーションロードバランシングはあまり効果的ではない。なぜなら、リクエストは単に「CNN.com」のトップページへのものであり、ユーザーがどの記事を読むかといった詳細情報は含まれていないからだ。こうした状況では、リクエストを複数のサーバに均等に振り分けて全体のパフォーマンスを最適化する、ネットワークロードバランサーの方が適している。
一方、オンラインショッピングにおける「Amazon.com」のWebサイトへのリクエストには、買い物客が探している商品カテゴリーの情報が含まれているケースが多い。このような場合は、アプリケーションロードバランシングが効果を発揮する。ユーザーの関心に応じて、該当する商品ジャンルを扱うサーバに最初のリクエストを振り分けることで、応答速度の向上が期待できる。
有料か無料かを問わず、さまざまな種類のロードバランサーが利用可能だ。アプリケーションロードバランシングまたはネットワークロードバランシングのどちらか一方にしか対応していない製品もあれば、両方に対応している製品もある。以下に、人気のある商用ロードバランサーをアルファベット順で紹介する。
「HAProxy」「Relianoid」「Traefik Proxy」など、オープンソースのロードバランシングツールには、無償で利用できるバージョンが提供されている。商用製品の中にも、Progress Kemp LoadMasterのように無料版を用意しているものがある他、評価目的で使えるトライアル版や、一定期間のみ利用可能な時間制限版を提供しているベンダーもある。
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